2026年5月のお知らせ
東玄関の横にあるサンシュユの株元から左巻きに蔓を伸ばして、その葉群の中に淡桃紅色の花を咲かせているのがアケビなのですが、今年は5月連休前に花が終わってしまいました。蔓は工芸物に利用されます。この樹は小鳥からの贈り物で、糞の中からいつの間にか生え出してきて成長したものです。秋になると長楕円形の果実ができて、熟すると縦に裂開し、中の白い部分が食べられるのですが、黒いタネがいっぱいあって吐き出すのに苦労します。また紫色をした果皮の中に肉、茸、味噌などを詰めて油で炒めると、ほろ苦い野趣豊かな”酒の肴”の出来上がりです。さらに、果実に同量の砂糖を入れて1週間置くと、粘稠で甘い酵母が採れます。布でろ過してパンやケーキを焼くのに利用できます。
蔓茎を横切りにして乾燥したものが「木通(モクツウ)」で、体内に滞っている余分な水分や熱感を排尿することによって外に出す働きがあります。そのために関節リウマチ、神経痛、膀胱炎や浮腫、湿疹などの症状に用いられています。また一風変わった使い方としては、野外において木の枝などで突き目をした時、アケビの蔓を10cmほど切り、一方の端から息を吹き込んで出てきた汁をつけると痛みが和らぎます。
アケビの右側で枝先に桃色を帯びた白色の小花をつけたのがコエンドロです。花とその後にできる果実(コリアンダー)はレモンとセージを混ぜたような特有の芳香を放ってインドカレー粉の主原料となります。一方、葉(パクチー)はセロリに似ていて独特の臭気(=カメムシの臭い)があります。中華料理やタイ・ベトナム料理などには欠かせない香辛料です。地中海地域原産の一年草で、3,000年以上もの古い栽培の歴史があって、今では世界各地で商業的に栽培されています。乾燥した果実を「胡荽子(コズイシ)」と呼び、健胃、駆風(お腹のガス抜き)、鎮痛・鎮静、去痰作用などがあり、胃液や胆汁分泌を促進することから消化不良などに利用されます。
5月の薬草園でひときわ目を引くのは超豪華なボタンの花と、それに続くシャクヤクですが、これもボタンが早々に散ってしまいました。昔から“立てば芍薬、座れば牡丹”の諺で美人を称えるものとされていますが、実は漢方の極意を表した格言なのです。すなわち、血液の巡りが良過ぎてイライラしたり上せるご婦人にはシャクヤクの根を、また逆に血の巡りが悪い瘀血(オケツ)の症状にはボタンの根を飲ませなさい、そうすると健康を取り戻せる=美人になりますよ、というのが真意なのです。ともにご婦人方の不調な症状を改善する妙薬となっています。前者は交感神経にも作用する薬材で、急に起こる筋肉のけいれん(こむら返り)を鎮めてくれるお薬です。
ところで、市販のボタン苗はシャクヤクの台木に接ぎ木したものなので、大株に育ってもその根はシャクヤクですから、“牡丹皮”は採れません。今咲いている株は、こぼれタネから自分の根で育った実生10年生株(推定)ですから、正真正銘“牡丹皮”が収穫できるものです。周りに植えた小株も開園10年目に採取したタネから発芽させましたので、同じく薬用の株です。
一方、物置の前でたくさんの蕾を伸ばしているシャクヤクは、淡桃白色の半八重咲きで、昔から吉野地方で守られてきた「梵天(ボンテン)」という薬用種です。薄皮を剥くと真っ白の「白芍」になります。日本人は何故か白い色を高貴に感じる民族のようで、やや茶褐色を呈する赤花の根「赤芍」より白い薬材を重用してきました。
今、薬草園の中央付近で甘いバナナの香りを放っている黄色小花がカラタネオガタマの木です。開園10周年の記念樹として植栽したもので、剪定の仕方によって春・秋の二季咲き性となる中国原産の常緑小高木です。茶色の外萼片が外れた蕾を胸ポケットに入れておくと、体温で温められ20℃以上で強く匂うようになります。英名は“バナナ・ツリー”です。なお、和名は“招霊木(オガタマノキ)”が語源で、かつて南日本に産する樹種の枝を「玉串」として利用した名残りです。現在ではツバキ科のサカキの枝を使用するのが一般的となっていますので、その樹は明治期以前に創建された古い神社の境内に植栽されていることが多く、小浜では神宮寺本堂の裏に大木があります。







オガタマノキ

