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野鳥からプレゼントされたアケビの花

薬草園の開設から数年が経った頃、サンシュユの近くでアケビが生えているのに気付きました。野鳥が落とした糞から芽生えたに違いありません。以来、大きく育つのを見守ってきましたが、10周年を迎えるのに合わせたように花を咲かせるような株に育ちました。

アケビ(Akebia quinata)は、本州・四国・九州などに広く分布し、山野に普通に見られる落葉性のつる植物です。葉は5枚の小葉からなる掌状複葉で互生します。4~5月頃、葉腋から総状花序が伸びて垂れ下がり、無花弁の単性花を開きます(写真①)。もとの方に1~3個の細長い柄を持つ雌花を、先の方には短い柄を持つ雄花を多数つけます。雌花は紅紫色で径約3cm、雄花は淡紫色で径約1.5cm。果実は長楕円形で(写真②)、熟すると紫色を帯びて縦に裂開するのが特徴です(写真③)。和名は”開け実”に由来します。中には多くの黒色種子があり、それを包む白い半透明の果肉には甘味と苦味があり、よく熟して裂開したら食べられます。子どもの頃、口に含んだタネを吹き飛ばしてよく遊んだものです。食糧難の時代、団塊世代の子供たちにとっては貴重な“甘いおやつ”的な存在だったのです。一方、大人にとっては厚い果皮の苦味が好まれます。中に挽肉、茸、味噌などを詰めて“揚げ物”にする(写真④)と山形県の郷土料理で、ほろ苦い野趣豊かな”酒の肴”となります。「大人の味」というやつですね。若い蔓先も茹でると奇麗な薄緑色となり、鰹節をのせて醤油で食べると美味しい。また果実に同量の砂糖を入れて1週間置くと、粘稠で甘い酵母が採れます。布でろ過してパンやケーキを作るのに利用できます。

アケビのつるを乾燥したものが生薬の「木通(モクツウ)」で、漢方では水の巡りをよくして体内に滞っている余分な水分や熱感を排尿することによって外に出す働きがあります。また乳の出が良くなる効果もあり、尿量減少、関節リウマチ、神経痛、膀胱炎や浮腫などの症状に用いられています。一方、野外において木の枝などで“突き目”をした時、アケビの蔓を10cmほど切り、一方の端から息を吹き込んで出てきた汁をつけると痛みが和らぎます。

つるは灰褐色で長く伸びて他の植物などに“左巻き”で絡みつきます。つるは強靱で、籠細工などに利用されています。

オランダのライデン大学にはシーボルトが日本から持ち帰ったアケビが今でも大切に保存栽培されていて、その花の模式図が大学の紋章に採用されています。私が現役の頃、その挿し木苗を譲り受けて栽培したところ、それはアケビそのものではなくてミツバアケビ(A. trifoliata)(写真⑤)との雑種(=ゴヨウアケビ)であることが判明しました。長崎近辺ではなく、江戸までの道中で採集したことによる同定ミスが発生したようです。数百年も経って間違いを指摘されたシーボルトさんもあの世で眼を白黒させているかもしれませんね !!

写真①
アケビの花(2010.4.28.撮影)
写真②
アケビの果実(2010.10.05.撮影)
写真③
裂開した果実(2010.10.20.撮影)
写真④
山形の郷土料理“肉詰め”
写真⑤
ミツバアケビの開花(2005.4.17.撮影)

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