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耳寄りな話:2 クチナシの花の甘い匂い

薬草園の中央奥から漂う甘い匂いの正体は、真っ白な6枚の花弁を車輪状に広げたクチナシ(Gardenia jasminoides)です。この植物は、遺伝子が劣化しないよう自家受粉を回避する手段として“雄性先熟性”を有しています。すなわち、開花直後の葯からは成熟した花粉が直ぐにこぼれ出ますが、雌しべが熟すのは4~5日後で、その時にはすでに花粉が能力を消失して自家授精できません。したがって、授粉やその後の受精・結実をより確実なものにするためには、開花が4~5日ずれた相性の良い2株を選別し、それぞれを挿し木増殖した後、それらを隣接して植えておく必要があります。薬草園には特に相性の良い2株(まだ小苗の状態ですが、---)と、さらに奄美大島の野生株を植えてありますので、今後、果実の収穫量は年ごとに増加するものと期待しています。

 初冬の頃、橙赤色となった完熟果実は漢方薬材として極めて重要ですが、食品用の黄色
染料としても用いられます。お節料理に添える“栗きんとん”の着色には、日本産の良質な実が絶対お勧めです。

クチナシ(奄美野生株)の白い花
アマチャ(アジサイ科)