意外と美味しいクサギ新芽の酢味噌和え
近江今津から小浜に向かう27号線沿いの小藪で、この時期に濃い緑葉の中で真っ白な花を咲かせているのがクサギ(Clerodendrum trichotomum)です。小浜と若狭町の境界近くの右側ですが、生憎、車を止めるところがなくて、少し古い写真となってしまいました(写真①)。この植物は遺伝子解析に基づいた分類体系の見直しで、旧来のクマツヅラ科からシソ科へと所属が変更されました。温暖な気候を好み、日当たりの良い原野や林縁、河川敷、道路沿いなど、比較的水に恵まれた場所にしばしば群生しています。特に都市部の緑地や空き地など、“攪乱”を受けた造成地などにいち早く侵入して群落を作る、典型的なパイオニア種として知られています。したがって、人の生活圏でも目にすることの多い植物です。樹高は通常2mほどですが、大きいものでは高さ5mにも達する落葉小高木となっています。
葉は対生し、長さ15~20cm、幅10cmの卵形、全縁で長い葉柄が特徴です。若葉の裏には白色の柔毛が多く、特に春先には枝先が白く見えるほどです。葉は傷付けたり揉んだりすると、独特の強くて嫌な臭気を発します。それが和名“臭木(クサギ)”の由来です。如何にも毒々しい感じではありますが、悪臭は茹でるとほとんどなくなり、春先の新芽は山菜として料理に用いられます。割と身近にあって採集が容易なこと、また乾燥して保存もできることから、古くから救荒植物として各地で利用されてきました。茹でた後、水に晒してアクを抜き、お浸し、煮物、佃煮、油炒め、天ぷらなどに利用します。中でも“酢味噌和え”が絶品ですよ。一方、若い枝と葉を乾燥したものが「臭梧桐(シュウゴトウ)」と呼ばれ、高血圧、下痢、リウマチなどに用いられます。
秋の気配が感じられるようになると、枝先に20cm程度の集散花序を着け、白色で直径約3cmの花を咲かせます。花にはジャスミンを想わせる芳香があり、かなり遠くまで良い香りを漂わせます。花の咲き始めは4本の雄しべが上向き、雌しべは下向きで尖っていますが、花が落ちる頃には雄しべが勢いをなくして下に垂れ、入れ替わるように雌しべが斜め上に向き、その先が二股に分かれます。雌しべが後で熟して別の花の花粉を受け取るような仕組み、すなわち“雄性先熟性”という自家受粉を回避するための段取りになっているのです。日中、夜間ともに昆虫の訪花があり、アゲハチョウ科やスズメガ科、ヤガ科、シャクガ科、ツトガ科などが受粉を手助けしているようです。
その後、赤い萼片に包まれた藍色の小さな果実が9月下旬頃に熟し、鳥類によって種子散布されます。果実は8mm程度の球形で光沢があり、熟すにつれて空色から濃い碧色になります。萼は開花後も宿存し、淡紅色から赤紫色へと変化して果実の色を引き立てます(写真②)。青い果実を潰した液に絹布などを浸けると、美しい青色に染まります。古くから直接染料として利用されてきました。紫外線で退色しますが、その儚さが草木染めの特徴でもありますから、同じように“重ね染め”をすれば良いのです。
この仲間にはゲンペイクサギ(C. thomsonae)が園芸店で販売されています。西アフリカ原産、つる性の常緑低木で、五角形の萼が白色、内部の花弁は紅色で筒状を呈します。赤と白のコントラストが愛らしいので、“源平”の名が付けられました。一方、同じような臭気を持つ小型のコクサギ(Orixa japonica)はミカン科の植物で、アゲハ幼虫の食害を受けます。この植物は葉の着き方に特徴があります。すなわち、主軸を挟んで2枚ずつの互生となり、“コクサギ型葉序”と呼ばれています(写真③)。対生から互生への移行型と考えられ、本種の他にケンポナシ、ネコノチチ、サルスベリ、ヤブニッケイなどがその例です。
最近、その猛烈な繁殖力で目につくようになった植物がボタンクサギ(C. bungei)です。花(写真④)は一見アジサイのようで愛らしいのですが、地下茎から芽を出して広い範囲に茂り、鳥が運ぶタネからも容易に芽生えますので、“有害外来植物”の一つとして指定されています。愛培される際は地下茎が逃げ出さないような容器に植え、花が終わったら直ちに“花殻摘み”を行うなど、逸脱を防ぐ手立てを講じる必要がありますね。皆さんもご注意ください。

クサギの花(2024.8.02.撮影)

クサギの果実(2024.10.05.撮影)

源平クサギ(2024.8.25.撮影)

コクサギの特異な葉序(2019.6.15.撮影)

ボタンクサギの花容
(2025.6.29.撮影)

