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トロロアオイ・和紙漉き用の糊材

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特徴

 トロロアオイ(Abelmoschus manihot)は、インドから東南アジアにかけて分布する野生原種から選抜された栽培系統と推定されます。元来は多年草ですが、日本では一年草として扱われます。8~9月頃、極大輪の淡黄色花を横向きに開きます。朝開いて夕方には萎む“一日花”です。果実はオクラに似ていますが、太く短くて剛毛が生えているので食用にはなりません。

 外皮を剥いだ根を乾燥したのが「黄蜀葵根(オウショッキコン)」と呼ばれ、かつては腸カタルの治療や咽頭の刺激緩和を目的とした鎮咳薬とされましたが、今日では薬用とされることはありません。

 肥厚した根は約16%の粘液を含み、打ち砕いて水につけると、ドロドロの“糊(ネリ)”になります。紙漉きの際にコウゾ、ミツマタなどの植物繊維を均一に分散させる添加剤として利用されます。粘液は水温が高いと微生物の増殖により分解して粘度を減ずるので、和紙の製造はもっぱら寒中を最適とするのです。最近ではポリアクリルアミドなどを合成ネリとして使用する業者が多いので、本種の需要は減少傾向にありますが、広島、神奈川、静岡、埼玉などで年間150万kgほど生産されています。なお、日本では製紙用あるいは観賞用に栽培されますが、インドなどでは多くの品種が育成されており、茎葉の若くて軟らかい部分や若い果実はオクラのように食用とされています。