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トウゴマ・激烈な俊下(シュンゲ)剤

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特徴

 戦後のまだ衛生状態が悪い頃、多くの子供がお腹に回虫や十二指腸虫を抱えていましたので、丸一日の絶食後に“マクリ(海藻)”や“ひまし油”を飲ませて駆除する方策がとられました。酷い下痢を起こさせるので、団塊世代の方は“苦しくて嫌な思いをした”記憶をお持ちではないかと思います。

 トウダイグサ科のトウゴマ(Ricinus communis)の種子を「蓖麻子(ヒマシ)」と呼び、これから搾られるのが「ヒマシ油」です。漢方で“峻下(シュンゲ)”と表現される、激烈な下剤作用を有しています。またこの油は、例外的に水にすばやく分散して浴槽を汚さないため、多くの浴用製品に利用されていたり、廃棄する食用油を固める材料などに応用されています。さらに、女性用の洗顔石鹸では、透明に近いものほどヒマシ油の含量が高いことが知られています。

 本種は北部アフリカの原産で、熱帯では高さ8~10mの木になりますが、温帯では高さ2~3mの一年草です。茎は中空、葉は径30~50cmの大きな掌状です。晩夏に花穂の上方でクリーム色の雌花、下方に雄花をつけますが、「雄性先熟性」という自花受粉を防ぐ仕組みを備えています。刺のある果実は熟して3片に分かれ、3個の種子は扁圧された楕円形です。外面は滑沢で黒、白、褐色の混じった大理石様の条紋があり、さながら“大きなダニ”といった様相を呈します。