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トピックス2026年8月のお知らせ
見頃の花①
園のあちこちで紅紫色の可愛い5弁花を開いているのはフウロソウ科のゲンノショウコ(Geranium thunbergii)です。日本各地の山野に普通に見られる多年草です。本種は典型的な“忌地性”の植物で、同じ場所では続けて栽培できません。土をそっくり入れ替えるか、新しい場所に植える必要があります。果実の形態もそのことに対応しており、乾湿の差を利用したバネ仕掛けで種子を遠くに飛ばす構造となっています。栽培そのものは比較的容易です。茎は地面に伏してよく分枝し、夏から秋にかけて花を開きます。花の色は東日本では白色が、西日本では淡紅色が多いようです。果実は裂開して御輿の屋根の形に似ていることから”ミコシグサ”の方言名もあります。
盛夏の頃に地上部を採取して乾燥したものが生薬「ゲンノショウコ」です。和名「現の証拠」は実際によく効くという意味で、日本では古くから下痢止めの薬として利用されてきました。下痢にゲンノショウコ、便秘にドクダミ、胃腸病にはセンブリというように「和薬」の代表的な存在です。もちろん、『日本薬局方』にも収載されています。古来、土用に採るのが良いと言い伝えられてきましたが、この季節には有効成分の含量が最大となり、また花によって有毒なキンポウゲ科植物との見分けが容易であることなど、先人の教えはまことに理に適っています。タンニンを含有し、その煎液は小腸のぜん動を抑制する効果が絶大です。全く癖のない味で小さい子供にも飲ませることができるので、腸風邪の時などには大変重宝するお薬です。ただし、連続して服用すると胃に穴の開く『胃穿孔』という副作用も生じることがあるので、茶材などによる連用はしないこと。またアセモやただれなどに浴湯料としても用いられます。
見頃の花②
クチナシの木陰で蕾を上げてきたのがツリガネニンジン(Adenophora triphylla var. japonica)です。もう直ぐ青紫色の釣鐘状小花を数段に咲かせます。日本各地の山野に自生するキキョウ科の多年草で、根は白く肥厚して地中深く入っています。草丈は40~100cmにもなり、植物体を切ると白い乳液が出ます。非常に変異の大きい種で、特に花期以外の時期には葉の形、葉序などが大きく異なるものがあり、たびたび混乱させられます。
乾燥した根を「南沙参(ナンシャジン)」と称し、咳止め、去痰薬とします。健胃、強壮、抗真菌作用なども知られています。一方、本種の若芽は山菜の「トトキ」と呼ばれ、オケラとともにその美味さが横綱格とされ、嫁に食べさすのは惜しいと歌った長野県の俚謡もあるほどです。春に芽を摘み、和え物、お浸しとして利用します。ただし、「トトキ」という山菜には2種があって、韓国で「トトキ」または「トドック」と呼ばれるのはツルニンジンの根であり、その若芽を浸し物、和え物、天ぷら、汁の実、卵とじなどとして食べる由。いずれにしてもそんなに美味しいものであれば、一度は味わってみたいものですね。
見頃の花③
ハナハッカの横で白みを帯びた小花を咲かせているのはセイヨウヤマハッカ(Melissa officinalis)です。南ヨーロッパの地中海地域を原産とする高さ30~80cmの多年草で、葉に触れるとレモンの香りがするので、「香水ハッカ」や「レモンバーム」とも言います。成長が速く極めて丈夫な植物で、晩夏から晩秋まで花が咲き続ける蜜源植物としても有名です。果樹園に植えると、受粉を助けるハチを良く引き寄せるため、結果的に収穫量が増大します。
開花直前に収穫した葉を「メリッサ葉」と称し、精油約0.1%を含有しています。その抽出された精油(バーム油)はバラと同様に大変高価ですが、駆風、発汗、鎮痙、鎮静などの作用があり、アロマテラピーに利用されています。情緒を明るく晴れやかにする効果があり、ショック、パニック、ヒステリーなどに強力な鎮静効果を示してくれます。また飲食物の香り付けやガム、歯磨き、キャンディーなどの賦香料、入浴剤、化粧品、ポプリなどにも用いられています。
見頃の花④
西洋ヤマハッカ横の駐車場に沿って橙黄色のユリに似た花を咲かせるのはホンカンゾウ(Hemerocallis fulva)です。中国中部原産の多年草で、日本へは昭和の戦前に渡来しました。花は一重咲きの三倍体で、果実はできません。属名はギリシア語の「1日」と「美しい」の意で、花が1日で萎むことによります。また最近の遺伝子解析によって、ユリ科からワスレグサ科として独立した扱いに変更されました。日本の野山には一重咲きのノカンゾウと八重咲きのヤブカンゾウなどが自生しています。この仲間は戦後北アメリカで交配によって大きく品種改良が行われ、今では園芸植物として世界中で広く愛培されています。
『中国薬典』によると、根を利尿剤として水腫、血便、黄疸などに用いる、とされています。一方、花蕾を採取して熱湯で数分ゆがいた後、乾燥したものが中国料理に使われる「金針菜」「黄花菜」です。水で戻してスープの具にすることが多い食材です。
いずれの種類も「カンゾウ」と付き、マメ科のカンゾウ属植物=「甘草」とよく間違えられますが、こちらは「萱草(カンゾウ)」と書きます。これらの若芽、蕾や花は甘味とぬめりがあって、山菜としては癖がなく非常に美味しいものです。軽く茹でて酢味噌和えで食べるのがお勧めです。
見頃の花⑤
東玄関の反対側にある背の高い黄色い花がオミナエシ(Patrinia scabiosaefolia)で、これも最近の遺伝子解析によってオミナエシ科からスイカズラ科へ鞍替えされた植物です。北海道から九州まで日当たりのよい山地に生える多年草で、昔から人々の生活に溶け込んでいた草ですが、最近では里山が開発されたり、山林の適度な下刈りが行われなくなったことから、野生品が極端に少なくなって絶滅危惧種に指定されています。栽培品は観賞用に切り花などにも多用され、7月の早咲き種や矮性になったものなどが育成されています。語源は「女飯」の意味で、花を粟飯に例えたものとされます。また『万葉集』(1537)の巻8に山上憶良が詠んだ「秋の七草」の一つとして「女郎花」と詠んでから、その名が定着したらしく女性との結びつきが強い植物です。
中国では、本種の臭いが腐った豆醤に似ているため、根を「敗醤(ハイショウ)」と呼び、利尿、解毒、消炎、排膿などの作用があるとされています。
見頃の花⑥
秋の七草として、よく繁茂したフジバカマとオミナエシの陰でひっそりと花を咲かせているのがキキョウ(Platycodon grandiflorus)です。これら3種は切り花・観賞用として広く栽培されていますが、いずれも野生株は環境省の絶滅危惧種に指定されています。
本種は日当たりのよい草地に自生する多年草で、特に北海道、東北、信州地方に多く生えていて、夏から初秋にかけて花を咲かせます。草丈30~90cmで、茎や葉を傷つけると乳液が出るのが特徴です。
本種の根を乾燥したものが生薬「桔梗根」です。主成分はサポニンで、漢方では鎮咳・去痰、排膿、抗炎症、抗アレルギーなどの諸作用が認められています。薬用として屠蘇散の材料にも使われています。
一方、根にはイヌリンという貯蔵成分が多く含まれていて、若干の有毒成分を茹でて水に晒せば、揚げ物、煮物、漬け物等に利用できます。特に朝鮮半島では「トラジ」と称し、好んで食用にされていたようです。秀吉の朝鮮出兵の折に我が国から持ち込まれたトウガラシとの相性が抜群で、キキョウ根の有害な作用を解消することがわかり、韓国ではその後独特の食文化へと進化した経緯があるようです。
日本では花の美しさを「秋の七草」の一つ「朝顔の花」として多くの歌に詠まれ、また家紋などの文様にも用いられています。例えば、戦国時代の明智家などは有名ですが、地方によっては本種を忌み嫌う風習もあるようです。お盆に精霊を山野から迎える花と考えられていたため、屋敷内に植えることを嫌ったり、古戦場や刑場跡を桔梗塚や桔梗ヶ原とする例も多いようです。

