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ムクゲ・槿花一朝の夢

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特徴

 ムクゲ(Hibiscus syriacus)は、小アジアまたはインドの原産といわれ、日本へは中国を経て平安時代に渡来し、庭木や生垣として愛培されている耐寒性の落葉低木です。花は6~10月まで咲き続けます。離弁花が多いアオイ科の中で、本種はフヨウとともに例外的な合弁花です。漢名には「木槿(モックン)」が当てられ、また韓国では「無窮花(ムグンファ)」と称し、国花とされています。

 蕾を乾燥したものが「木槿花(モッキンカ)」で、止瀉作用を有し胃腸カタル、腸出血、下痢などに用いられます。また樹皮は水虫やタムシに効くとされています。成分としてサポナリン、粘液質などを含んでいます。樹皮は繊維質が強く、ロープ、結束料あるいは製紙の原料として用いられてきました。

 アサガオやハナショウブと同じように花が1~2日しか保たない植物(一日花)です。このような花の性質から、栄華が長続きしないことを”槿花一朝の夢”と昔から言い古されています。さらに中国には「槿花一朝の栄」、「朝生暮死」などの諺もあり、いずれも“生命は儚い”ことの例えです。

 茶花として「冬はツバキ、夏はムクゲ」といわれるほど代表的なものです。多くの品種がありますが、特に一重咲きが好まれます。江戸時代の茶匠千宗旦が愛好した底紅の花を「宗旦木槿」、また小堀遠州が愛好した純白の花を「遠州木槿」と呼び、この両者が茶道の世界では双璧と讃えられています。