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フジバカマ・匂い袋の正体

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特徴

 フジバカマ(Eupatorium japonicum)は、奈良朝時代に中国から渡来し、関東以西の川べりに見られる多年草です。秋の七草の一つ「藤袴」として知られていますが、今では野生地が激減して絶滅危惧種に指定されている。同じような場所に生えている白花のヒヨドリバナと混同されやすいが、本種は下葉が三裂していて、花が藤色という違いがあります。

 本種の全草を乾燥したものが「蘭草(ランソウ)」で、クマリンを主成分とする精油が含まれ、生干しにすると桜餅のような良い香りがするので、匂い袋に入れて身につけたり、風呂に入れたりします。利尿、通経および黄疸にも効果があるとされています。

 日本書紀の『允恭(インギョウ)天皇記』に「蘭」の字で最初に記され、また『万葉集』には七草として詠まれた1首のみが見られますが、『古今集』以後は多く詠まれています。『源氏物語』では藤袴の巻に光源氏の息子夕霧が従兄弟の玉蔓に自分の思いを伝えようとする場面に登場しますが、実らない恋の場面に薄紫の花とほのかな香りがもの悲しさを添えているという“お話”ですね。今日のように毎日入浴しない代わりに、袂に匂い袋をいくつも忍ばせた時代ならではの場面設定となっています。