淡紅色花のゲンノショウコ


ツリガネニンジン


ホンカンゾウの花


なっているキキョウ
トピックス8月の管理作業
①ウイキョウ、ウスベニアオイ、タイマツバナ、ムラサキバレンギクの花茎切除
特に、ウスベニアオイの木質化した株元からは翌春の新芽が出にくいので、この時点で数本の茎を株元から長さ10~20cmに強剪定しておくと良い。
②西洋ハッカ、緑ハッカ、朝鮮アザミ、セリ、サジオモダカ、ノゲイトウの花茎切除。
③ウツボグサ、ウイキョウ、ウスベニタチアオイの種子採取
果穂が茶褐色になったら果穂だけを丁寧に摘み取り、新聞紙の上に広げて乾燥する。手揉みして種子を取り出し、篩または箕を用いて選別した後、5℃冷蔵保存する。
④スズカケノキの落ち葉掃除
夏の渇水によってこの時季から落ち葉が目立つようになってきました。専用のブロワーを使って掃除を実施しました。
トピックス意外と美味しいクサギ新芽の酢味噌和え
近江今津から小浜に向かう27号線沿いの小藪で、この時期に濃い緑葉の中で真っ白な花を咲かせているのがクサギ(Clerodendrum trichotomum)です。小浜と若狭町の境界近くの右側ですが、生憎、車を止めるところがなくて、少し古い写真となってしまいました(写真①)。この植物は遺伝子解析に基づいた分類体系の見直しで、旧来のクマツヅラ科からシソ科へと所属が変更されました。温暖な気候を好み、日当たりの良い原野や林縁、河川敷、道路沿いなど、比較的水に恵まれた場所にしばしば群生しています。特に都市部の緑地や空き地など、“攪乱”を受けた造成地などにいち早く侵入して群落を作る、典型的なパイオニア種として知られています。したがって、人の生活圏でも目にすることの多い植物です。樹高は通常2mほどですが、大きいものでは高さ5mにも達する落葉小高木となっています。
葉は対生し、長さ15~20cm、幅10cmの卵形、全縁で長い葉柄が特徴です。若葉の裏には白色の柔毛が多く、特に春先には枝先が白く見えるほどです。葉は傷付けたり揉んだりすると、独特の強くて嫌な臭気を発します。それが和名“臭木(クサギ)”の由来です。如何にも毒々しい感じではありますが、悪臭は茹でるとほとんどなくなり、春先の新芽は山菜として料理に用いられます。割と身近にあって採集が容易なこと、また乾燥して保存もできることから、古くから救荒植物として各地で利用されてきました。茹でた後、水に晒してアクを抜き、お浸し、煮物、佃煮、油炒め、天ぷらなどに利用します。中でも“酢味噌和え”が絶品ですよ。一方、若い枝と葉を乾燥したものが「臭梧桐(シュウゴトウ)」と呼ばれ、高血圧、下痢、リウマチなどに用いられます。
秋の気配が感じられるようになると、枝先に20cm程度の集散花序を着け、白色で直径約3cmの花を咲かせます。花にはジャスミンを想わせる芳香があり、かなり遠くまで良い香りを漂わせます。花の咲き始めは4本の雄しべが上向き、雌しべは下向きで尖っていますが、花が落ちる頃には雄しべが勢いをなくして下に垂れ、入れ替わるように雌しべが斜め上に向き、その先が二股に分かれます。雌しべが後で熟して別の花の花粉を受け取るような仕組み、すなわち“雄性先熟性”という自家受粉を回避するための段取りになっているのです。日中、夜間ともに昆虫の訪花があり、アゲハチョウ科やスズメガ科、ヤガ科、シャクガ科、ツトガ科などが受粉を手助けしているようです。
その後、赤い萼片に包まれた藍色の小さな果実が9月下旬頃に熟し、鳥類によって種子散布されます。果実は8mm程度の球形で光沢があり、熟すにつれて空色から濃い碧色になります。萼は開花後も宿存し、淡紅色から赤紫色へと変化して果実の色を引き立てます(写真②)。青い果実を潰した液に絹布などを浸けると、美しい青色に染まります。古くから直接染料として利用されてきました。紫外線で退色しますが、その儚さが草木染めの特徴でもありますから、同じように“重ね染め”をすれば良いのです。
この仲間にはゲンペイクサギ(C. thomsonae)が園芸店で販売されています。西アフリカ原産、つる性の常緑低木で、五角形の萼が白色、内部の花弁は紅色で筒状を呈します。赤と白のコントラストが愛らしいので、“源平”の名が付けられました。一方、同じような臭気を持つ小型のコクサギ(Orixa japonica)はミカン科の植物で、アゲハ幼虫の食害を受けます。この植物は葉の着き方に特徴があります。すなわち、主軸を挟んで2枚ずつの互生となり、“コクサギ型葉序”と呼ばれています(写真③)。対生から互生への移行型と考えられ、本種の他にケンポナシ、ネコノチチ、サルスベリ、ヤブニッケイなどがその例です。
最近、その猛烈な繁殖力で目につくようになった植物がボタンクサギ(C. bungei)です。花(写真④)は一見アジサイのようで愛らしいのですが、地下茎から芽を出して広い範囲に茂り、鳥が運ぶタネからも容易に芽生えますので、“有害外来植物”の一つとして指定されています。愛培される際は地下茎が逃げ出さないような容器に植え、花が終わったら直ちに“花殻摘み”を行うなど、逸脱を防ぐ手立てを講じる必要がありますね。皆さんもご注意ください。

クサギの花(2024.8.02.撮影)

クサギの果実(2024.10.05.撮影)

源平クサギ(2024.8.25.撮影)

コクサギの特異な葉序(2019.6.15.撮影)

