テンダイウヤク・徐福伝説で有名な霊薬 ?!
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特徴
皆さんは“徐福伝説”をご存知でしょうか? 『史記』によると、秦の始皇帝に「東方の三神山に長生不老の霊薬がある」と具申して船出したと記され、日本各地にさまざまな逸話が残されています。特に熊野(現在の三重県熊野市波田須町)にたどり着いた説が有力で、持参したと伝わる“すり鉢”や秦代の貨幣が出土しており、また和歌山県新宮市には墓や公園も造られています。
彼が見出したとされる霊薬の一つがテンダイウヤク(Lindera strychnifolia)というものです。もともと中国浙江(セッコウ)省天台山の特産品として知られ、古くに伝来して和歌山・三重県に野生化したクスノキ科の常緑低木で、雌雄異株です。根は長い木質の塊状で、表面が暗黒色を呈するため「烏薬(ウヤク)」と呼ばれています。結晶性の芳香物質を含んで樟脳に似た香気があり、味はわずかに苦い薬材です。日本ではあまり利用されませんが、芳香性健胃、鎮痛・鎮痙などの作用があり、腹部の疼痛や胃腸機能の回復、軽度の知覚麻痺などに効果が知られています。
新宮市近在ではその苗木を霊験あらたかな薬木として、また葉から調製した健康茶などが土産物として売られています。“不老不死の妙薬”としてはかなり疑わしいところですが、胃腸機能が健全な状態であれば長生きに多少は役立つのかもしれませんね。