節分に利用される植物
二十四節気において春の始まりとされるのが“立春”で、今年は2月4日がその日です。その前日が“節分”と呼ばれ、一年を締めくくり、かつ新たな年を寿ぐために邪気(鬼)を祓う行事・風習が全国各地に様々な形で残されています。招運来福を願う意味で、「立春大吉」のお札を目より高い位置に貼り付け、ヒイラギの枝に焼いたイワシの頭を刺して門口に掲げ、炒った豆を撒いて鬼祓いをします。イワシは魚へんに弱いと書きますが、直ぐに腐敗して鬼も退散するほどの“悪臭”を放ちます。
一方、ヒイラギ(O. heterophyllus)はモクセイ科(Oleaceae)の常緑広葉樹です。日本原産で、広く山野に自生する雌雄異株の植物です。葉に硬い針状の刺があり、触ると疼(ヒイラ)ぐから”疼木”と名付けられました。昔から”表鬼門に柊、裏鬼門に南天”の諺でよく知られており、生け垣や庭木として広く植栽されています。古来より邪気を払う植物とされ、『古事記』にも日本武尊が東征の際に「比比羅木の八尋の矛」を賜ったとあります。本種の枝で邪気を祓う風習は、平安の頃には大晦日の越年行事で、紀貫之の『土佐日記』にも記述 されています。ちなみに、中国では鬼を爆竹の音で追い払いますが、本種の葉は厚く、火で膨張して爆ぜるので、その音で鬼が退散するとの俗信から本種の節分利用が始まったのかもしれないですね。
伊勢や出雲では節分の門飾りにトベラ(Pittosporum tobira)が用いられています。本種は葉や枝に青臭いにおいを有しますが、鬼脅かしにはその臭いではなくて、生葉を火にくべるとバチバチ音を立てて燃えることに依るようです(湯浅浩史著『植物と行事』、朝日選書1991)。本種は、岩手・新潟以南に分布する常緑低木の雌雄異株です。海岸照葉樹林の代表的な種類で、高さ2~3m、よく枝分かれしてこんもりとした樹形をつくります。初夏、枝先に長さ1~2cmの筒形の白色5弁花を数個上向きに開きます。秋に球状の果実が熟すと三つに割れ、粘液質で鮮やかな赤色の種子をのぞかせます。
さらに、前記の諺を両方兼ね備えた名前の植物もありますが、残念ながら“厄除け”などには全く無縁です。メギ科のヒイラギナンテン(Mahonia japonica)で、ヒマラヤから中国大陸や台湾にかけて野生する常緑低木で、天和・貞享年間(1681~87)に薬木として日本に渡来しました。株立性で、材や内皮および根は鮮黄色を呈します。奇数羽状複葉が枝先に叢出し、小葉には大きな鋸歯があり、ヒイラギに似て尖鋭で触ると痛いので、公園や人留め用の植え込みに利用されています。


(ブラジルの庭園で 2002.1.28撮)
