中川淳庵顕彰薬草園

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お知らせ(毎月、更新中です)

トピックス2026年10月のお知らせ

秋の彼岸(9月23日)頃、季節を違えることなくあちらこちらでヒガンバナの赤い花が目立ちます。この花は気温の変化だけでなく、土壌水分や日長をも感知する極めて精巧な“体内時計”を内蔵しています。そのため2~3日のズレで毎年決まった日付で開花するのです。この花が枯れると、いよいよ朝晩が冷え込むようになり、秋の七草やキクを飾って名月を愛でたりします。

見頃の花①; 薬草園では中央部に薬用の杭白ギクを栽培しています。一般には観賞用の大輪ギクや丸く仕立てた小ギクの鉢物を観賞します。また日本では野生の黄色い野ギクの花を薬用としてわずかに利用するだけで、本格的な“薬用ギク”の生産はありません。しかし、小浜では若狭東高校とお菓子メーカーの共同企画でキク風味のパンや饅頭が売り出されたことがありますので、お口にされた方もあることでしょう。この薬用ギクは1980年に中国馬橋人民公社から導入したもので、その頭花乾燥品にはルテオリン、アピゲニンなどのフラボノイドが多量に含まれており、福井県立大学生物資源学部・村上茂教授の研究によると、それらのフラボノイドが多糖類からグルコースへの分解を抑制する働きによって食事後の血糖値上昇を有意に抑えるとともに、抗酸化、抗炎症作用などもかなり強いことが報告されています。湯呑に数輪を入れて熱湯を注ぎ入れると、「菊花茶」の出来上がりです。この時季だけ味わえる馥郁としたキクの香りを存分にお楽しみください。

見頃の花②; 病院の待合室から覗き見できるところに張った網にアサガオ(Pharbitis nil)の淡い青色の花が咲いています。ヒマラヤ・ネパールの山麓地帯を原産とするつる性の一年草です。典型的な短日植物で、わずか1~2日の短日処理で花成誘導されることから、しばしば理科の実験材料として利用されます。気温が23~27℃の条件下では、日没後約10時間目に花を開きます。体内の生物時計(内生リズム)は日没時にリセットされることから、夕方少し早く暗いところに移すと午前2~3時に開花し、逆に夜遅くまで明るくしておくと朝なかなか花を開きません。ただし、季節が進むにつれて開花時刻が早まり、10月には夜中の1時半頃に花を開くことから、本種の開花には生物時計だけでなく気温も関係していることが知られています。また本種の茎は左巻きに物に巻き付いて伸びます。わが国には奈良時代に薬用として遣唐使によってもたらされ、観賞用として盛んに栽培されるようになったのは江戸時代以降で、入谷の真源寺(鬼子母神)や染井が栽培の中心となり、7月6~8日に開かれる朝顔市は現在も続いています。江戸中期の本草書、平賀源内の『物類品隲(ブツルイヒンシツ)』(1763)には変化アサガオが明記されています。この変化アサガオは概して実を結ばないため、奇花を翌年出現させるためには外見的に普通咲きを示すヘテロの母木から採種し、次代の個体群からごくわずかの出物(子葉の異形個体)を選出するのです。遺伝学上の大法則メンデリズム発見(1900)に先立ち、その100年前には劣性遺伝子を選抜する独自の手法を探り出し、またそれを各自の庭先で活用していたことを考えると、今更ながらその成果に驚嘆させられます。それらの技法は今も京都の同好会に引き継がれ、京都府立植物園で毎年開かれる「朝顔展」で変化アサガオの奇花を見ることができます(決して美しいものではありませんが、??)

熟した種子を採取して乾燥させたものが「牽牛子(ケンゴシ)」で、利尿と駆虫を兼ねた峻下剤として用いられています。

見頃の花③; 東玄関のすぐ近くでヤナギタデ(Polygonum hydropiper)の花が満開です。全国各地の川原や休耕田などで普通に見られる一年草です。ヤナギに似た葉は細い披針形で互生します。全草が赤紫色と緑色の2系統があり、いろいろの形で料理に使われています。前者の芽出しは刺身のツマに付け合わされ、本種はアユの塩焼きにつきものの「タデ酢」に利用されています。「蓼食う虫も好きずき」の諺は、タデを噛むとピリッとした辛味があるにもかかわらず食害する虫がいることに由来しますが、決して不愉快な味ではなく、アユの淡泊さを引き締めてくれます。その辛味成分は乾燥したり熱を加えるとその辛味は消えてしまうので、リンゴ酢またはワインビネガーなどと一緒に擂り潰した後、裏濾ししたものが“タデ酢”です。

見頃の花④; 中央部でひと際目立つ紫紅色の葉を広げ、その茎頂に紅白2段の穂状花を次々に咲かせているのがノゲイトウ(Celosia argentea)です。高さ1mにもなるインド原産の一年草で、四国や九州南部などでは野生化した株が見られ、また切り花用として生産栽培も行われています。本種の種子を乾燥したものが生薬「青葙子(セイソウシ)」で、強壮・消炎薬として血液や目の病気などの治療に利用されています。

