ゴマ・“ごまかし”のない花
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特徴
ゴマ(Sesamum indicum)は、熱帯アフリカのサバンナを起源とする最古の油料作物で、紀元前3000年には古代文明の社会ですでに利用されていました。高さ1~2mになる一年草で、成長は極めて速く、かつて伊賀忍者が跳躍力をつける訓練に用いました。夏に咲く花は白または淡い紅色の“一日花”です。典型的な自家受精の植物で、開いた花の数だけ結実します。
成熟種子が「胡麻子(ゴマシ)」で、薬用には一般に黒胡麻を用います。セサミンなどの抗酸化物質が多く含まれ、滋養強壮、緩下(カンゲ)、解毒などの作用があって虚弱体質、病後の回復、便秘などに用いられます。血中のコレステロールや中性脂肪の上昇を抑え、動脈硬化や高血圧の予防にも役立ちます。
インドに起こった仏教の肉食禁忌の食事思想は、ゴマの食文化を大いに高め、日本では江戸時代初期に独特で地方色豊かな各種の精進料理が生まれました。ただ、今では世界一の輸入大国となっています。
日本にはゴマに因む言葉が多く残されています。例えば「ごまかし」は、小麦粉にゴマを混ぜて焼き膨らした「胡麻胴乱」というお菓子で、中空のため見かけだけ良くて内容の伴わないものを意味するようになりました。また「胡麻をする」とは幕末頃から広まった俗語で、すり鉢で胡麻の種をすりつぶすと、鉢の「あちらこちらに」着くということから、他人にへつらうことの例えとされています。