シャクヤク・奈良に伝わる薬種
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特徴
シャクヤク(Paeonia lactiflora)は、中国東北部からシベリアの東部にかけて自生する宿根草です。日本へはボタンより先に渡来し、足利時代の栽培記録が残されています。
本種の肥大した根を剥皮して乾燥した「芍薬(シャクヤク)」には、鎮痛・鎮痙(ケイ)、収斂(レン)(粘膜細胞の緊縮)、緩和作用などがあり、漢方では女性の生理不調などからくる下腹部のつっぱりや痛みをとり、血管の働きを順調にする働きがあるとされています。例えば、当帰芍薬散は古来より産前産後の薬として有名ですし、四物湯は更年期障害などの婦人病疾患に対する基本処方とも呼べる方剤です。また芍薬甘草湯は服用後5分ほどで「こむら返り」の酷い痛みが解消される“魔法のようなお薬”ですね。
欧米人はカラフルなものを「良い」「好き」と感じるのに対して、日本人は潜在意識の中で白いものを「高貴」「貴重」と感じる民族とされています。芍薬についても例外ではなく、中国では効能によって使い分けていますが、日本では「白芍(ハクシャク)」が主に使用されています。薬草園では奈良県で古くから維持されてきた薬用の白花シャクヤク「梵天(ボンテン)」という品種を栽培しています。
本種の生育特性で特徴的なのは、9月中旬~10月初旬に休眠することです。そのため、通常4年間隔を目処に、植え替えと株分けを必ず実施することが栽培の重要なポイントです。