本種の栽培では、種子が嫌光性のため発芽には覆土が不可欠の条件です。また高温発芽性で、発芽には25℃以上を要します。さらに、直根性のため移植を嫌うので、直に播いて適当な間隔に間引いて育てるのがポイントです。花成誘導の日長反応は相対的短日性で、14時間以下では花芽分化が促進され、16時間では逆に遅延します。したがって、幼苗時に保温資材などで暗くすると、短日感応して貧弱な株で開花してしまうことになります。風媒花のため近縁種と交雑しやすいので、その点でも注意が必要です。

杭白ギクと菊茶
アサガオの花
ヤナギタデの開花
ノゲイトウの花

トピックス10月の管理作業

① ;コエンドロのタネ播き
② ;サフランおよびイヌサフラン球根の植え付け
③ ;エビスグサおよびトウゴマのタネ採り
④ ;サジオモダカの花茎およびノゲイトウの整枝
⑤ ;雑草の駆除および落ち葉の清掃

トピックス“土・水無しでも机の上で花を咲かせるイヌサフラン”

9月下旬~10月頃、今まさに東玄関の通路近くで地表面からいきなり長さ約10cmほどの淡紫紅色の6弁花を開いているのがイヌサフラン(Colchicum autumnale)です(写真①、②)。ヨーロッパ中南部および北アフリカの湿った草原に群生する多年生の球根植物で、球根はタマネギ大(写真③)、茶褐色の外皮を被り、底部に脚と呼ばれる突起があります。花被の中程より下は細い管状を呈して花柄のように見えますが、実は花被の筒状部であって長く地下に伸び、子房は球茎の中にあります。水や土がなくても、開花時期には机の上に置くだけで花を咲かすことができる面白い性質があります。すなわち、花が裸の地面から葉を着けずに現れることから、「裸の貴婦人(naked ladies)」とも呼ばれています。花時には葉がなく、翌春になって地下の球茎から3~4枚のオモトに似た大きな葉を出し(写真④)、6月上旬には枯れます。草丈20~30㎝。蒴(サク)果は地中にあって熟し、果柄は徐々に伸びて、翌春葉とともに漸く地上に現れ、6月頃熟して中に暗褐色粒状の種子を内包しています。

アルカロイドのコルヒチンを、種子には0.2~0.6%、球茎には0.08~0.2%を含んでいて、リウマチ、痛風など関節痛の鎮痛剤として利用されます。なお、コルヒチンは毒性が強く、消化器官の細胞分裂が阻害されると下痢や嘔吐、腹痛などが起き、コレラに似た症状を引き起こします。中枢神経にも作用して、はじめ皮膚の知覚麻痺が起こり、大量では呼吸麻痺を起こし、重症になると肝障害を併発して循環器不全で死に至ることもあり得ます。

1937年、米国の研究者が「コルヒチンは、細胞分裂時に倍加した染色体を娘細胞へ分配する際、紡錘糸の牽引の働きを止めて、そのままで再び核を形成するように作用する」ことを見出しました。その後の応用研究で、発芽直後の成長点部をコルヒチン水溶液に浸けると、一時的に生育が阻害されるものの、やがて四倍体の植物となります。処理濃度と時間は植物の種によって異なり、およそ半数が枯死する程度が望ましいことが判ってきました。ただし、根は著しく成長阻害を受けるので、直接液が触れないように工夫する必要があります。こうして作出した四倍体と通常の二倍体とを交配すると、種子を作らない三倍体ができ上がります。雑種強勢によって成長速度が増し、かつ花も大形化することが証明されました。その具体例としては”種なしスイカ”が有名ですが、皮部が肥厚して味も劣ったため残念ながらあまり歓迎・普及されませんでした。現在では観賞植物の商品価値を向上させる植物改良などに広く応用されています。

写真① 地表に突然伸び出した花
(2023.10.07.撮影)
写真② イヌサフランの花
(2023.10.07.撮影)
写真③ イヌサフランの球根
(2023.7.25.撮影)
写真④ 葉を広げたイヌサフラン
(2024.5.10.撮影)

トピックス2026年9月のお知らせ

見頃の花①; 今年3月、薬草園のほぼ中央部に苗を植え付けたミシマサイコは、その後茎が大きく伸びて、今は枝先に黄色い花が咲いています。植物の概要についてはすでに解説しましたので、今回は番外編となる事項を書きます。第一は、学名表記の件です。かつて牧野富太郎博士は御殿場産のものを欧州アルプス原産のものと同一と見立てて「ミシマサイコBupleurum falcatum L.」としました。ところが、欧州産は高山性で、日本における栽培では二年生で結実した後ほぼ枯れてしまうことが判ってきました。その後、植物分類学上では中国産ホソバミシマサイコの変種扱いとして「B. scorzoneraefolium var. stenophyllum」と表記されるようになりましたが、それでは原種の中国産が日本産のような表記となって何か“変ですよね”。これは国際植物命名規約のルールに則って、日本産の名前が先行したことによる“食い違い”なのです。一方、『日本薬局方』における生薬「柴胡」の基原植物は未だに「B. falcatum」となったままですから、これまたおかしいですよね。局方審議会委員の中に植物分類の専門家が不在のため、誰からも正式な修正議案が提出されないのです。そのため「間違った学名がそのまま踏襲されている」という不可思議なことが放置されているのです。

