温州ミカンの古い皮(陳皮)で湯上りぽかぽか
冷たい木枯らしが吹き荒れる季節になると、炬燵で暖まりながらミカンが食べたくなりますよね。日本で主に食べられる温州ミカン(Citrus unshiu 写真①)は、食べるために“刃物が要らない”という世界的に見ても非常に特異な果物で、他の外国産の蜜柑類はいずれも手で剥くことができません。それが日本生まれですから、世界に誇れる果物と言えます。
温州ミカンは、江戸期に栽培されていた中国原産の小ミカンから偶発的にできた実生個体で、薩摩北部の長島で見出されたことから「長島蜜柑」と呼ばれていましたが、武士の世にあっては種子を生じない性質は縁起が悪いとされ、ほとんど栽培されませんでした。その美味と種なしの利便性が注目されて栽培が拡大したのは明治中期以降で、日本で生まれた新品種に当時中国浙江(セッコウ)省のミカンの中心地名を冠して「温州ミカン」の名が使われるようになりました。その後、早生系の品種や高い糖度の「青島温州」などが育成されて、今では10月中旬から3月頃まで貯蔵・出荷されています。
日本の暖地で栽培される常緑樹で、5月頃香りのよい白色5弁花を開きます(写真②)。花柱の太い雌しべが1本と葯が萎縮した雄しべが沢山ありますが、雄しべからは花粉が出ておらず、雌しべも不完全なことが多く、ほとんど種子ができないことが最大の特徴です。
日本では温州ミカンの乾燥した果皮を「陳皮(チンピ)」と呼び、江戸時代から使用され始めました。陳は「古い」の意で、乾燥して長年月を経たものを良品とします(写真③、④)。健胃、鎮吐、鎮咳などを目的として風邪薬の“香蘇散”や飲み過ぎ・食べ過ぎに効く“平胃散”などの漢方薬に配合されています。果皮にはリモネンなど特有の香り成分が含まれていますので、ミカンの皮を入浴剤として風呂に入れると毛細血管を広げて血行をよくし、冷え性や肩こり、神経痛などに有効です。
食べたミカンの皮を素早く乾燥させるには、比較的細かく裁断して紙箱などに広げ、炬燵の中や風通しの良い場所などに置いておきます。乾燥できたら適当な容器に収納し、しっかり蓋を閉めて湿気ないよう保存します。使い方としては、適当な大きさの布袋あるいは茶袋に入れ、薬缶でしばらく煮立たせた液を浴槽に注ぐと効率よく利用でき、湯上りがぽかぽかと温泉気分を味わうことができますよ。
さぁー、今日から蜜柑をたくさん食べて、陳皮作りを始めましょう !!