ボタンクサギの花容
(2025.6.29.撮影)
トピックス2026年7月のお知らせ
見頃の花①; 東玄関から右側を向くとムクゲ(Hibiscus syriacus)の白い花が目に入ります。インド原産の落葉低木で、花は6月から10月まで咲き続け、特に焦げつくような真夏の暑さにも負けない、夏を代表する花ですが、アオイ科のオクラやローゼルと同じく“一日花”なのです。そのため栄華が長続きしないことを、”槿花一朝の夢”と昔から言い古されてきました。ムクゲの漢名が「木槿(モッキン)」です。また謡曲『千手』の一節に「身はこれ槿花一日の栄、命は陽炎の定めなきに似たり」と詠われています。
蕾を乾燥したものが生薬「木槿花」で、下痢止めの作用があり、胃腸カタルや腸出血などに用いられます。また樹皮は繊維質が強く、かつてタパ(樹皮布)の原料や結束材あるいは製紙原料として用いられていました。
韓国では「無窮花」と称し、国花となっていて、数多くの園芸品種が育成されていますが、日本では夏の茶花として認識されていて、特に江戸時代の茶匠・千宗旦が気品を備えた花としてこよなく愛好したことから一重咲き底紅の花を「宗旦木槿」、また小堀遠州が愛好した一重咲き純白を「遠州木槿」と呼び、この両者が茶道の世界では双璧と讃えられています。
見頃の花②; 高さ60㎝に伸びたそれぞれの茎頂部に、真っ赤な炎のよう花を着けたのがタイマツバナ(Monarda didyma)です。北アメリカ原産の多年草で、最近では夏の花壇を彩る花として桃色、紫色、白色、黄色など多彩な色の品種が育成されて親しまれており、力強く咲く姿が魅力的です。
ニューヨーク州西部を流れる川畔の先住民オスウェゴ族が、初期の入植者にハーブティーとしての利用法を教えたとされています。その後、アメリカの独立戦争前後にはお茶の代用品として重宝されました。花の香りが良くて開花期間が長く、養蜂家の蜜源植物として利用されます。また乾燥させると香りはより強くなり、ポプリに利用されます。殺菌力のある精油成分を含み、喉の痛みや消化不良などに効果的とされています。
見頃の花③; 薬草園の中央部に咲いているウツボグサ(Prunella vulgaris)は東アジアの寒帯から温帯にかけて広く分布する多年草で、日当たりの良い路傍や山裾に群生しています。6~8月頃、茎頂に紫色の唇形花を麦穂状に開くのですが、花穂の形が弓矢を入れる道具「靫(ウツボ)」に似ていることから和名がつけられました。また真夏に花穂のみが急に褐色に変色し、まさに枯れたようになるのが特徴です。その花穂を乾燥させたものが生薬の「夏枯草(カゴソウ)」で、可溶性無機塩類を約3.5%含んでいて、そのうちカリウムが68%を占めます。消炎性の利尿作用が強く、残尿感や不快感のある膀胱炎、腎臓炎などに有効とされていますが、漢方処方に配合されることはほとんどなく、「痩身ハーブ」としてサプリメント的な使われ方をされているようです。
見頃の花④; ウツボグサのすぐ横で、薄緑色の羽状複葉をつけた大型多年草がウイキョウ(Foeniculum vulgare)です。傘形の花序に20~50個の黄色小花を開いています。やや膨らみかけた黄緑色の未熟果実を噛むと、いきなり頭の中を風が吹き抜ける感覚を味わうことができます。風邪の初期に頭がもやもやする症状などに効果があることを実感できます。
その後、長楕円形をした麦粒状の果実となり、二つに割れます。その果実を乾燥したものが生薬の「茴香(ウイキョウ)」で、精油3~8%を含みます。漢方では健胃・整腸、去痰、鎮痛、駆風(お腹のガス抜き)などの作用があって、風邪の不快な初期症状を緩和する効果が知られています。
一方、伝統的な香辛料としては「フェンネル」と呼ばれています。ドリンク類や魚料理に用いると、満腹感を覚えさせ油分を体外に出すということから、「痩身ハーブ」として人気があります。優れた浄化剤で、体内から食べ過ぎや飲み過ぎで生じた毒素を取り除く働きが強いのです。また食後に5~6粒を噛むと、胸焼けやお腹の張りを防げます。
見頃の花⑤; 薬草園の中央でひときわ大きく枝葉を広げているのはスズカケノキ(Platanus orientalis)で、その枝先に径1㎝ほどの球果が垂れています。和名は、その集合果が山伏の着る篠懸の麻衣についている鈴玉のような房に似ていることが由来です。薬草園の新設に際して武田薬品・京都薬用植物園から提供された、「ギリシャ協会1995年株」と呼称される樹高30㎝ほどの苗を、竣工記念樹として2012年11月24日に植えたものです。14年経過した今では幹の直径が40㎝を越える大木となってきました。この木の成長を通じて先人の根強い人間愛の心を引き継ぎたいとの願いが込められています。
ヨーロッパ南東部のバルカン半島からヒマラヤまでの温帯に分布する落葉広葉樹で、新葉の展開とともに開花します。花は淡黄緑色の“風媒花”で、果実は長い柄の先に径3.5㎝ほどの球形果が3~4個連なって下垂します。花言葉は「天才」。これは、古代ギリシャにおいてアテネにある本種の並木道の木陰で哲学者たちがそれぞれ自論を説いたことに由来しています。
紀元前からすでに街路樹として用いられ、現在でもニレ、ボダイジュ、マロニエとともに世界四大街路樹の一つとなっています。成長が速く、また大気汚染にも強いので都市環境に適した緑化木と言えます。日本では日比谷公園の大木が明治37年(1904)に植えられたものです。一方、ギリシャのコス(Cos)島に生育する老樹は、その昔、医聖・ヒポクラテスがこの木の下で弟子達に講義したことから、いつしか「ヒポクラテスの木」と呼ばれるようになり、今では世界中の医学部や医療施設に数多くの「ヒポクラテスの形代」が植樹されています。
見頃の花⑥; 駐車場寄りの中央部で地表面近くに半低木状に繁茂したジャコウソウ(Thymus vulgaris)が、小さな白花を咲かせています。南ヨーロッパ原産で、日本へは明治初期に渡来しました。全草に芳香があり、軽く葉に触れるだけで手指に爽やかな匂いが移ります。花期の地上部を採取して陰干ししたものが生薬「百里香」で、百里離れた所まで香りがするということから名付けられました。発汗、収斂(シュウレン 粘膜や血管の細胞を引き締める作用)、利尿、強壮作用があり、痰咳、風邪、頭痛の治療に用いられています。ちなみに、中世では「貴方はタイムの香りがする」という表現が容姿端麗な人に対する最高の誉め言葉で、気品や優雅さの象徴であったようです。
古くから香辛料の一つとして、茎葉から抽出した精油を「タイム」あるいは「セルポレット油」と称し、調理やソース、トマトケチャップなどに賞用されています。元来、獣肉が料理の中心である西洋では、その悪臭を消し、腐敗や中毒を予防するため香辛料は欠かせない必需品でした。そこで、古来より香辛料に対する熱望が航海や探検熱を誘い、ひいては歴史や地理をも変えることにつながりました。
見頃の花⑦; ジャコウソウ横の駐車場に面した一画で、茎の先に穂を出して、淡紅色の小花を咲かせているのがハナハッカ(Origanum vulgare)です。ヨーロッパから南西アジアなどに分布する多年草で、繁殖力が強く、今では世界各地で広く栽培されています。ハナハッカ属には様々な変種や栽培種があり、精油の含有量はまちまちですが、いずれも温かみのある強い芳香を有しています。
花着きの茎葉から抽出した精油の「オレガノ」は、気分が落ち込んでいる時に元気と勇気を取り戻す香りで、際立った鎮静力を持ち、殺菌、解毒、消化促進にも役立つほか、疲労時の浴剤やマッサージオイルとしても効果を発揮します。
乾燥した茎葉はピリッとした特徴のある風味で、トマトやチーズと相性が良く、調味用としてイタリア、メキシコ、スペインなどの料理には欠かすことができないものです。








