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トピックス2023年4月(卯月)の情報
さくら咲いて なるほど 日本の春は
山頭火
いよいよ心ときめく春本番。咲き誇る桜を愛でて、これこそが日本の春と山頭火も納得です。
ぽかぽか陽気に誘われて、草花が萌え立ち始めた薬草園。ぜひ訪れて、ベンチに腰掛けながら春の装いを楽しんで下さい。
春風に抱かれて気分もゆったりと、身も心も春色に染まり自然と笑みがこぼれます。
今年は薬草園開園10周年です。これを記念して下記により見学会を開催致します。
・日時 5月27日(土)午後2時から(予約不要)
・場所 小浜病院東玄関前 中川淳庵顕彰薬草園
・内容 記念植樹と渡辺斉氏(日本植物園協会名誉会員で当薬草園管理アドバイザー)による現地解説。
皆様お誘い合わせのうえぜひお越し下さい。秋には、講演会や薬草園の歩み展などを予定しています。




トピックス4月の開花情報
4月の開花情報(東玄関の奥から)
① フタバアオイ(上・下賀茂神社の神紋で、葵祭の頭挿し花に利用、徳川幕府の家紋)
② 黄花イカリソウ(船の錨に似た花形で淡黄色、唯一の薬用種、山草として人気)
③ セリバオウレンの種子形成(タネを内包する袋が穴空きとなっている、5月初旬に成熟)
④ アミガサユリ(虚無僧の編み笠に似た花形で、内側が淡紅色の網目模様、茶花に利用)
⑤ キンセンカ(金色の盃状の花形、花期が長いので、学名は1ヵ月を指す言葉)
⑥ サンシュユ(早春の花材で淡黄色花、秋に赤熟する果肉には強壮効果あり)
⑦ アマ(清楚な青花で一日花、茎の皮が繊維素材、タネから搾る油が“亜麻仁油”)
⑧ スズカケノキ(大樹の枝先に数個の鈴を下げたような形状の雌花)
⑨ レンギョウ(詩人・高村光太郎が愛した早春の花、黄色花、果実が薬用)
⑩ クサボケ(日本の特産種、朱赤色の花、秋に黄熟する果実酒が美味しい)
⑪ ボタン(観賞花としても豪華絢爛で、赤紫色の大輪、芯を除いた根皮が婦人薬)
⑫ 天台ウヤク(秦時代の徐福伝説で有名、雌雄異株、塊根に健胃、鎮痛鎮痙作用) など
トピックス桜湯と桜餅について
サクラは花として観賞するばかりでなく、西洋ミザクラの果実は“サクランボ”として、八重咲きサトザクラの花を“桜湯”に、オオシマザクラの葉を“桜餅”に、ヤマザクラの樹皮を“茶壺”などの装飾に利用するなど、日本人の生活に潤いと安らぎをもたらす貴重な存在となっています。
桜花の塩漬け(桜湯); 材料は、「関山」や「普賢象」などの八重咲きのサトザクラ(Cerasus lannesiana)を使いますが、今は神奈川県小田原市で95%が生産されているようです。すなわち、八分咲きの枝と花茎の付け根を爪でつまんで丁寧に摘み取り、花を壊さないように丁寧に洗って、水気をよく切った後、漬物容器などに入れて塩を振りかけ、ふんわりと混ぜ合わせます。その上からラップを掛けて重石を乗せ、一晩冷暗所に置きます。花から水が出るので、水気を搾って容器に戻し、別に用意した“梅酢”をかけた後、再びラップをして重石を2~3日置くと、酢の酸味で花弁が美しい赤色になります。その後、笊などの上にキッチンペーパーを敷き、花が重ならないように広げて、2~3日陰干しします(写真①)。干しあがったら、清潔な容器に陰干しした花を入れて保存用の塩をまぶして混ぜ合わせ、冷蔵庫で保存しましょう。
祝いの席で用いられる“桜湯”(茶は“濁す”ことにつながるので、桜茶とは言わない)は、湯飲みに桜花の塩漬けを入れて揉み解し、塩を軽く落とした後、熱湯を静かに注ぐだけで鮮やかな桜湯(写真②)となり、春らしい色合いとほのかな香りを楽しむことができます。
桜葉の塩漬け(桜餅の材料); オオシマザクラ(C. speciosa)の葉を塩漬けで貯蔵すると、醗酵してクマリンの良い香りが発生します。その葉で菓子を包み、食べながらその香りを楽しむのが“桜餅”です。
この種は伊豆地方の特産で、葉も花も大きく、全体的に白っぽいのが特徴です(写真③)。現在、西伊豆の松崎町を中心に90%が生産されていますが、その樹形は株元から高さ2~3mの放射状に叢生していて、花見をするような大株とは著しく異なっています(写真④)。まず、葉を手摘みで丁寧に採取し、虫食いや変色した葉を除き、また厚すぎず薄すぎないものを厳選して流水で洗い、50枚づつ束ねて萱(カヤ)の葉で縛った後、径3mほどの三十石杉樽に葉を隙間なく並べ、一段ごとに塩を振ります(写真⑤)。樽に一杯になったら木の蓋を被せて重石を載せ、水が上がってきたらさらに塩を加え飽和濃度で翌年の3月頃まで貯蔵します。1年以上も長期保管する場合は冷凍すれことで色落ちを防ぎます。使う時は1時間ほど水に浸けて塩抜きしたものを利用します。
ところで、関西と関東では桜餅の皮の材料とその形状が全く異なります。もともとの“桜餅”は江戸・向島にある長命寺の門番であった山本新六氏が考案したもので、餡を小麦粉で作った焼皮で包み、その上を醤油樽に漬け込まれた桜の葉3枚で包んだ“長命寺桜餅”として享保2年(1717)に売り出されて以来、江戸名物となって現在に至っているものです(写真⑥)。一方、京都・嵐山の“鶴屋寿”に代表される関西風は、粗く挽いた道明寺粉(道明寺糒(ホシイ)という糯米の干飯を臼で挽いたもの)で作った衣で餡を包み、その上を桜葉の前後を切り取り四角にして餅を上下から挟む形になっています(写真⑦)。そのような歴史的背景があって、今では静岡県掛川市の辺りが東西の分岐点となっているようですよ。

