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クララ・江戸期の若狭特産品

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特徴

 クララ(Sophora flavescens)は、本州~九州の草地や川原に多いマメ科の多年草です。草丈は0.8~1.5mになり、茎は円柱形で叢生し、株元部分はやや木質化します。葉は奇数羽状複葉で互生し、小葉は35枚ほどつきます。6~7月頃、茎頂に淡黄緑色の蝶形花をつけ、花後にはササゲに似て長さ5~8cmの豆果をつけます。根は太く肥大して地中深く入ります。全草に残存性の苦味と異臭があり、和名は“苦辣”の意味で、特に根を噛むと目がくらむほど苦いです。ところで、ドイツの音楽家シューマンの妻の名前がクララで、確かに彼女はシューマンがくらくらっとくるようなピアノの名人でした。

 秋~冬に掘り取った根を乾燥したものが「苦参(クジン)」で、苦味健胃、止瀉、消炎作用などがあります。漢方薬の「苦参湯」は1種類の生薬だけで構成される処方で、たむし、あせも、痒みなど厄介な皮膚疾患に有効です。各地に野生して入手しやすい生薬ですが、生理作用が激しく毒性も強いので決して素人療法はしないことです。明和4年(1767)に発刊された板屋一助著『稚狭考』の中に薬用特産品としての記載がありますので、恐らく若狭近辺にもたくさん群生していたことでしょう。

 かつて根の煎液は家畜の寄生虫駆除や農作物の殺虫に利用されていました。また皮部の繊維は製紙原料にも利用され、虫の食わない紙として「苦参紙」と呼ばれた由。