話題の第二は、「柴胡」の生薬標本についてです。開園前の2012年春にタネを播いて育てた20数株が、その後も順調に成長して10年間も枯れなかったのです。一般的な継代栽培では冬季の排水不良や土壌病害などによって数年の“寿命”なのですが、よほど条件が適していたようで、これまで見たこともないような形状の生薬標本を得ることができました。虫食いの被害に気を付けて保存すれば、今後とも薬草園の“お宝”が得られたことは間違いありません。大事にしましょう。

見頃の花②; 物置スペースの前にひときわ大きな枝葉を広げているのがウド(Aralia cordata)です。アジア東北部に分布する大型の多年草で、茎は直立して疎らに分枝しますが、冬の寒さで地上部は枯れてしまいます。そこで、昔から図体だけが大きくて中身が伴わず使いものにならない者を”ウドの大木、柱にならぬ”と蔑みました。本種の茎は高さ2m以上にもなるのに中空で弱く、これといった使い道がない物と思われています。ところが、ウドの新芽は古くから春の季節ものとして汁の実、酢の物、煮物などに賞味される香り高い山菜の一つです。今から約250年前の文化・弘化の頃から栽培が始められて、現在では促成・抑制の軟白化栽培技術も進み、ほとんど年中食卓をにぎわすようになっています。軟白茎は鮮明な白色または紅色を呈し、また香気と歯切れのよい肉質のため、諸外国でもサラダ(英名;salad plant)として賞用されているようです。和名は、埋(ウズ)から転じ、土の中の芽を食べることに由来しています。

晩夏にやや淡紅色を帯びた白い花を咲かせます。そのまま放置すると、やがて黒い果実が実り、小鳥に食べられて、後日あちらこちらで実生苗が芽吹くことにつながりますので、早々に花殻を切り除く対応が求められます。

見頃の花③; キハダの下草として植栽したニラ(Allium tuberosum)ですが、いつの間にか逸脱してあちらこちらで白い花を咲かせています。やがて黒色小粒の種子が実りますが、葉に特有の臭気があり、料理に使って「フタモジ」とも呼ばれています。最近の研究によって、もとは中国北部に分布している野生ニラから改良された2n=32の同質四倍体であることが判ってきました。今では広く栽培されて中華料理などに多用されています。

茎葉および種子をそれぞれ「韮白(キュウハク)」、「韮子(キュウシ)」と呼びます。韮白には強壮、健胃作用がありますが、別名「起陽草」とは男性の精力増強を意味し、葉の味噌和えなどには強壮・強精効果が期待されています。また冷えからくる慢性下痢には餅を韮白・韮子とともに煮て食べたり、刻んだ葉を炊き込んだニラ粥にすると効果があるとされていますが、過度の期待から多食・過食しないよう注意喚起が併記されています。

日本での栽培の歴史は極めて長く、野菜としては料理の風味を増して食欲を増進するので、ニラは「薬食同源」の好例と言えましょう。葉ニラの養成株を暗黒下で軟化栽培したものは「黄ニラ(韮黄)」あるいは「軟白ニラ」と呼ばれ、味や香りがまろやかです。葉だけでなく、蕾が出てきたら花茎ごと利用する「花ニラ」はほのかに甘く格別の料理ともなります。中国では食べ物を温・熱・寒の性質に分けていますが、その温、すなわち身体を温める作用を有する代表が「ニラ」です。

見頃の花④; 東玄関の反対側の奥で淡紅色の花を咲かせているのが、フジバカマ(Eupatorium japonicum)で、この時期には時折吸蜜に訪れたアサギマダラの“優雅な舞”を楽しむことができます。 奈良朝時代に中国から渡来し、関東以西の川べりに見られる多年草です。秋の七草の一つ「藤袴」として知られていますが、近年では野生地が激減して“絶滅危惧種”に指定されています。

生薬「蘭草(ランソウ)」は本種の全草を乾燥したもので、クマリンを主成分とする精油が含まれ、生干しにすると桜餅のような良い香りがします。匂袋に入れて身につけたり、風呂に入れたりします。

『日本書紀』の允恭(インギョウ)天皇記に「蘭」の字で最初に記されています。後に皇后となる忍坂大中姫命(オシサカオオナカツヒメノミコト)が庭で遊んでいると、馬で通りかかった闘鶏国造(ツゲノミヤツコ)が、馬のハエを払うためと言って「園中の蘭を求めた」と記されています。このことから上代には我が国に渡来し、すでに栽培されていたと思われます。『万葉集』には七草として詠まれた1首のみですが、『古今集』以後は多く詠まれるようになりました。また『源氏物語』では藤袴の巻に光源氏の息子夕霧が従兄弟の玉蔓に自分の思いを伝えようとする場面に登場します。二人は共通の祖母大宮の喪に服しており、「同じ藤衣(喪服)を着て祖母の死を悼む私を哀れと思って下さい。縁のある者同士なのですから。」と詠みかけたが、玉蔓はそれを素っ気なくかわしてしまうのです。実らない恋の場面に薄紫の花とほのかな香りがもの悲しさを誘う設定となっているのです。

