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クチナシ・栗きんとんの天然染料

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特徴

 梅雨の晴れ間に漂ってくる甘い匂いを辿ると、艶のある葉と真っ白な花のクチナシ(Gardenia jasminoides)が目に留まります。ただ、これは八重咲きの品種で、実が着かない観賞用の庭木です。果実を”栗きんとん”など食品の着色料とするものは、静岡県以西に分布する“一重咲き”の常緑低木で、秋に黄紅色の果実を結びます。普通、双子葉植物の花はほぼ五数性(稀に四数性)ですが、本種は他に類のない六数性で、萼片6枚、花弁6枚、雄しべ6本で、果実には縦に6稜が走ります。

 本種は「雄性先熟性」という、遺伝的に劣化しやすい自家受精を回避する形質を有しています。すなわち、花粉は開花直後に成熟しているのですが、雌しべの先が分泌液で濡れてくるのはそれから2~3日後の花が萎れる直前です。そこで、結実を確実にするためには開花期の異なる株を隣接して植えることが極めて重要なポイントとなります。相性の良い個体を選び、それぞれ挿し木増殖して植えましょう。

 完熟した果実を「山梔子(サンシシ)」と称し、消炎、止血、利胆、解熱、鎮静などの作用があり、二日酔いの特効薬・黄連解毒湯などに配合されています。発熱と病後の新陳代謝の変化などによって、神経系が刺激されて生じた情緒障害と不眠などに有効な薬材です。また飛鳥時代から黄色の染料として用いられ、紅花の色を加えて皇太子のみに着用が許される「黄丹(オウニ)の袍(ホウ)」を染めました。