中川淳庵顕彰薬草園

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“亜麻仁油で免疫力を向上して生活習慣病の予防を!!”

皆さんは“亜麻色の髪の乙女”という歌をご存知でしょうか(?)。私は団塊の世代なので、ヴィレッジ・シンガーズ(1968年2月発売)を真っ先に思い浮かべますが、同曲をカバーした島谷ひとみ(2002年)の方がオリコンチャートでは上位を占めたので、より幅広く知られているかもしれませんね。その亜麻色の本家・本元がアマ(Linum usitatissimum)です。中央アジア南部およびアラビア原産で、生育日数が85~100日と極めて短いため秋播き二年草あるいは春播き一年草として扱われています。草丈は1m前後になり、茎の太さは1~2mmで、茎の頂部で3~5本に枝分かれします。夏に藍色または白色の花を着けますが、早朝4~5時頃から開き始め、正午までには大半が散ってしまう“一日花”です。果実は黄褐色で円形、光沢があって、外皮は粘液層を持つので水分を吸収すると粘液が出てぬるぬるするので「ヌメゴマ」とも呼ばれます。

繊維や油の原料としていろいろな品種が育成され、広く世界各地で栽培されています。繊維用はロシアをはじめヨーロッパの北方植物であるのに対して、油用はアルゼンチン、インドなど、むしろ熱帯に適しています。かつて北海道では繊維用の栽培が行われていましたが、化学繊維の台頭に伴って1967年に製麻工場が撤収されたのを機に国内での栽培は皆無となってしまいました。ただ最近の健康指向から亜麻仁油の評価が高まるにつれて十勝、上川地方で細々と栽培が広がっているようです。ちなみに、薬草園で栽培しているのは繊維用の品種かと思われます。

真っ直ぐに走る繊維の全長を活かすため、アマは株ごと引き抜いて収穫されます。乾燥後、果実を取り除き、茎を水に浸けて繊維を取り出します。木質部や皮などを取り除くために、茎を円筒の間に通す亜麻打ち(scutching)作業が行われます。その後少し撚りがかけられ、温水に浸して濡れた状態で織り糸に紡がれます。『亜麻色の髪』と表現されるように、天然の亜麻は光沢のある美しい黄褐色を呈しています。伝統的な技法ではその色を日光に晒して取り除きますが、今ではほとんどが化学漂白されているようです。

亜麻繊維からの織物をリネン(linen)と呼び、繊維はアサ(麻)よりやや弱いが柔軟で絹のような光沢があり、毛羽立たず、通気性や吸湿性に優れています。肌触りも良いなど多くの優れた特性があって上質の織物にされます。亜麻糸を英語で古くはライン(line)と言い、細くて丈夫なので、lineは「線・筋」を意味する英単語になりました。一方、フランス語ではラン(lin)と言い、亜麻の高級繊維を使用した女性の下着がランジェリーです。薄物のリンネル類としては洋服地、ナフキン、テーブルクロス、ハンカチーフ、肌着、手芸用生地などに、また厚物としては天幕、帆布、ホースその他工業用としても需要が多いものです。さらに、繊維屑は製紙原料としても使用されています。

アマは近東で約1万年前に栽培化されました。世界で最も古い織物は、トルコ南東部で発見されたリネン(亜麻布)の端切れで、放射性炭素年代測定による調査では9000年前のものです。古代エジプトのミイラの布帯にも使われていたとされ、欧州へはローマ時代に広まったようです。当時、亜麻の布地は1インチ(2.54cm)四方あたり500本の糸が使われるほどきめが細かく、上着が1ポンドコインの穴を通り抜ける柔らかさであった由。9世紀に、フランク王国のカール大帝はフランドルの町を亜麻織物の中心地として発展させました。リネンは中世後期までキリスト教聖職者が身につけ、死者を覆うものと規定されていたため、ヨーロッパの僧院ではアマの大規模栽培が行われていました。その後の18世紀半ば、プロテスタントのリネン労働者は、ローマカトリックの土地であったベルギー、フランスからアイルランドへ移住したため、亜麻織物の中心もアイルランドに移り、今日でも名声を博しています。しかしながら、現在の主要生産国はカナダと中国となっています。

アマ種子(亜麻仁)を圧搾して得た「亜麻仁油」は乾性油で、必須オメガ脂肪酸であるリノール酸やα-リノレン酸などを豊富に含んでいます。かつて腸炎に内服剤として、あるいは浣腸剤やパップ剤とされましたが、現在では軟膏基剤、カリ石鹸の原料、絵の具や印刷用インキ、VOCを放出しない溶剤としてシックハウス症候群対策の塗料およびリノリウムなどの材料に使われています。また健康サプリメントとしてもコレステロール値の上昇を抑えて動脈硬化の予防や血流の改善、免疫力の向上などに効果があるとして、近年注目を浴びています。亜麻仁油は加熱することで簡単に重合・酸化します。そのため加熱調理には適していません。クセが少なくて独特の風味がありますので、様々な料理にそのまま適量をかけて食べるのがお勧めです。

アマの芽生えから開花まで
アマの果実とタネの選別