イヌサフラン・倍数体の作出に有効な植物ホルモン材
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特徴
イヌサフラン(Colchicum autumnale)は、ヨーロッパ中南部および北アフリカの湿った草原に群生するチゴユリ科の球根植物です。9月下旬頃、タマネギ大の球茎から細い管状に伸び出した花が裸の地面から葉を着けずに現れ、淡紫紅色の6弁花を開きます。つまり、花時には葉がなく、翌春に3~4枚の大きな葉を出し、6月上旬に枯れます。本種は水や土がなくても開花時期には机の上で花を咲かすことができる面白い性質を有しています。
種子および球茎にアルカロイドのコルヒチンを含有し、リウマチ、痛風などの関節痛に鎮痛剤として利用されていますが、毒性が極めて強く、消化器官の細胞分裂が阻害されると下痢や嘔吐、腹痛などが起き、また中枢神経にも作用して皮膚の知覚麻痺あるいは肝障害を併発するなど、その“取り扱い”には細心の注意を要する薬材です。一方、この成分は細胞分裂時に染色体が分離するのを阻害して染色体を2倍にする作用があります。すなわち、発芽直後の成長点部をコルヒチン水溶液に浸けると、一時的に生育が阻害されるものの、やがて四倍体の植物となります。通常の二倍体と交配して種子を作らない三倍体ができるなど、現在では観賞植物の商品価値を向上させる植物改良などに広く応用されています。