ホンカンゾウ・中華食材の金針菜
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特徴
ホンカンゾウ(Hemerocallis fulva)は、中国中部原産の多年草で、崑崙山脈の揚子江側に分布しています。日本へは昭和初期に渡来しました。『中国薬典』によると、根を「萱草(カンゾウ)」と称し、利尿剤として水腫、血便、黄疸などに用いています。また花蕾を採取して熱湯で数分茹でて乾燥したものが中国料理に使われる「金針菜」「黄花菜」で、水で戻してスープの具にすることが多い食材です。近年、沖縄県では不眠や精神安定に効があるとして、茶材やサプリメントが販売されているようです。
日本にはもともと本州以南の原野などに群生する橙黄色一重咲きのノカンゾウ、三倍体の八重咲き種であるヤブカンゾウ、暖地の海岸などに群生して冬季にも地上部の葉が残るハマカンゾウ、あるいは高山の湿原を中心に分布しているニッコウキスゲなどが知られています。これらの若芽、蕾や花はかすかな甘味とぬめりがあって、山菜としては癖がなく美味です。
若葉を食べて憂いを忘れる中国古来の習俗から、“忘れ草”とも総称されて和歌にもたびたび謡われています。若くして亡くなった近代の閏秀歌人・山川登美子(1879~1909)は、与謝野鉄幹を間にはさんで晶子との争いに敗れ、苦しさを忘れるために「それとなく紅き花みな友にゆづりそむきて泣きて忘れ草つむ」と詠んだのは有名な逸話ですね。