見頃の花⑤; 同じく東玄関の反対側でトウゴマ(Ricinus communis)の越冬株がカラフルで大きな葉を広げ、その葉陰に花穂を出しています。上方にクリーム色の雌花、下方に雄花を着けています。“雄性先熟性”で、自花受粉を防ぐ仕組みを備えています。刺を持った蒴(サク)果には3個の種子があります。種子は扁圧された楕円形で、黒、白、褐色の混じった大理石様の条紋が特徴です。大きさや模様などがウズラマメに酷似していて、中に油分に富む胚乳があります。

種子を「蓖麻子(ヒマシ)」と呼び、これから搾られる脂肪油を「ヒマシ油」と称し、下剤として利用されます。戦後生まれの団塊世代にとって、寄生虫駆除の苦い思い出の一品でもあります。下剤としての用量は大人1回分がごく少量で、種子を2~4個生食しただけで死に至る猛毒性を有しています。一方、この油は例外的に水にすばやく分散する性質があるので、肌を柔らかく滑らかにする働きがあり、半透明な女性用高級洗顔石鹸あるいは浴用洗剤などに利用されています。さらに、モーターレース専用のエンジンオイルは約66%がヒマシ油からできています。

見頃の果実⑥; トウゴマの陰でひっそりと丸い果実を膨らませているのは西洋ノイバラの一種で、アップル・ローズ(Rosa villosa)と呼ばれています。葉を揉むと良い香りがします。春先に一重の桃色小花を咲かせ、秋にリンゴ型をした大型の実をたくさん着けます。その実を割って、産毛に包まれた種子を取り除いて乾燥させた果皮が“ローズヒップ(Rose hip)”です。「ヒップ」はお尻というのではなく、古い英語で「野バラ」を意味しています。特にビタミンCがレモンの20倍ほど含まれていて、ビタミンPに保護されているため加熱しても壊れにくく、リコピンの作用で吸収率が高められる特色を有しています。ハイビスカスとブレンドしたハーブティーとして飲用されることが多いです。爽やかな香りで、ほのかな酸味、甘み、多少の渋みもあるので、少量の蜂蜜を加えるのがお薦め。メラニン色素生成を抑制してシミを予防し、女性ホルモンを活性化させて美肌やアンチエイジングの効果も期待できます。

ミシマサイコの花と生薬標本
ウドの開花
ニラの花
アサギマダラが訪れるフジバカマの花
越冬したトウゴマの開花
リンゴバラの花と果実(ローズヒップ)

トピックス9月の管理作業

①エビスグサとクララの種子採取(完熟果実のみ)
②カラスビシャク球茎の選別と植え替えキキョウの種子採取
③マグワ徒長枝の除去
④クコの地上部切除と乾燥牛糞の施用

トピックス2026年8月のお知らせ

見頃の花①

園のあちこちで紅紫色の可愛い5弁花を開いているのはフウロソウ科のゲンノショウコ(Geranium thunbergii)です。日本各地の山野に普通に見られる多年草です。本種は典型的な“忌地性”の植物で、同じ場所では続けて栽培できません。土をそっくり入れ替えるか、新しい場所に植える必要があります。果実の形態もそのことに対応しており、乾湿の差を利用したバネ仕掛けで種子を遠くに飛ばす構造となっています。栽培そのものは比較的容易です。茎は地面に伏してよく分枝し、夏から秋にかけて花を開きます。花の色は東日本では白色が、西日本では淡紅色が多いようです。果実は裂開して御輿の屋根の形に似ていることから”ミコシグサ”の方言名もあります。

盛夏の頃に地上部を採取して乾燥したものが生薬「ゲンノショウコ」です。和名「現の証拠」は実際によく効くという意味で、日本では古くから下痢止めの薬として利用されてきました。下痢にゲンノショウコ、便秘にドクダミ、胃腸病にはセンブリというように「和薬」の代表的な存在です。もちろん、『日本薬局方』にも収載されています。古来、土用に採るのが良いと言い伝えられてきましたが、この季節には有効成分の含量が最大となり、また花によって有毒なキンポウゲ科植物との見分けが容易であることなど、先人の教えはまことに理に適っています。タンニンを含有し、その煎液は小腸のぜん動を抑制する効果が絶大です。全く癖のない味で小さい子供にも飲ませることができるので、腸風邪の時などには大変重宝するお薬です。ただし、連続して服用すると胃に穴の開く『胃穿孔』という副作用も生じることがあるので、茶材などによる連用はしないこと。またアセモやただれなどに浴湯料としても用いられます。

見頃の花②

クチナシの木陰で蕾を上げてきたのがツリガネニンジン(Adenophora triphylla var. japonica)です。もう直ぐ青紫色の釣鐘状小花を数段に咲かせます。日本各地の山野に自生するキキョウ科の多年草で、根は白く肥厚して地中深く入っています。草丈は40~100cmにもなり、植物体を切ると白い乳液が出ます。非常に変異の大きい種で、特に花期以外の時期には葉の形、葉序などが大きく異なるものがあり、たびたび混乱させられます。

