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ムラサキ・高貴な色は痔のクスリ?!

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特徴

 ムラサキ(Lithospermum erythrorhizon)は、日本の南・中部にかけて広く自生し、万葉の頃から詩歌に広く詠まれ、その根が大切な薬材や染料として賞用されてきました。5月中旬頃から径4mm程度の純白花を咲かせます。根を乾燥させたものが「紫根(シコン)」で、消炎、解毒、解熱などの作用があり、漢方では痔核の疼痛や肛門裂傷などに利用されています。

 聖徳太子が摂政になった600年頃、中国・隋の制度に倣って律令制度が制定され、官吏を6階級に分け、頭にかぶる冠の色によってそれぞれを区別しました(冠位十二階)。最も高位である徳冠を「紫色」と定めたことから、それ以後紫は常に高貴な色であるイメージが定着したようです。因みに、中国では「黄」が最高位ですから“黄帝”と呼びます。当時、国としての威信を具現化する狙いもあったようで、当時でも希少な染め色が採用されたと考えられます。染料の紫根については「里根」という記述が残されていることから、畑で栽培したものも存在していたようですね。ところが現在、大規模な生産栽培技術は未だ確立されていないばかりか、自生株も激減して絶滅が危惧されている状況です。今では紫根染めも京都や陸中花輪町などで細々と行われているにすぎません。しかしながら、高貴な人が誇らしげに着ている服が、実は痔の薬と同じとはちょっと楽しいではないですか ?!