(径40㎝以上)


トピックス7月の管理作業
①サフランとイヌサフランの球根掘り上げと乾燥・貯蔵
地上部がほぼ枯れた時点で掘り上げ、土を軽く払った後、風通しの良い場所で陰干ししておく(次の予定地に植え付ける10月下旬まで)。
②コブシ、マグワの整枝・剪定
長く伸びた徒長枝を切り詰めて、風邪通しを確保する。
③エンゴサク塊茎の掘り上げと培養土の更新
④ハマボウフウのタネ播き
昨年の猛暑によって株が枯れてしまったので、一昨年の夏に採集して冷蔵保存しておいたタネを播いた。
トピックス爽やかな香りとシャキシャキ食感の八百屋ボウフウ
セリ科のハマボウフウ(Glehnia littoralis)は、北海道から南西諸島までの海岸砂地に自生する多年草です。通常、根茎は地下深くにある水を求めて長く伸び、ゴボウ状を呈して1mに達するものもあります。その先に長さ約20cmほどの根があります(写真①)。葉は1~2回3出複葉で、夏頃に白色小花を多数開きます(写真②)。果実は小卵形で、側面には6~7本の翼という特殊な形状となっています(写真③)。本種は砂浜から少し入った原野や畑地には全く見られないという特殊な生態の植物です。近年の全国的な護岸工事などによってそのごく限られた場所が著しく減少し、自生株はほぼ絶滅が危惧される状況となっています。現在では島根県松江市の大根島などで小規模な畑栽培が行われています。葉は形や色合いがよく葉柄とともに芳香を持つので、刺身のツマやお浸し、汁ものの具材として賞味され、「八百屋ボウフウ」とも呼ばれています(写真④)。
生薬「浜防風」は本種の根茎・根を乾燥したもので、『日本薬局方』にも収載されています。「「防風通聖散」、「十味敗毒湯」、「屠蘇散」などの漢方処方においては、江戸中期以降、正品「防風」(写真⑤)の代わりに「和産防風」として臨床経験が積み重ねられてきました。ちなみに、正品の基原植物は同じセリ科のトウスケボウフウ(Ledebouriella seseloides)で、中国の黒竜江、山西、山東・北部、河北省などに分布し、乾燥した山地の斜面や草原に生える多年草です。発汗、解熱、鎮痛などの作用があります。最近では中国から安定して輸入されるので、上記のような漢方薬にも正品が配合されています。
開園当初、私の故郷である宮崎県串間市の砂浜から採取したハマボウフウを、小浜市安納の浜砂で栽培してきましたが、タネ採りを怠った結果、いつの間にか消失させてしまいました。またトウスケボウフウについても内藤記念くすり博物館からタネを譲り受けて、一旦は栽培したのですが、こちらもタネ採り直前に大株が枯れてしまいました。機会があれば、両種ともいつの日か再び栽培を復活させたいと願っています。

(2013.07.20.撮影)

花(2005.06.23.撮影)

タネ(2024.07.10.撮影)

八百屋ボウフウ(2020.04.20.撮影)