乾燥した根を「南沙参(ナンシャジン)」と称し、咳止め、去痰薬とします。健胃、強壮、抗真菌作用なども知られています。一方、本種の若芽は山菜の「トトキ」と呼ばれ、オケラとともにその美味さが横綱格とされ、嫁に食べさすのは惜しいと歌った長野県の俚謡もあるほどです。春に芽を摘み、和え物、お浸しとして利用します。ただし、「トトキ」という山菜には2種があって、韓国で「トトキ」または「トドック」と呼ばれるのはツルニンジンの根であり、その若芽を浸し物、和え物、天ぷら、汁の実、卵とじなどとして食べる由。いずれにしてもそんなに美味しいものであれば、一度は味わってみたいものですね。

見頃の花③

ハナハッカの横で白みを帯びた小花を咲かせているのはセイヨウヤマハッカ(Melissa officinalis)です。南ヨーロッパの地中海地域を原産とする高さ30~80cmの多年草で、葉に触れるとレモンの香りがするので、「香水ハッカ」や「レモンバーム」とも言います。成長が速く極めて丈夫な植物で、晩夏から晩秋まで花が咲き続ける蜜源植物としても有名です。果樹園に植えると、受粉を助けるハチを良く引き寄せるため、結果的に収穫量が増大します。

開花直前に収穫した葉を「メリッサ葉」と称し、精油約0.1%を含有しています。その抽出された精油(バーム油)はバラと同様に大変高価ですが、駆風、発汗、鎮痙、鎮静などの作用があり、アロマテラピーに利用されています。情緒を明るく晴れやかにする効果があり、ショック、パニック、ヒステリーなどに強力な鎮静効果を示してくれます。また飲食物の香り付けやガム、歯磨き、キャンディーなどの賦香料、入浴剤、化粧品、ポプリなどにも用いられています。

見頃の花④

西洋ヤマハッカ横の駐車場に沿って橙黄色のユリに似た花を咲かせるのはホンカンゾウ(Hemerocallis fulva)です。中国中部原産の多年草で、日本へは昭和の戦前に渡来しました。花は一重咲きの三倍体で、果実はできません。属名はギリシア語の「1日」と「美しい」の意で、花が1日で萎むことによります。また最近の遺伝子解析によって、ユリ科からワスレグサ科として独立した扱いに変更されました。日本の野山には一重咲きのノカンゾウと八重咲きのヤブカンゾウなどが自生しています。この仲間は戦後北アメリカで交配によって大きく品種改良が行われ、今では園芸植物として世界中で広く愛培されています。

『中国薬典』によると、根を利尿剤として水腫、血便、黄疸などに用いる、とされています。一方、花蕾を採取して熱湯で数分ゆがいた後、乾燥したものが中国料理に使われる「金針菜」「黄花菜」です。水で戻してスープの具にすることが多い食材です。

いずれの種類も「カンゾウ」と付き、マメ科のカンゾウ属植物=「甘草」とよく間違えられますが、こちらは「萱草(カンゾウ)」と書きます。これらの若芽、蕾や花は甘味とぬめりがあって、山菜としては癖がなく非常に美味しいものです。軽く茹でて酢味噌和えで食べるのがお勧めです。

見頃の花⑤

東玄関の反対側にある背の高い黄色い花がオミナエシ(Patrinia scabiosaefolia)で、これも最近の遺伝子解析によってオミナエシ科からスイカズラ科へ鞍替えされた植物です。北海道から九州まで日当たりのよい山地に生える多年草で、昔から人々の生活に溶け込んでいた草ですが、最近では里山が開発されたり、山林の適度な下刈りが行われなくなったことから、野生品が極端に少なくなって絶滅危惧種に指定されています。栽培品は観賞用に切り花などにも多用され、7月の早咲き種や矮性になったものなどが育成されています。語源は「女飯」の意味で、花を粟飯に例えたものとされます。また『万葉集』(1537)の巻8に山上憶良が詠んだ「秋の七草」の一つとして「女郎花」と詠んでから、その名が定着したらしく女性との結びつきが強い植物です。

中国では、本種の臭いが腐った豆醤に似ているため、根を「敗醤(ハイショウ)」と呼び、利尿、解毒、消炎、排膿などの作用があるとされています。

見頃の花⑥

秋の七草として、よく繁茂したフジバカマとオミナエシの陰でひっそりと花を咲かせているのがキキョウ(Platycodon grandiflorus)です。これら3種は切り花・観賞用として広く栽培されていますが、いずれも野生株は環境省の絶滅危惧種に指定されています。

本種は日当たりのよい草地に自生する多年草で、特に北海道、東北、信州地方に多く生えていて、夏から初秋にかけて花を咲かせます。草丈30~90cmで、茎や葉を傷つけると乳液が出るのが特徴です。

本種の根を乾燥したものが生薬「桔梗根」です。主成分はサポニンで、漢方では鎮咳・去痰、排膿、抗炎症、抗アレルギーなどの諸作用が認められています。薬用として屠蘇散の材料にも使われています。

一方、根にはイヌリンという貯蔵成分が多く含まれていて、若干の有毒成分を茹でて水に晒せば、揚げ物、煮物、漬け物等に利用できます。特に朝鮮半島では「トラジ」と称し、好んで食用にされていたようです。秀吉の朝鮮出兵の折に我が国から持ち込まれたトウガラシとの相性が抜群で、キキョウ根の有害な作用を解消することがわかり、韓国ではその後独特の食文化へと進化した経緯があるようです。

