ハマボウフウ・お椀物の具材専用
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特徴
ハマボウフウ(Glehnia littoralis)は、海岸砂地に自生する多年草で、根茎は地下に長く伸びて1.5mに達するものもあります。その先に長さ約20cmの根が存在します。幼苗期の根は当然地表面近くにありますが、成長とともに水気を求めて地中深くに入り込みます。葉は1~2回3出複葉で、夏頃に白色小花を多数開き、小卵形で翼のついた果実を砂上に散布します。
本種の根茎と根を乾燥したものが「浜防風(ハマボウフウ)」で、現『日本薬局方』にも収載されています。発汗、解熱、鎮痛などの作用があり、日本では江戸中期以降「和産防風」として多くの臨床経験を積み重ねてきましたが、現在では「防風」の正品である藤助ボウフウ(Ledebouriella seseloides)の乾燥根が中国から安定供給されていて、お正月に飲む“お屠蘇”などに配合されています。
本種の葉は形や色合いがよく、葉柄とともに芳香を持つので刺身のツマや汁ものの具材として賞味され、「八百屋ボウフウ」とも呼ばれています。本種は砂浜から少し入った原野や畑地には全く見られない、という特殊な生態の植物です。ところが近年海岸の造成工事が進んで海岸近くの植物相に変化を来たし、今では絶滅危惧種に指定されています。現在、鳥取県の畑地などで具材専用の生産栽培が細々と行われています。