正品の防風(2009.10.20.撮影)
トピックス2026年6月のお知らせ
東玄関の右奥で十字形の白花を咲かせているのがドクダミです。白い花弁に見えるのは花穂を包む総苞であり、萼(ガク)も花弁もなく、しかも雌しべと雄しべは実際には機能しないという、実に味気ない「変わりダネ」の植物です。ごく稀に受精を経ない単為生殖で種子が作られます。「花びら」に虫を呼ぶという存在意義はないのですが、よく見れば白い十字形の花が意外と美しく、薬草園の中央付近に置いてある八重咲き(鉢植え)や斑入り葉(“五色ドクダミ”という)の品種もあり、観賞用としてもおもしろいものです。
しかしながら、本種は何ともいえない悪臭、ミミズが出てきそうなじめじめした生育地、取っても取ってもなくならない繁殖力など、人に嫌われる要素をたくさん持っていますよね。繁殖力の秘密は枝分かれする白い地下茎にあります。地上の茎が切断された刺激によって、地下茎の節々にある休眠芽が目覚めて一斉に萌芽するからです。例えば、50cm四方の中にある地下茎の長さは合計30mを越えるほどです。
開花期の地上部を乾燥させたものが「十薬」あるいは「重薬」と呼ばれ、『日本薬局方』にも収載されています。十の効能を持つ、重要な薬を意味します。独特の臭い成分には非常に強い抗菌作用があって、かつては外傷の化膿が最も怖いものでしたから、身近にあったドクダミはさぞ重宝されたことでしょう。「生の葉を火で炙り、“おでき”に貼って膿を出させるユニークな使い方もあります。ただし、この成分は揮発性で、採取後約10時間で消散してしまいます。一方、乾燥葉には緩下、利尿作用などがあって体内に溜まった老廃物を体外に排出します。そんなわけで「解体新茶」にも配合されているわけです。
ドクダミの横で紫紅色の大輪を咲かせているのはムラサキバレンギクです。北米原産の多年草で、草丈は60cmほどになります。頭花は直径10cm程度で、明るい赤紫色の舌状花を15枚程度つけ、開花初期はほぼ水平に開きますが、徐々に反り返って垂れ下がります。その形状が火消しの“まとい(馬簾)”に似ていることが和名の由来です。円錐状の花床には長い刺状の鱗片が付きます。鱗片は橙色で硬く光沢があり、外観も触感もプラスチックで作られた様相を呈しています。耐乾性、耐寒性、耐暑性のある強健な植物です。
本種の乾燥した根は「エキナセア根」と呼ばれ、感染症に対する抵抗力の増強作用や血液中の不純物を排出させる浄血作用があります。ドイツやアメリカでは「風邪予防や免疫力向上に有効なハーブ」として高い知名度を確立しています。ただし、過剰摂取すると、短期の発熱、吐き気、下痢を起こすこともあるので、アレルギー性の方や妊婦は使用を避けるべきです。
東玄関への通路入口で銀灰色の産毛に被われた葉の中から花茎を伸ばして黄色い花を咲かせているのはカレープラントです。その銀灰色を軽く撫でただけで触れた手や辺り一面にカレーの匂いが漂います。南ヨーロッパから北アフリカにかけての地中海沿岸を原産とする多年草で、乾燥した岩場や砂地に生えています。茎は頑丈な木質で、高さ60㎝以上にまで成長することもあります。
葉や花茎を乾燥させて“ポプリ”や“ドライフラワー”としますが、ほとんど色褪せしないで、香りもほぼ1年近く楽しめます。本種の茎葉から抽出した精油は、“不滅”を意味する「イモーテル(immortelle)」と呼ばれ、新陳代謝の促進や免疫系の活性化に有効で、アロマオイルとして利用されています。苦味が強いため食用には適さないのでカレー粉やカレー・ルーの原料としては用いない。
薬草園の中央にそびえるスズカケノキの下草として植栽したアマチャが開花最盛期を迎えています。アジサイ科の落葉低木で、滋賀県朽木辺りのスギ林下に自生株が散見されます。