日本では花の美しさを「秋の七草」の一つ「朝顔の花」として多くの歌に詠まれ、また家紋などの文様にも用いられています。例えば、戦国時代の明智家などは有名ですが、地方によっては本種を忌み嫌う風習もあるようです。お盆に精霊を山野から迎える花と考えられていたため、屋敷内に植えることを嫌ったり、古戦場や刑場跡を桔梗塚や桔梗ヶ原とする例も多いようです。

西日本に多い
淡紅色花のゲンノショウコ
 蕾を出す前の
ツリガネニンジン
西洋ヤマハッカの花
“忘れ草”の異名をもつ
ホンカンゾウの花
 秋の七草の一つオミナエシの花
野生株が絶滅危惧と
なっているキキョウ

トピックス8月の管理作業

①ウイキョウ、ウスベニアオイ、タイマツバナ、ムラサキバレンギクの花茎切除
 特に、ウスベニアオイの木質化した株元からは翌春の新芽が出にくいので、この時点で数本の茎を株元から長さ10~20cmに強剪定しておくと良い。

②西洋ハッカ、緑ハッカ、朝鮮アザミ、セリ、サジオモダカ、ノゲイトウの花茎切除。

③ウツボグサ、ウイキョウ、ウスベニタチアオイの種子採取
 果穂が茶褐色になったら果穂だけを丁寧に摘み取り、新聞紙の上に広げて乾燥する。手揉みして種子を取り出し、篩または箕を用いて選別した後、5℃冷蔵保存する。

④スズカケノキの落ち葉掃除
 夏の渇水によってこの時季から落ち葉が目立つようになってきました。専用のブロワーを使って掃除を実施しました。

トピックス意外と美味しいクサギ新芽の酢味噌和え

近江今津から小浜に向かう27号線沿いの小藪で、この時期に濃い緑葉の中で真っ白な花を咲かせているのがクサギ(Clerodendrum trichotomum)です。小浜と若狭町の境界近くの右側ですが、生憎、車を止めるところがなくて、少し古い写真となってしまいました(写真①)。この植物は遺伝子解析に基づいた分類体系の見直しで、旧来のクマツヅラ科からシソ科へと所属が変更されました。温暖な気候を好み、日当たりの良い原野や林縁、河川敷、道路沿いなど、比較的水に恵まれた場所にしばしば群生しています。特に都市部の緑地や空き地など、“攪乱”を受けた造成地などにいち早く侵入して群落を作る、典型的なパイオニア種として知られています。したがって、人の生活圏でも目にすることの多い植物です。樹高は通常2mほどですが、大きいものでは高さ5mにも達する落葉小高木となっています。

葉は対生し、長さ15~20cm、幅10cmの卵形、全縁で長い葉柄が特徴です。若葉の裏には白色の柔毛が多く、特に春先には枝先が白く見えるほどです。葉は傷付けたり揉んだりすると、独特の強くて嫌な臭気を発します。それが和名“臭木(クサギ)”の由来です。如何にも毒々しい感じではありますが、悪臭は茹でるとほとんどなくなり、春先の新芽は山菜として料理に用いられます。割と身近にあって採集が容易なこと、また乾燥して保存もできることから、古くから救荒植物として各地で利用されてきました。茹でた後、水に晒してアクを抜き、お浸し、煮物、佃煮、油炒め、天ぷらなどに利用します。中でも“酢味噌和え”が絶品ですよ。一方、若い枝と葉を乾燥したものが「臭梧桐(シュウゴトウ)」と呼ばれ、高血圧、下痢、リウマチなどに用いられます。

秋の気配が感じられるようになると、枝先に20cm程度の集散花序を着け、白色で直径約3cmの花を咲かせます。花にはジャスミンを想わせる芳香があり、かなり遠くまで良い香りを漂わせます。花の咲き始めは4本の雄しべが上向き、雌しべは下向きで尖っていますが、花が落ちる頃には雄しべが勢いをなくして下に垂れ、入れ替わるように雌しべが斜め上に向き、その先が二股に分かれます。雌しべが後で熟して別の花の花粉を受け取るような仕組み、すなわち“雄性先熟性”という自家受粉を回避するための段取りになっているのです。日中、夜間ともに昆虫の訪花があり、アゲハチョウ科やスズメガ科、ヤガ科、シャクガ科、ツトガ科などが受粉を手助けしているようです。

その後、赤い萼片に包まれた藍色の小さな果実が9月下旬頃に熟し、鳥類によって種子散布されます。果実は8mm程度の球形で光沢があり、熟すにつれて空色から濃い碧色になります。萼は開花後も宿存し、淡紅色から赤紫色へと変化して果実の色を引き立てます(写真②)。青い果実を潰した液に絹布などを浸けると、美しい青色に染まります。古くから直接染料として利用されてきました。紫外線で退色しますが、その儚さが草木染めの特徴でもありますから、同じように“重ね染め”をすれば良いのです。

