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ワレモコウ・吾も紅か、割れ木瓜か ?!

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特徴

 ワレモコウ(Sanguisorba officinalis)は、日本を含むアジア大陸に広く分布する多年草で、野山の陽当たりのよい草むらなどに生えています。根茎は太くて長く横に伸びます。茎は細くて堅く高さ1mほど。葉は奇数羽状複葉で、春先に二つ折れになって伸び出します。8~10月頃、クワの実に似た特徴的な暗赤紫色の花をつけますが、バラ科の中では花弁を無くした異端者で、虫媒花から風媒花へ変化する途中段階として種々の遺伝的な形態変異が知られています。独特の風情があって生け花などにもよく使われますが、水揚げを良くするには熱湯で切り口を煮るとよい。

 根茎を乾燥したものが「地楡(チユ)」で、成分としてタンニンを約17%とサポニン配糖体を2.5~4%含んでいます。止血、収斂(粘膜細胞の緊縮)などの作用があり、出血を伴う胃腸疾患や月経過多などに用いられます。煎液で“うがい”すると、口内炎や扁桃炎などに優れた効果が得られます。

 和名の語源には諸説があります。「吾亦紅」の表記が広く知られたのは久米正雄(1891~1952)の小説(1939)からだと思われ、渋い暗紅色を「吾も紅」と納得する人は多いのですが、植物学者の前川文夫博士の説は少し違います。本種の蕾が、宮中の御簾の上部を飾る帽額(モコウ)の模様から生じた木瓜(モッコウ)紋に似て、四つに割れ目が入っているので、「割れ木瓜」を語源とするらしい。