生薬の「甘茶」は、9月に地上10cmくらいのところから刈り取り、葉と枝先を摘んで水洗し、約2日間陽乾します。これに水を噴霧して、1日積み重ねて発酵させた後、よく揉んで乾燥・仕上げられたものです。現在の主産地は長野県柏原付近で、年間の生産量は約40トンです。甘茶は『局方』に収載され、丸剤などの甘味、矯味用として家庭薬原料、口腔清涼剤の製造原料とされています。
4月8日に釈迦の降誕を祝して行われる灌仏会(カンブツエ)では、お参りする時に釈迦像の頭上から甘茶湯を注ぎます。いわゆる「花祭り」に使用される甘茶が本種です。後を引くしつこい甘さのお茶なので、私は苦手です。
薬草園の中ほどで個性的な拳大の花蕾をしたものが朝鮮アザミです。緑色をした、まるで鱗のようなゴツゴツしたところが萼(ガク)、これを剥くと出てくる円柱状のものが花托(カタク)で、主にこの部分が料理に使われます。
ハーブ名:アーティチョークは、日本では馴染みが薄いのですが、ヨーロッパの人々にとってはごく一般的な野菜です。中でもローマ市民は大好きで、揚げ物やソテー、煮込みの他、サラダやパスタなどの料理に使って楽しみます。花蕾をそのまま放置すると、やがて青紫色をした径20㎝ほどの超巨大なアザミの花が開きます。
“朝鮮”の名が付いていますが、原産地は地中海沿岸から中央アジアで、利用の歴史は非常に旧く、古代ローマ時代にまで遡ります。日本に伝わったのは明治時代ですが、当初の目的は花を楽しむ観賞用。食用として流通し始めたのはずっと後のことで、今では主にイタリアやアメリカ、スペインなどから年間を通して輸入されています。国内でも栽培されていますが、生産量はごくわずかに過ぎません。
朝鮮アザミの奥で甘い香りを放つ白花を咲かせるのはクチナシで、梅雨時期の代表的な花木です。八重咲き種が庭園樹として植えられていますが、果実が稔るのは一重咲きのものです。ただし、一つの個体から増殖すると、ほとんど結実しません。それは、同じ花の中で雄しべと雌しべの成熟期間が2~3日ずれることが原因です。すなわち、花粉は開花直後に成熟していますが、雌しべの先が分泌液で濡れてくるのはそれから2~3日後です(専門用語では「雄性先熟性」と言う)。植物にとっては遺伝的に劣化しやすい自家受精を回避する方策なのですが、結実を確実にするためには開花期の異なる複数の個体を挿し木で増やし、それぞれを隣接して植える必要があります。つまり、挿し木する親木としてどの株を選ぶかが大変重要な問題なのです。薬草園には大きな果実の樹と、相性の良い花粉樹および奄美産の野生株を隣接して植えてあります。秋日、黄紅色で5~7稜のある果実を結びます。普通木の実が熟すとクリやザクロのように必ず口を開きますが、この果実は寒さに当たって朽ち果てるまで開かないことから、和名は”口無し”に由来するとされていますが、その語源には諸説があります。
本種の完熟果実を乾燥したものが「山梔子(サンシシ)」で、親指大で丸く内部の赤黄色のものが良品とされています。日本では集荷されることがなく、市場品はほぼ中国産に依存しているのが実状です。山梔子は消炎、止血、利胆、解熱、鎮静薬として二日酔いの特効薬「黄連解毒湯」や更年期障害用の「加味逍遥散」などに配合されています。また“栗きんとん”など食品染色用としては台湾産の「水梔子」と称する果実が流通しています。
東玄関から一番離れた駐車場側に夏を代表する庭の花・ウスベニアオイが咲き誇っています。南ヨーロッパを原産とする多年性の宿根草で、草丈は通常60~80㎝ですが、肥培すると2mに達することもあります。径4cmほどの赤紫色の花に濃い紫の筋が入り、仄かな香りを有しています。
花はハーブティーとして利用され、お湯を注ぐと透き通った青いお茶になりますが、レモンを浮かべると瞬時にピンク色へ変色するので、大変人気があります。このように、花の水溶液は酸性や塩基性の溶液を加えると色が変化するので、理科の教材や夏休みの自由研究などに利用されることがあります。若葉と花はサラダに、葉と根は茹でて野菜としても利用できます。