この仲間にはゲンペイクサギ(C. thomsonae)が園芸店で販売されています。西アフリカ原産、つる性の常緑低木で、五角形の萼が白色、内部の花弁は紅色で筒状を呈します。赤と白のコントラストが愛らしいので、“源平”の名が付けられました。一方、同じような臭気を持つ小型のコクサギ(Orixa japonica)はミカン科の植物で、アゲハ幼虫の食害を受けます。この植物は葉の着き方に特徴があります。すなわち、主軸を挟んで2枚ずつの互生となり、“コクサギ型葉序”と呼ばれています(写真③)。対生から互生への移行型と考えられ、本種の他にケンポナシ、ネコノチチ、サルスベリ、ヤブニッケイなどがその例です。

最近、その猛烈な繁殖力で目につくようになった植物がボタンクサギ(C. bungei)です。花(写真④)は一見アジサイのようで愛らしいのですが、地下茎から芽を出して広い範囲に茂り、鳥が運ぶタネからも容易に芽生えますので、“有害外来植物”の一つとして指定されています。愛培される際は地下茎が逃げ出さないような容器に植え、花が終わったら直ちに“花殻摘み”を行うなど、逸脱を防ぐ手立てを講じる必要がありますね。皆さんもご注意ください。

写真①
クサギの花(2024.8.02.撮影)
写真②
クサギの果実(2024.10.05.撮影)
写真③
源平クサギ(2024.8.25.撮影)
写真④
コクサギの特異な葉序(2019.6.15.撮影)
写真⑤
ボタンクサギの花容
(2025.6.29.撮影)

トピックス2026年7月のお知らせ

見頃の花①; 東玄関から右側を向くとムクゲ(Hibiscus syriacus)の白い花が目に入ります。インド原産の落葉低木で、花は6月から10月まで咲き続け、特に焦げつくような真夏の暑さにも負けない、夏を代表する花ですが、アオイ科のオクラやローゼルと同じく“一日花”なのです。そのため栄華が長続きしないことを、”槿花一朝の夢”と昔から言い古されてきました。ムクゲの漢名が「木槿(モッキン)」です。また謡曲『千手』の一節に「身はこれ槿花一日の栄、命は陽炎の定めなきに似たり」と詠われています。

蕾を乾燥したものが生薬「木槿花」で、下痢止めの作用があり、胃腸カタルや腸出血などに用いられます。また樹皮は繊維質が強く、かつてタパ(樹皮布)の原料や結束材あるいは製紙原料として用いられていました。

韓国では「無窮花」と称し、国花となっていて、数多くの園芸品種が育成されていますが、日本では夏の茶花として認識されていて、特に江戸時代の茶匠・千宗旦が気品を備えた花としてこよなく愛好したことから一重咲き底紅の花を「宗旦木槿」、また小堀遠州が愛好した一重咲き純白を「遠州木槿」と呼び、この両者が茶道の世界では双璧と讃えられています。

見頃の花②; 高さ60㎝に伸びたそれぞれの茎頂部に、真っ赤な炎のよう花を着けたのがタイマツバナ(Monarda didyma)です。北アメリカ原産の多年草で、最近では夏の花壇を彩る花として桃色、紫色、白色、黄色など多彩な色の品種が育成されて親しまれており、力強く咲く姿が魅力的です。

ニューヨーク州西部を流れる川畔の先住民オスウェゴ族が、初期の入植者にハーブティーとしての利用法を教えたとされています。その後、アメリカの独立戦争前後にはお茶の代用品として重宝されました。花の香りが良くて開花期間が長く、養蜂家の蜜源植物として利用されます。また乾燥させると香りはより強くなり、ポプリに利用されます。殺菌力のある精油成分を含み、喉の痛みや消化不良などに効果的とされています。

見頃の花③; 薬草園の中央部に咲いているウツボグサ(Prunella vulgaris)は東アジアの寒帯から温帯にかけて広く分布する多年草で、日当たりの良い路傍や山裾に群生しています。6~8月頃、茎頂に紫色の唇形花を麦穂状に開くのですが、花穂の形が弓矢を入れる道具「靫(ウツボ)」に似ていることから和名がつけられました。また真夏に花穂のみが急に褐色に変色し、まさに枯れたようになるのが特徴です。その花穂を乾燥させたものが生薬の「夏枯草(カゴソウ)」で、可溶性無機塩類を約3.5%含んでいて、そのうちカリウムが68%を占めます。消炎性の利尿作用が強く、残尿感や不快感のある膀胱炎、腎臓炎などに有効とされていますが、漢方処方に配合されることはほとんどなく、「痩身ハーブ」としてサプリメント的な使われ方をされているようです。

見頃の花④; ウツボグサのすぐ横で、薄緑色の羽状複葉をつけた大型多年草がウイキョウ(Foeniculum vulgare)です。傘形の花序に20~50個の黄色小花を開いています。やや膨らみかけた黄緑色の未熟果実を噛むと、いきなり頭の中を風が吹き抜ける感覚を味わうことができます。風邪の初期に頭がもやもやする症状などに効果があることを実感できます。

その後、長楕円形をした麦粒状の果実となり、二つに割れます。その果実を乾燥したものが生薬の「茴香(ウイキョウ)」で、精油3~8%を含みます。漢方では健胃・整腸、去痰、鎮痛、駆風(お腹のガス抜き)などの作用があって、風邪の不快な初期症状を緩和する効果が知られています。

