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ひな壇飾りにおける添え花の一つ・タチバナ

桃の節句のひな壇にはモモ(写真①)やサクラとともにタチバナが飾られることがあります。タチバナのタチ(立ち)とは神霊の顕現することで、タチバナは神霊が現れて農事の開始を告げるものとされ、聖なる花の意味であると考えられてきました。この花の咲く陰暦5月は橘月とも呼ばれ、人々はこの花を見て農事を開始したのです。“勧農鳥”とされるホトトギスもタチバナに来て鳴くものとされてきました。万葉集に「橘は実さへ花さへその葉さへ枝に霜降れどいや常葉の樹」とあるように、秋に黄色に輝く実をつける常緑樹で、古代人の夢見た長寿と幸福の理想国である常世国の象徴とされたようです。『古事記』や『日本書紀』には垂仁天皇が田道間守を常世の国に遣わして「非時香菓(トキジクノカグノコノミ)」と呼ばれる不老不死の力を持った霊薬を持ち帰らせたという話が記されています。『古事記』本文では「これ今の橘なり」とする由来から京都御所の紫宸殿では「右近の橘・左近の桜」としてタチバナが植えられています。しかし、文献に登場する橘がタチバナであるという証はないのですが ?!

タチバナ(Citrus tachibana 英名:tachibana orange)は、日本に野生する唯一の柑橘類で、和歌山から鹿児島に至る暖地に自生し、天然記念物に指定されたところもあります。中でも高知県室戸市の野生林は特に有名です。2021年、沖縄科学技術大学院大学などの研究によって、本種が沖縄原産のタニブター(C. ryukyuensis)とアジア大陸産種との交雑種であることが明らかとなりましたが、両種はどうやって出会ったのでしょうかね??

常緑の小高木で、高さ3~5mになります。枝は緑色無毛で葉を互生します。葉は光沢があり、長さ約8cmの楕円状披針形です。5~6月に咲く白色5弁花(写真②)は、小さいながらすっきりして美しく、芳香があります。黄色に熟す果実は10gと小さく(写真③)、扁球形で、果皮は薄くてたやすく剥皮できます。苦味はありませんが酸味が強く、生食には不向きです。樹は病害に強くて栽培しやすいので、暖地の庭園樹にされます。

家紋の文様としては平安末期から多用されて蔦紋や桐紋などとともに十大家紋の一つとなっていて、彦根藩の井伊家が有名です(写真④)。近代では文化勲章のデザインとして採用され、また五百円硬貨の裏にも描かれています。

雛祭りの桃花飾り
タチバナの花(2007.7.04.撮影)
日吉神社のタチバナ果実(2013.11.27.撮影)
タチバナの家紋

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