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アイ・古代からの染料植物

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特徴

アイ(Persicaria tinctoria)はベトナム南部原産とされ、古く中国から渡来した一年草です。別名「タデアイ(蓼藍)」。草丈は50~80cmで、茎は紅紫色を帯びます。葉は長さ5~15cmの長円形で、互生。夏から秋には穂状花序に淡紅色または白色の小花を多数つけます。

 葉を「藍葉(ランヨウ)」、果実を「藍実(ランジツ)」と呼び、主にハチやアリに刺された時の解熱・解毒薬として用いられました。葉にはインジカンという成分を含み、これが加水分解されて、さらに酸化すれば藍色色素のインジゴとなります。7月中旬の開花前後に2回の葉刈りを行い、裁断・乾燥したものに水を加えて藍菌による発酵を促します。色素成分を濃縮したのが「蒅(スクモ)」で、地下に埋めた大甕容器の中で再発酵させて藍色が染め付けられます。藍は布地を強くし、防腐剤の役目をします。また紫外線を防いで肌を守る効能もありますが、野良着としてはブヨやカなどの虫を除ける働きも見逃せませんね。

 今では徳島県の特産品となっています。天正年間(1573~90)に藩主の蜂須賀家政が栽培を奨励したのが始まりとされ、江戸期には俗に「阿波25万石、アイ50万石」と言われるほどに盛況でした。本種は連作を嫌うため、吉野川に敢えて堤防を築かず、代わりに二重三重の水害防備林を設け、大水が山から運ぶ客土を巧みに利用しました。これを地元では「蜂須賀さんの無堤防主義」といった由。