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ヒメカンアオイ・ギフチョウの食草

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特徴

 太古の昔、ユーラシア大陸の中央部(現在の中国雲南省の奥地)で生まれたカンアオイ原種は、その後の地殻変動に乗って分布域を広げ、環境変化の影響を受けて幾多の遺伝的変異を重ね、今では欧州に1種、北米に8種、東アジアには80余種が確認されています。関西では太平洋側にスズカ系、内陸部にヒガシヤマ系、日本海側にサンイン系(青葉山やエンゼルラインにも)が生えています。

 カンアオイの仲間(Asarum sp.)は分類地理ならびに昆虫との関わり合いを説明するのに絶好の材料です。すなわち、落葉に隠れて咲く花には腐臭があり、キノコバエが産卵し、やがて孵化した幼虫が受粉を手助けします。1ヶ月後には果肉が溶けて突然種子がこぼれ落ち、直ぐにアリが巣へ運びます。種子の突起物に甘い誘引物質があるからで、不要となった種子は巣の外へ運び出されます。実は、そこが本種の発芽・生育の好適地であり、分布域の拡大(年間5m程度)にもつながっているのです。

 春の女神ギフチョウは脚先のセンサーで精油成分のほのかな匂いを嗅ぎ分け、葉裏に産卵し、幼虫はその新葉を食べて育ちます。3齢までは一列に整列して葉を食べ尽くしますので、餌植物の貴重さを知っているようです。加えて、糞中に植物の成長を促す物質を残して共存共栄を目指しているらしいのですよ(吃驚 !!)。地下部が「杜衡(トコウ)」で、細辛の代用品(鎮咳、鎮痛、利尿)とされています。