アマチャ・花祭りに献ずるお茶
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特徴
アマチャ(Hydrangea serrata var. thunbergii)は、本州の山中に稀に自生する落葉低木です。梅雨の頃、朽木周辺のスギ林の中に淡青色の花を見出すことができます。木質の茎が叢生し、高さ70~100cm。枝先に4枚の蕚(ガク)片が発達した装飾花をつけ、初め青色で徐々に淡紅色に変わります。かつては草本類も含まれたユキノシタ科でしたが、最近の葉緑体DNAの分析研究で木本性だけのアジサイ科に所属が変更されました。
「甘茶(アマチャ)」は、9月に葉と枝先を摘んで水洗し、約2日間陽乾し、これに水を噴霧して、1日積み重ねて発酵させた後、よく揉んで乾燥したものです。甘味成分はフィロズルチンで、砂糖の1,000倍の甘さがあるとされ、丸剤などの甘味・矯味用として利用されています。現在の主産地は長野県柏原付近で、年間の生産量は約40㌧ほどです。ところで、近縁のアジサイの葉には青酸配糖体という猛毒成分が含まれていますので、茶あるいは料理の飾りとしても使わないよう注意が必要です。
4月8日に釈迦の降誕を祝して行われる灌仏会(カンブツエ)=「花祭り」では、釈迦像の頭上から甘茶湯を注ぎます。また参詣者は甘茶で墨をすって虫除けの呪い歌を書き、便所などに張りました。ただ、このお茶=甘葛(アマヅラ)がツタの煎汁から甘茶に変わったのは19世紀に入ってからだそうです。