爽やかな香りとシャキシャキ食感の八百屋ボウフウ
セリ科のハマボウフウ(Glehnia littoralis)は、北海道から南西諸島までの海岸砂地に自生する多年草です。通常、根茎は地下深くにある水を求めて長く伸び、ゴボウ状を呈して1mに達するものもあります。その先に長さ約20cmほどの根があります(写真①)。葉は1~2回3出複葉で、夏頃に白色小花を多数開きます(写真②)。果実は小卵形で、側面には6~7本の翼という特殊な形状となっています(写真③)。本種は砂浜から少し入った原野や畑地には全く見られないという特殊な生態の植物です。近年の全国的な護岸工事などによってそのごく限られた場所が著しく減少し、自生株はほぼ絶滅が危惧される状況となっています。現在では島根県松江市の大根島などで小規模な畑栽培が行われています。葉は形や色合いがよく葉柄とともに芳香を持つので、刺身のツマやお浸し、汁ものの具材として賞味され、「八百屋ボウフウ」とも呼ばれています(写真④)。
生薬「浜防風」は本種の根茎・根を乾燥したもので、『日本薬局方』にも収載されています。「「防風通聖散」、「十味敗毒湯」、「屠蘇散」などの漢方処方においては、江戸中期以降、正品「防風」(写真⑤)の代わりに「和産防風」として臨床経験が積み重ねられてきました。ちなみに、正品の基原植物は同じセリ科のトウスケボウフウ(Ledebouriella seseloides)で、中国の黒竜江、山西、山東・北部、河北省などに分布し、乾燥した山地の斜面や草原に生える多年草です。発汗、解熱、鎮痛などの作用があります。最近では中国から安定して輸入されるので、上記のような漢方薬にも正品が配合されています。
開園当初、私の故郷である宮崎県串間市の砂浜から採取したハマボウフウを、小浜市安納の浜砂で栽培してきましたが、タネ採りを怠った結果、いつの間にか消失させてしまいました。またトウスケボウフウについても内藤記念くすり博物館からタネを譲り受けて、一旦は栽培したのですが、こちらもタネ採り直前に大株が枯れてしまいました。機会があれば、両種ともいつの日か再び栽培を復活させたいと願っています。

(2013.07.20.撮影)

花(2005.06.23.撮影)

タネ(2024.07.10.撮影)

八百屋ボウフウ(2020.04.20.撮影)

正品の防風(2009.10.20.撮影)