一方、伝統的な香辛料としては「フェンネル」と呼ばれています。ドリンク類や魚料理に用いると、満腹感を覚えさせ油分を体外に出すということから、「痩身ハーブ」として人気があります。優れた浄化剤で、体内から食べ過ぎや飲み過ぎで生じた毒素を取り除く働きが強いのです。また食後に5~6粒を噛むと、胸焼けやお腹の張りを防げます。

見頃の花⑤; 薬草園の中央でひときわ大きく枝葉を広げているのはスズカケノキ(Platanus orientalis)で、その枝先に径1㎝ほどの球果が垂れています。和名は、その集合果が山伏の着る篠懸の麻衣についている鈴玉のような房に似ていることが由来です。薬草園の新設に際して武田薬品・京都薬用植物園から提供された、「ギリシャ協会1995年株」と呼称される樹高30㎝ほどの苗を、竣工記念樹として2012年11月24日に植えたものです。14年経過した今では幹の直径が40㎝を越える大木となってきました。この木の成長を通じて先人の根強い人間愛の心を引き継ぎたいとの願いが込められています。

ヨーロッパ南東部のバルカン半島からヒマラヤまでの温帯に分布する落葉広葉樹で、新葉の展開とともに開花します。花は淡黄緑色の“風媒花”で、果実は長い柄の先に径3.5㎝ほどの球形果が3~4個連なって下垂します。花言葉は「天才」。これは、古代ギリシャにおいてアテネにある本種の並木道の木陰で哲学者たちがそれぞれ自論を説いたことに由来しています。

紀元前からすでに街路樹として用いられ、現在でもニレ、ボダイジュ、マロニエとともに世界四大街路樹の一つとなっています。成長が速く、また大気汚染にも強いので都市環境に適した緑化木と言えます。日本では日比谷公園の大木が明治37年(1904)に植えられたものです。一方、ギリシャのコス(Cos)島に生育する老樹は、その昔、医聖・ヒポクラテスがこの木の下で弟子達に講義したことから、いつしか「ヒポクラテスの木」と呼ばれるようになり、今では世界中の医学部や医療施設に数多くの「ヒポクラテスの形代」が植樹されています。

見頃の花⑥; 駐車場寄りの中央部で地表面近くに半低木状に繁茂したジャコウソウ(Thymus vulgaris)が、小さな白花を咲かせています。南ヨーロッパ原産で、日本へは明治初期に渡来しました。全草に芳香があり、軽く葉に触れるだけで手指に爽やかな匂いが移ります。花期の地上部を採取して陰干ししたものが生薬「百里香」で、百里離れた所まで香りがするということから名付けられました。発汗、収斂(シュウレン 粘膜や血管の細胞を引き締める作用)、利尿、強壮作用があり、痰咳、風邪、頭痛の治療に用いられています。ちなみに、中世では「貴方はタイムの香りがする」という表現が容姿端麗な人に対する最高の誉め言葉で、気品や優雅さの象徴であったようです。

古くから香辛料の一つとして、茎葉から抽出した精油を「タイム」あるいは「セルポレット油」と称し、調理やソース、トマトケチャップなどに賞用されています。元来、獣肉が料理の中心である西洋では、その悪臭を消し、腐敗や中毒を予防するため香辛料は欠かせない必需品でした。そこで、古来より香辛料に対する熱望が航海や探検熱を誘い、ひいては歴史や地理をも変えることにつながりました。

見頃の花⑦; ジャコウソウ横の駐車場に面した一画で、茎の先に穂を出して、淡紅色の小花を咲かせているのがハナハッカ(Origanum vulgare)です。ヨーロッパから南西アジアなどに分布する多年草で、繁殖力が強く、今では世界各地で広く栽培されています。ハナハッカ属には様々な変種や栽培種があり、精油の含有量はまちまちですが、いずれも温かみのある強い芳香を有しています。

花着きの茎葉から抽出した精油の「オレガノ」は、気分が落ち込んでいる時に元気と勇気を取り戻す香りで、際立った鎮静力を持ち、殺菌、解毒、消化促進にも役立つほか、疲労時の浴剤やマッサージオイルとしても効果を発揮します。

乾燥した茎葉はピリッとした特徴のある風味で、トマトやチーズと相性が良く、調味用としてイタリア、メキシコ、スペインなどの料理には欠かすことができないものです。

ムクゲ2種の花
タイマツバナの花容
褐変化したウツボグサの花穂
ウイキョウの花と未熟果実
竣工式での記念植樹
スズカケノキの雌花
10年目の樹幹
(径40㎝以上)
ジャコウソウの花
ハナハッカの花

トピックス7月の管理作業

①サフランとイヌサフランの球根掘り上げと乾燥・貯蔵
 地上部がほぼ枯れた時点で掘り上げ、土を軽く払った後、風通しの良い場所で陰干ししておく(次の予定地に植え付ける10月下旬まで)。
②コブシ、マグワの整枝・剪定
 長く伸びた徒長枝を切り詰めて、風邪通しを確保する。
③エンゴサク塊茎の掘り上げと培養土の更新
④ハマボウフウのタネ播き
 昨年の猛暑によって株が枯れてしまったので、一昨年の夏に採集して冷蔵保存しておいたタネを播いた。