夏バテの予防・解消には「レンコン餅」が効果的
お盆が近づく猛暑の季節になると水が恋しくなりますが、お寺や水生植物園ではハスの花が開き始めます(写真①)。ハス(Nelumbo nucifera)はインド原産の水生多年草で、熱帯アジアからオーストラリアに分布し、現在では温帯でも広く栽培されています。日本へは非常に古い時代に中国から渡来したとされ、すでに『古事記』や『万葉集』に“ハチス(蜂巣)”の名があります。果実の入った花托が蜂の巣のように見えるからで(写真②)、その後平安後期には「ハス」に転訛したとされています。一方、本種の漢名は極めて多く難しいです。ハスの総称が「荷(カ)(花や葉が水面から出ている草の意)」または「芙渠(フキョ)」、葉を「遐(カ)」、花を「蓮花(レンカ)」、根茎を「藕(グウ)」、果実を「蓮(レン)」、種子の中身が「的(テキ)(写真③)」、幼芽を「薏(ヨク)」などと呼びました。種子、根茎、葉、花托など様々な部位が薬用とされますが、主な薬効は強壮、止血、疲労倦怠感の解消等です。通常は地下茎の肥大した蓮根を食用にします。熱に強いビタミンCおよびビタミンB12などが豊富で、免疫抵抗力を高め、貧血に良いとされています。そこで、夏バテの予防・解消には後述するレンコン餅を食するか、単に生レンコンを擦り下ろしてスプーン1杯を毎日適当に味付けして食べるだけでも極めて効果的です。
日本に野生するものは「地バス」と呼ばれ、地下茎があまり大きくなりませんが、開花期が早いため“仏花”として用いられます。そのため日本では仏教や極楽浄土など何となく抹香臭い死後のイメージと結びついた花と感じる人が多いかと思われます。しかし、元来インドではハスは生命発生の母胎と考えられていて、女性の生殖を象徴していました。ちなみに、仏教と蓮華の出会いは、釈迦の誕生の時とされています。すなわち、太子が母マーヤ夫人の胎内に入ると、地中から1本の蓮華が咲き出ます。その中にはあらゆる霊薬が納まっており、やがて月満ちて母の右脇腹から歩み出ると、再び大地から大きな蓮華が咲き出て、太子はこの蓮華の中に立って「天上天下唯我独尊」の第一声を放ったという。かくして多くの仏典には数え切れないほどの蓮華が登場することとなったようです。
一方、泥水の中から汚れのない美しい花を開くことから、純粋性の象徴として絵画の題材として多用されましたが、仏教伝来後は西方浄土が神聖なハスの池とされ、寺の境内にもハス池を作るようになりました。また蓮根には通気孔となる10個の穴が空いていて「先の見通しが利く」との縁起担ぎから、お節料理に使われています。さらには、爽やかな香りのするハスの葉にご飯を包んで「ハス飯」を作り、ご先祖の御魂をお祭りする盂蘭盆(ウラボン)の習が今も各地で続けられています。
本種の栽培には有機質に富む柔軟な粘質土壌が良いので河川下流の沖積平野に産地が形成されます。またハスは高温性の植物で生育適温は25~30℃です。したがって、経済栽培の北限は茨木県と新潟県を結ぶ線となります。加えて、台風や強風の多い地帯も適地とはなりません。このような条件から、主産地は茨城県で、全国栽培面積の約30%を占め、次いで徳島、愛知、新潟となっています。
種子は広楕円形で長さ1㎝。堅い殻を持つために、寿命が長く、環境が良ければ千年以上も発芽力を失わない。事実、大賀一郎博士が昭和26年(1951)、千葉県検見川の遺跡で2000年前の地層から発掘された種子を発芽させることに成功しました。その生育したものが「大賀ハス」または「原始ハス」と呼ばれ、今では各地で栽培されています。一般的なハスより開花が20日ほど早いのが特徴で、花弁は細長い舟底型を呈しています(写真④)。
ところで、滋賀県守山市の大日池には花弁数3000にも達する「妙蓮」という室町時代から知られる古い品種のハスが保存されています(写真⑤、⑥)。一時、管理者の不在と植物ウイルスの罹患で消滅の危機を迎えたようですが、近江妙蓮保存会の懸命の努力および同じ遺伝子を有する金沢市の持妙院株の分与を受けて、今では立派に復活されています。文化的遺産として大事に管理・維持して欲しいものです。
レンコン餅の作り方;(滋養強壮・夏バテにお奨め)
① レンコン300gを擦り下ろし、ネギ10cmを微塵切りにして加え、桜エビ大匙2
上新粉を大匙4、塩小匙1/4、ゴマ油大匙1を入れて混ぜ合わせる。
② 耐熱皿にラップを敷き、①を平らに広げて、その上からラップをかけ、電子レンジで
8分加熱する。
③ 熱いうちに丸く形を作り、串に挿す。
④ 砂糖30g、醤油大匙2に水90mlを加えたものを鍋に入れて煮詰め、タレを作って
③にかける。

(草津みずの森水生植物園2019.8.05.撮影)




(守山市2011.7.29.撮影)

(大日池2019.8.05.撮影)

