中川淳庵顕彰薬草園

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3月の管理作業

① ミシマサイコ苗の定植

本種の発芽および初期生育はいずれも極めてゆっくりで、その間に大きくなった雑草に負けてしまうのが栽培の難点です。そこで、今回は昨年9月にタネ播きしてある程度の大きさまで育成した苗を定植しました。

半世紀も前、薬草の自生地探索行でミシマサイコを見たのはたった3ヵ所(伊豆石廊崎、小豆島寒霞渓、高知南国市の採石場)で、いずれも地形や地質の厳しい崖地でした。今や日当たりのよい緩傾斜の草地や三角点などはどこにも残されていないので、必然的に絶滅危惧種に指定されています。本種の根部が漢薬の「柴胡(サイコ)」で、古くから品質的に中国産より優れているとされて、日本での臨床経験が積み重ねられてきました。漢方ではもっぱら“気の病”を治療する薬材として、気鬱で胸苦しい症状および気滞で冷える症状などを目安に用いられています。

② トウキ苗の定植

本種は二年草で、根頭部が鉛筆以上の太さになって一定期間寒さに遭遇すると、次々に花茎を抽台して開花・結実し、その途上で根は空洞化して薬用にできません。そこで、栽培では苗作りが特に重要です。今回は昨年9月にタネ播きしてある程度の大きさまで育成した苗を定植しました。

漢薬の「当帰(トウキ)」は、広く婦人の諸疾患(産前産後、地の道症、更年期障害など)に用いられる漢方処方の主薬で、血の鬱滞(ウッタイ)を去り、血を増す働きがあります。特有の匂いの本体が薬効成分で、婦人病の方は格別“好ましい匂い”と感じる傾向があるとか。お心当たりの方は薬草園でぜひ葉に手を触れてみてください。

③ 杭白ギクの冬至芽を挿し木

キクは多年草ですが、植えたまま数年が経過すると、下葉が枯れる病気が蔓延してしまいます。そこで、冬至の頃に株元から離れた場所にある芽(冬至芽という)を長さ数センチで切り取って赤玉土に埋め、苗作りをします。今年は2月1日に挿し芽しました。4月初めには定植できる予定です。

現在、日本で切り花として最も多く生産されるのがキクで、年間20億本を越えています。観賞あるいは料理用など多種多様なキクの品種が栽培されていますが、残念ながら“薬用のキク”はほとんど栽培されていません。

薬草園で栽培している杭白ギクは、1972年9月、中国との国交回復調印式に同行した生薬学会に対して上海市郊外の馬橋人民公社から寄贈されたものです。福井県立大・村上茂教授の研究によると、その頭花にはフラボノイドが多量に含まれており、食事後の血糖値上昇を有意に抑えるとともに、抗酸化、抗炎症作用などもかなり強いことが判ってきました。数輪の花に熱湯を注ぐだけで馥郁とした香りの“菊花茶”を楽しむことができます。秋の開花を楽しみにお待ちください。

ミシマサイコ(左)とトウキ(右)の苗