ご婦人の不定愁訴を解消する妙薬
薬草園の中央奥で、清楚な淡桃白色の花をたくさん開いているのが「シャクヤク」です。これは、奈良県で古くから継代・維持されてきた「梵天(ボンテン)」という薬用の品種で、根の薄皮を剥いで乾燥したものが「白芍」と呼ばれています。漢方では女性の生理不調などからくる下腹部のつっぱりや痛みをとり、古来より産前産後あるいは更年期障害などの婦人科疾患に用いられる薬材の一つです。
一方、「牡丹皮」はボタンの根の中心にある木芯部を取り去った“根皮”を乾燥させたもので、血が滞って巡らない状態を改善する薬材です。すなわち、冷え・のぼせ、下腹部の脹れや痛み・炎症、月経不順などのいろいろな婦人科疾患に伴う不定愁訴に対して優れた効果を発揮します。
昔から『立てば芍薬、座れば牡丹』という諺があって、“美人を、きれいな花に例えるなどと、しばしば誤解されていますが、実は“漢方の極意”を表した言葉です。すなわち、イライラして怒りっぽい婦人には芍薬を、血の巡りが悪くてやや鈍重な婦人には牡丹皮をそれぞれ飲ませなさい、というのが本来の字義なのです。妙薬の効用によって、活発に立ち働く健康な婦人=“美人になりますよ”というのが本当の意味なのです。