トピックス6月の管理作業
① アマ、ルリヂシャの種子採取
② 西洋ワサビ、西洋ヤマハッカの整枝・剪定
③ シャクヤクの花殻切除(結実を防ぎ、根の肥大を図るため)
④ クララ、朝鮮アザミに倒伏防止の支柱を設置
トピックス“亜麻仁油で免疫力を向上して生活習慣病の予防を!!”
皆さんは“亜麻色の髪の乙女”という歌をご存知でしょうか(?)。私は団塊の世代なので、ヴィレッジ・シンガーズ(1968年2月発売)を真っ先に思い浮かべますが、同曲をカバーした島谷ひとみ(2002年)の方がオリコンチャートでは上位を占めたので、より幅広く知られているかもしれませんね。その亜麻色の本家・本元がアマ(Linum usitatissimum)です。中央アジア南部およびアラビア原産で、生育日数が85~100日と極めて短いため秋播き二年草あるいは春播き一年草として扱われています。草丈は1m前後になり、茎の太さは1~2mmで、茎の頂部で3~5本に枝分かれします。夏に藍色または白色の花を着けますが、早朝4~5時頃から開き始め、正午までには大半が散ってしまう“一日花”です。果実は黄褐色で円形、光沢があって、外皮は粘液層を持つので水分を吸収すると粘液が出てぬるぬるするので「ヌメゴマ」とも呼ばれます。
繊維や油の原料としていろいろな品種が育成され、広く世界各地で栽培されています。繊維用はロシアをはじめヨーロッパの北方植物であるのに対して、油用はアルゼンチン、インドなど、むしろ熱帯に適しています。かつて北海道では繊維用の栽培が行われていましたが、化学繊維の台頭に伴って1967年に製麻工場が撤収されたのを機に国内での栽培は皆無となってしまいました。ただ最近の健康指向から亜麻仁油の評価が高まるにつれて十勝、上川地方で細々と栽培が広がっているようです。ちなみに、薬草園で栽培しているのは繊維用の品種かと思われます。
真っ直ぐに走る繊維の全長を活かすため、アマは株ごと引き抜いて収穫されます。乾燥後、果実を取り除き、茎を水に浸けて繊維を取り出します。木質部や皮などを取り除くために、茎を円筒の間に通す亜麻打ち(scutching)作業が行われます。その後少し撚りがかけられ、温水に浸して濡れた状態で織り糸に紡がれます。『亜麻色の髪』と表現されるように、天然の亜麻は光沢のある美しい黄褐色を呈しています。伝統的な技法ではその色を日光に晒して取り除きますが、今ではほとんどが化学漂白されているようです。
亜麻繊維からの織物をリネン(linen)と呼び、繊維はアサ(麻)よりやや弱いが柔軟で絹のような光沢があり、毛羽立たず、通気性や吸湿性に優れています。肌触りも良いなど多くの優れた特性があって上質の織物にされます。亜麻糸を英語で古くはライン(line)と言い、細くて丈夫なので、lineは「線・筋」を意味する英単語になりました。一方、フランス語ではラン(lin)と言い、亜麻の高級繊維を使用した女性の下着がランジェリーです。薄物のリンネル類としては洋服地、ナフキン、テーブルクロス、ハンカチーフ、肌着、手芸用生地などに、また厚物としては天幕、帆布、ホースその他工業用としても需要が多いものです。さらに、繊維屑は製紙原料としても使用されています。
アマは近東で約1万年前に栽培化されました。世界で最も古い織物は、トルコ南東部で発見されたリネン(亜麻布)の端切れで、放射性炭素年代測定による調査では9000年前のものです。古代エジプトのミイラの布帯にも使われていたとされ、欧州へはローマ時代に広まったようです。当時、亜麻の布地は1インチ(2.54cm)四方あたり500本の糸が使われるほどきめが細かく、上着が1ポンドコインの穴を通り抜ける柔らかさであった由。9世紀に、フランク王国のカール大帝はフランドルの町を亜麻織物の中心地として発展させました。リネンは中世後期までキリスト教聖職者が身につけ、死者を覆うものと規定されていたため、ヨーロッパの僧院ではアマの大規模栽培が行われていました。その後の18世紀半ば、プロテスタントのリネン労働者は、ローマカトリックの土地であったベルギー、フランスからアイルランドへ移住したため、亜麻織物の中心もアイルランドに移り、今日でも名声を博しています。しかしながら、現在の主要生産国はカナダと中国となっています。
アマ種子(亜麻仁)を圧搾して得た「亜麻仁油」は乾性油で、必須オメガ脂肪酸であるリノール酸やα-リノレン酸などを豊富に含んでいます。かつて腸炎に内服剤として、あるいは浣腸剤やパップ剤とされましたが、現在では軟膏基剤、カリ石鹸の原料、絵の具や印刷用インキ、VOCを放出しない溶剤としてシックハウス症候群対策の塗料およびリノリウムなどの材料に使われています。また健康サプリメントとしてもコレステロール値の上昇を抑えて動脈硬化の予防や血流の改善、免疫力の向上などに効果があるとして、近年注目を浴びています。亜麻仁油は加熱することで簡単に重合・酸化します。そのため加熱調理には適していません。クセが少なくて独特の風味がありますので、様々な料理にそのまま適量をかけて食べるのがお勧めです。





