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小正月には「小豆粥」を食べましょう !!

アズキ(Vigna angularis)は、熱帯アジアを原産地とする一年草です。栽培の歴史は農耕文化のそれに匹敵する長さではないかと考えられています。草丈は30~60cm。長柄のある3出複葉で、夏に淡黄色の蝶形花を咲かせ(写真①)、果実は9月下旬頃に赤く熟します(写真②、③)。日本各地で栽培されますが、とりわけ北海道はその主産地で、かつて”赤いダイヤ”と言われて投機筋に持てはやされました。本種は下胚軸が伸びないので、子葉(双葉)が地上に展開しない地下発芽性のマメです。そのため通常はモヤシの原料にはなりません。

完熟した種子を「赤小豆(シャクショウズ)」と称し(写真④)、漢方では消炎、利尿、解毒、排膿などの目的で用いられます。浮腫、黄疸、小便不利、種々の皮膚病によく効くとされています。また民間薬としての利用も幅広く、例えば催乳に小豆粥を食べるとか、二日酔いには小豆を煮て食べる、あるいは煎液を飲むなどがあります。本種は、使用する部位によって作用が全く逆になるものの代表格です。すなわち、果実は利尿作用が強く、枝や葉は逆に尿を止める働きがあり、夜尿症や尿失禁などに用いられます。

水田稲作の儀式食が「お餅」なら、本種は焼畑の代表作物で、仏事にはアズキ餡の饅頭を作り、祝い事には赤飯を炊いて食べます。また小正月(旧暦1月15日、今年は2月12日が最初の満月)には小豆粥を供えてその年の豊作を祈り、邪気を祓う風習は本種の薬効にあやかって無病息災を願う気持ちの現れと思われます。お正月のお節料理に飽きたら、ぜひ“小豆粥”を食べて消化器官を休めましょう(写真⑤)。因みに、中国では専ら緑豆を用いて、豆飯や豆粥など日本の小豆と同様な使い方をするそうです。

「アズキの豆腐」とはあり得ないことの例えです。豆腐はタンパク質を“にがり”などの凝固剤で反応させ、固めてつくるもの。したがって、タンパク質が少ない植物からは豆腐を作ることができません。因みに、大豆は30~50%で、小豆には12%しか含まれていないのです。また沖縄郷土料理のジーマミトーフ(地豆豆腐)として親しまれている落花生の蛋白質は25~31%で、それだけではやや固まりにくいので、胡麻豆腐と同じように葛粉などを補助剤として加えます。

写真① アズキの花
(2009. 6.24.撮影)
写真② アズキの果実
(2010. 9.20.撮影)
写真③ 果実の登熟
(2010.10.09.撮影)
写真④ 赤小豆
(2011.10.30.撮影)
写真⑤ 小豆粥