タンポポ・コーヒーはいかがですか?
春の温かい陽気に誘われたように草むらではタンポポの鮮やかな黄色の花が目立ちます。日本各地には多くの品種が分布していますが、若狭地方を含む近畿以西から北九州で目にするのは主に関西タンポポ(Taraxacum japonicum)です(写真①)。3~5月頃に開く黄色の頭花は直径3cmほどで、普通、朝6~7時に開花し、夕方閉じます。またこの花は天候にも極めて敏感で、雨が近づいたり空が曇ったりしただけでも閉じる性質があります。葉や花茎を切ると、白色の乳液が出ます。果実は紡錘形で白色の長い冠毛があり、パラシュート形の瘦果(ソウカ)が風によって運ばれます。
日本列島は、アラスカ、スカンディナビア、アイスランド、ヒマラヤとともに多種のタンポポを産する5大地域の一つとなっています。花の外側にある総苞片の形で在来種と帰化種を判別します。すなわち、白花、黄花合わせて20種ほどの在来種は、いずれの総苞も反り返らないのが特徴です(写真②)。在来種の大半は別の株の花粉を虫に運んでもらわないと結実しない“有性生殖をする二倍体種”で、種子は夏の高温によって発芽が抑制され、一定期間休眠した後、自然条件下では9月下旬~10月上旬に発芽する性質を有しています。
一方、花を裏返して基部の総苞がくるりと反り返っていれば西洋タンポポ(T. officinale)か、小型で実が赤いアカミタンポポ(T. laevigatum)などの帰化種です(写真②)。これらの帰化種では親植物の細胞が減数分裂も受精も経ずにそのまま遺伝的に同一な「クローン」種子になります。つまり、『無融合生殖』によって無性的に種子をつくる特殊な増殖能力を持っているのです。単為生殖は植物界としては珍しい現象で、タンポポの他にドクダミ、ヒメジョオン、ニガナなどが知られる程度です。また帰化種の花期は早春から初冬の頃までと極めて長く、さらにタネも軽くて良く飛び、季節を問わず発芽して成長が速いなど裸地での生育に適した性質を多く供えているため、今では全国的に在来種を駆逐しつつあります。近年は西洋種と在来種の雑種が次々と見出されていて、全国的に在来種そのものを見出すのが極めて難しい状況となっています。
そこで、ずっと以前に食文化館の斎藤学芸員とともに提案したのが「殖え過ぎた西洋タンポポの根を食べよう」という企画でした(2015年12月01日に実施)。キリスト受難の象徴とされるほどタンポポの全草には苦味があって、健胃、利尿、解熱、消炎、催乳薬としても利用されます。細切りした根を炒めた「キンピラ」は“酒の肴”にぴったりです(写真③)。ちなみに、金平牛蒡の「きんぴら」が坂田金平の名前に由来することはほとんど知られていませんね。彼は、平安後期の武将である源頼光の四天王の一人、坂田公時(俗に金時)の子供という設定で、江戸時代に流行した『操り浄瑠璃』に出てくる、剛勇無双のスーパーヒーローです。笹がきされたゴボウの形が、彼の髪型に似ていたことから、そのように呼ばれるようになった由。なお、金平の父親・公時は実在の武士で、童謡「まさかり担いで・・・」で有名な金太郎はこの公時の幼名です。
さらに、細かく刻んだ根を焦がした「タンポポ・コーヒー」はカフェインを含まないので胃にやさしい飲み物となってお勧めですよ(写真④、⑤)。自分でも作れます。
タンポポ・コーヒーの作り方;(カフェインを含まず、鎮静・催眠作用のあるコーヒー)
① ゴボウのような根を、途中で切らないように注意して掘り起こします。
② たわしなどで泥をよく取り除き、2~3ミリに細かく刻んでよく乾燥させます。
③ 乾燥したらやや焦げ目がつく程度に炒ります。
④ 急須に一摘み入れ、熱湯を注いで2~3分置いてから飲みましょう。
⑤ ポットに入れて煮出してもいいし、少量の蜂蜜を加えても美味しくなります。
⑥ 残りは、湿気ないように容器に入れて密閉・保存します。

(2012. 4.19.比叡山坂本で撮影)




タンポポ・コーヒー