トピックス2026年5月のお知らせ
東玄関の横にあるサンシュユの株元から左巻きに蔓を伸ばして、その葉群の中に淡桃紅色の花を咲かせているのがアケビなのですが、今年は5月連休前に花が終わってしまいました。蔓は工芸物に利用されます。この樹は小鳥からの贈り物で、糞の中からいつの間にか生え出してきて成長したものです。秋になると長楕円形の果実ができて、熟すると縦に裂開し、中の白い部分が食べられるのですが、黒いタネがいっぱいあって吐き出すのに苦労します。また紫色をした果皮の中に肉、茸、味噌などを詰めて油で炒めると、ほろ苦い野趣豊かな”酒の肴”の出来上がりです。さらに、果実に同量の砂糖を入れて1週間置くと、粘稠で甘い酵母が採れます。布でろ過してパンやケーキを焼くのに利用できます。
蔓茎を横切りにして乾燥したものが「木通(モクツウ)」で、体内に滞っている余分な水分や熱感を排尿することによって外に出す働きがあります。そのために関節リウマチ、神経痛、膀胱炎や浮腫、湿疹などの症状に用いられています。また一風変わった使い方としては、野外において木の枝などで突き目をした時、アケビの蔓を10cmほど切り、一方の端から息を吹き込んで出てきた汁をつけると痛みが和らぎます。
アケビの右側で枝先に桃色を帯びた白色の小花をつけたのがコエンドロです。花とその後にできる果実(コリアンダー)はレモンとセージを混ぜたような特有の芳香を放ってインドカレー粉の主原料となります。一方、葉(パクチー)はセロリに似ていて独特の臭気(=カメムシの臭い)があります。中華料理やタイ・ベトナム料理などには欠かせない香辛料です。地中海地域原産の一年草で、3,000年以上もの古い栽培の歴史があって、今では世界各地で商業的に栽培されています。乾燥した果実を「胡荽子(コズイシ)」と呼び、健胃、駆風(お腹のガス抜き)、鎮痛・鎮静、去痰作用などがあり、胃液や胆汁分泌を促進することから消化不良などに利用されます。
5月の薬草園でひときわ目を引くのは超豪華なボタンの花と、それに続くシャクヤクですが、これもボタンが早々に散ってしまいました。昔から“立てば芍薬、座れば牡丹”の諺で美人を称えるものとされていますが、実は漢方の極意を表した格言なのです。すなわち、血液の巡りが良過ぎてイライラしたり上せるご婦人にはシャクヤクの根を、また逆に血の巡りが悪い瘀血(オケツ)の症状にはボタンの根を飲ませなさい、そうすると健康を取り戻せる=美人になりますよ、というのが真意なのです。ともにご婦人方の不調な症状を改善する妙薬となっています。前者は交感神経にも作用する薬材で、急に起こる筋肉のけいれん(こむら返り)を鎮めてくれるお薬です。
ところで、市販のボタン苗はシャクヤクの台木に接ぎ木したものなので、大株に育ってもその根はシャクヤクですから、“牡丹皮”は採れません。今咲いている株は、こぼれタネから自分の根で育った実生10年生株(推定)ですから、正真正銘“牡丹皮”が収穫できるものです。周りに植えた小株も開園10年目に採取したタネから発芽させましたので、同じく薬用の株です。
一方、物置の前でたくさんの蕾を伸ばしているシャクヤクは、淡桃白色の半八重咲きで、昔から吉野地方で守られてきた「梵天(ボンテン)」という薬用種です。薄皮を剥くと真っ白の「白芍」になります。日本人は何故か白い色を高貴に感じる民族のようで、やや茶褐色を呈する赤花の根「赤芍」より白い薬材を重用してきました。
今、薬草園の中央付近で甘いバナナの香りを放っている黄色小花がカラタネオガタマの木です。開園10周年の記念樹として植栽したもので、剪定の仕方によって春・秋の二季咲き性となる中国原産の常緑小高木です。茶色の外萼片が外れた蕾を胸ポケットに入れておくと、体温で温められ20℃以上で強く匂うようになります。英名は“バナナ・ツリー”です。なお、和名は“招霊木(オガタマノキ)”が語源で、かつて南日本に産する樹種の枝を「玉串」として利用した名残りです。現在ではツバキ科のサカキの枝を使用するのが一般的となっていますので、その樹は明治期以前に創建された古い神社の境内に植栽されていることが多く、小浜では神宮寺本堂の裏に大木があります。







オガタマノキ

