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対馬特産の絶滅危惧種・黄金オニユリ

オニユリの鱗茎は茶碗蒸しの具材とされますが、熱湯をかけて陽干しにしたものが生薬の「百合(ビャクゴウ)」で、精神の安定を必要とする複雑な症状の改善に極めて有効です。三倍体で種子ができない代わりに、葉腋に黒紫色、豆粒大の“珠芽(鱗芽)”=むかごを着けるのが特徴です。これは葉が肉質の鱗片状になったものですね。土に埋めて育てれば、3年ほどで小苗になります。

盛夏の頃、茎頂にたくさんの橙赤色花をつけます。もともと中国原産で、古い時代に我が国に持ち込まれて野生化したと考えられています。平成30年(2018)7月に蘇洞門巡りをした際、岩の間にたくさんの花が咲いているのを見かけました(写真参照)。

秋に球根を植えると、下部から植物体を支えるための太い「下根」がたくさん出ます。春、茎が伸びると、球根の上部に養分を吸収するための細い「上根」が横に拡がります。したがって、球根高さの3~4倍の深さに植え付け、その上を肥料分の多い土で覆ってやると、新しい球根がよく肥大することになります。これは他の観賞用のユリでも共通の育て方ですから、覚えておくといいですよ。

薬草園には鮮黄色の花を着けるオウゴンオニユリが植えられています。江戸時代の『本草図譜』(1828)に記載されているものの、その後時を経て長崎県対馬の女県(メガタ)地区にのみ特産する種類となっています。そこで採集されたものが小石川植物園で栽培され、牧野富太郎博士が1933年に命名・発表されたという“代物”です。原産地の不明な謎のユリですが、平成9年(1997)5月、日本植物園協会の技術者講習会で対馬の植物調査が行われた際、渡辺がある農家の庭から1株を譲り受けて増殖したものです。茎が30㎝ほどに伸びていたので、折らないよう持ち帰るのに大変苦労しました。写真に見られるように7月には見事な花が咲き、その後採取した珠芽を講習会参加園に無事配布することができた思い出深い植物です。

ユリ根黄身スープの作り方;(不眠・いらいら・精神不安など更年期障害の改善に)
① ユリ根4個は、ほぐして水洗いし、水600mlに固形スープ1個、塩・胡椒を少々加えて、軟らかくなるまで煮ます。
② ミキサーにかけるか、汁ごと裏濾しします。
③ 鍋に戻して再度弱火で温め、溶きほぐした卵黄を加えたら直ぐに火を止めます(直ぐに止めないと、舌触りが悪くなりますよ)。

写真① 蘇洞門巡りで見かけたオニユリ
(2018.7.12.撮)
写真② 対馬から持ち帰った株が開花
(1997.7.13.撮)
写真③ 葉腋にできた黒紫色の珠芽
(2022.7.01.撮)