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ジャノヒゲ・苦い漢方薬の代表

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特徴

 ジャノヒゲ(Ophiopogon japonicus)は、本州北部以西の陰湿地に生える常緑の多年草で、しばしば庭園に植えられています。最近の遺伝子解析によってユリ科からクサスギカズラ科へ所属が変更されました。短い根茎から多数のひげ根を生じ、ひげ根はところどころ肥厚して白色の小塊となります。初夏、葉間から短い花序を出して淡紫色の小花をつけます。果実は濃青色をした球形で、板の上に投げつけるとよく弾むので「ハズミ玉」と呼ばれたり、竹鉄砲の弾として利用するので「鉄砲玉」とも呼ばれます。和名は「蛇の髭」ですが、考えてみるとヘビにヒゲはないので奇妙です。本種の細長く群がった葉を、宮中を警護する官職・尉(ジョウ)のあご髭に見立てた「尉の髭」が語源と考えられます。

 根塊を乾燥したものが「麦門冬(バクモンドウ)」で、鎮咳、去痰、強心、滋養強壮、利尿、催乳などの作用があります。漢方薬は概して苦いものが多いのですが、中でも「麦門冬湯」は格別に飲みにくい処方です。大病後の衰弱した人あるいは老人で痰が非常に粘っこく出にくい症状を改善します。結核患者にも賞用されています。また「麦門冬粥」を食すれば穀食を断ち得るといわれ、「余糧(ヨリョウ)」または「禹餘糧(ウヨリョウ)」の別名があります。かつては河内長野市三日市付近で栽培・生産されていましたが、近年では需要の大部分を中国からの輸入に依存していて、その基原植物はナガバジャノヒゲです。