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カボチャ料理と柚子風呂で湯治(冬至)を!!

二十四節気の一つ、1年で夜が最も長く昼間の時間が短い日が冬至で、今年は12月22日がその日に当たります。中国や日本では、陰が極まって陽に転ずる日「一陽来復」と呼ばれ、厄除けや運気上昇に関する行事が行われてきました。食べ物では「運」に通じるよう「ん」が二つ付くものは縁起が良いとされ、南京(カボチャ)、蓮根、人参、銀杏、金柑、寒天および饂飩(ウンドン)が「冬至の七草」と呼ばれる食材です。カボチャを食べる風習は江戸時代から続いています。本来夏の野菜ですが、長期保存ができるため、冬に栄養を摂るための暮らしの知恵でもあったようです。また江戸時代から続く「ゆず湯」もその一つで、「冬至」を「湯治」、「柚子」を「融通」に洒落たもののようです。

ユズは中国・揚子江上流の原産で、大木になる常緑樹です。「モモ・クリ3年、カキ8年」の最後に付くのが「ユズの大バカ18年」で、実生から育てると果実が稔るまでに長い年月を要するのです。その実生ユズ(写真①)の栽培・生産に拘ったのが、国産ユズの栽培発祥地とされる「水尾の里」です。京都市右京区の北西部(嵐山の左上)に位置し、愛宕山の麓です。最寄り駅はJR山陰本線の保津峡駅(写真②)になります。1日5往復運航している自治会バスに乗って10分ほどで宿に着きますが、事前予約すれば民宿の送迎車を利用することもできます。民宿で柚子風呂を楽しんだ後、京都地鶏の水炊き鍋が堪能できますよ(写真③)。

ユズの果汁と果皮がそれぞれ役立つことはよく知られていますが、大量に残るタネには水溶性の食物繊維である多糖類のペクチンが豊富に含まれています。水洗いしないまま容器に入れ、約3倍量の焼酎またはホワイトリカーを注ぎ入れて冷蔵庫で1週間置いた後、液体がとろっとしてきたら天然化粧水の出来上がりです(写真④)。風呂上りなどに約1ヶ月間利用することができます。一方、ザルで濾し取ったタネは、茶袋に適当量を詰めて風呂に浮かべると、湯上りが肌しっとりになります。ユズは捨てるところがないのです。

ユズが結実まで20年ほどもかかるのに対して、近縁種のハナユは苗を植えてから1年で結実することから「一才ユズ」、トゲが多くないことから「刺無しユズ」、果実が樹に長く着いたままになることから「トコユ(常柚)」などとも呼ばれます。葉の濃緑に清楚な花の白さが際立つ常緑中低木です。果実は径3㎝ほどで約40gと小さく、香りもユズほど強くはないのですが、とにかく多産で毎年たくさんの果実を収穫できます(写真⑤)。そこで、果肉をくり抜き、その果汁に適量の砂糖とゼラチンあるいは寒天を加えて溶かし、果皮を器としてその果汁を流し入れ冷蔵庫で固めると、見た目も可愛い“スイーツ”の出来上がりです。

一方、シシユズ(獅子柚子または鬼柚子)と呼ばれるものは、見た目が獅子の顔のような形あるいは鬼の顔のような形からそのように呼ばれています。ユズの仲間ではなく、ブンタン(文旦)の仲間ですから径20㎝前後と極めて大きく、ユズのような強い香りはありません。生食用には不向きで、わずかにピール、砂糖漬け、マーマレードなどに加工されることもありますが、ほぼ観賞用として利用されています。最近では玄関に置いたり、料理の器としても利用されているようですよ。

写真① ユズの果実
(2015.11.05.撮影)
写真② 保津峡駅からの眺望
(2018.11.19.撮影)
写真③ 京都地鶏の水炊き鍋
写真④ 柚子スキン・ローション
(ネット写真)
写真⑤ ハナユの果実
(福知山の別邸 2015.11.05.撮影)
写真⑥ シシユズの果実
(比叡山坂本の民家 2015.11.20.撮影)