(2010. 4.28.撮影)


(2009. 3.25.撮影)




(2010. 4.01.撮影)
トピックス2023年3月(弥生)の情報
三月の 声かかりし あかるさよ
富安風生
春は光の春、音の春、気温の春と3段階でやって来るといわれています。
最初に訪れるのが光の春。日脚がすっかり長くなり、冬の間ひっそりと息をひそめていた草や虫たちが、顔を出す啓蟄を迎えました。
若狭路に春を呼ぶ伝統神事、奈良東大寺二月堂(若狭井)への「お水送り」が、3月2日厳かな雰囲気のもと小浜市で行われ、いよいよ待ちわびた季節の到来に気持ちも華やぎます。
厳しい冬から解き放たれた薬草園では、優しい陽の光に包まれシャクヤクの芽吹きが始まっています。
新たな生命の息吹きにそっと寄り添ってみてはいかがですか。思わずあなたの顔もほころぶことでしょう。
3月は、女の子の健やかな成長を願うひな祭りが、日本全国各地で催されます。
旧暦で桃の季節にも当たり、桃の節句とも呼ばれています。
その主役である雛人形の内裏様(男雛)とおひな様(女雛)の座る位置が、京都と関東で異なります。
向かって左側におひな様、右側にお内裏様を飾るのは京都。関東ではその逆です。大正天皇即位礼のとき、洋装の陛下が西洋文化に習われたことから、この風習が全国に広がったといわれています。
今ではほとんどが関東流ですが、京都の雛飾りは御所の紫宸殿を模したもので、宮中の雅な世界を今に伝えています。



トピックス3月の開花情報
3月の開花情報 (東玄関の奥から)
① 黄花イカリソウ(山草として人気、船の錨に似た花形で淡黄色、唯一の薬用種)
② セリバオウレン(雪を割って咲き出す白花は雄花と両性花 成長の遅い根茎が薬用)
③ アミガサユリ(茶花向き、虚無僧の編み笠に似た花形で、内側が淡紅色の網目模様)
④ サンシュユ(早春の花材、淡黄色、秋に赤熟する果肉に強壮効果あり)
⑤ レンギョウ(詩人・高村光太郎が愛した、早春の花、黄色花)
⑥ クサボケ(日本特産種、朱赤色の花、秋に黄熟する果実の酒が美味しい)
⑦ 天台ウヤク(中国・秦時代の徐福伝説で有名、黄褐色の花、雌雄異株) など
トピックスサクラ材で、サクラ色(薄桃色)を染める
3月になって少しポカポカ陽気が続くようになると、早咲きの寒緋ザクラ(沖縄)や河津ザクラ(東伊豆)などの開花が話題となりますが、今回はそんなサクラの枝材を使って桜色のショールなどを染める“草木染め”の話題です。
ソメイヨシノの開花前の枝を切って煮出した液で薄手の白い絹布を染めると、春らしい薄桃色の“桜色”に染まります。ただし、その桜色は6ヶ月ほどの寿命で、次第に褐色を帯びてきますから、1シーズンだけ春らしい色を楽しむことができます。でも、ご安心ください。次のシーズンには同じ要領・手順でその布に“重ね染め”をすれば、また同じように春色を楽しむことが可能ですから。
染液の調製;
染料とする材料のソメイヨシノの枝は、必ず開花前の枝を切り、直ぐに皮を剥いて細かく裁断し、できるだけ低温(40℃以下)で通風・乾燥しておきます(写真①)。その材料250gをステンレス製の鍋あるいはホウロウ鍋に入れ、15㍑の軟水(井戸水または1~2日汲み置いてカルキ分を除いたもの)で20~30分間煮出した後(写真②)、布で濾したものが茶褐色の染液となります(写真③)。
発色剤の調製;
原則、アルミ発色です。台所にあるミョウバン(明礬)でも代用できますが、古来からの草木染めではツバキ科植物(ツバキ、サザンカ、サカキ、モッコクなど)の葉の灰を使います。大きなゴミ袋3~4個ほどの枯葉を集めるのは大変ですが、その手間を楽しむくらいの余裕が必要です。完全燃焼させたツバキ葉の灰30gを、コーヒー用の濾紙に入れて上から熱湯を注ぎ(写真④)、2㍑の灰汁をとります。その0.5㍑を、12㍑の水で薄めたものを発色液として準備します。
サクラ染めの工程:
① お湯に浸した染色物(絹布)をよく絞り、抽出した染液に入れます。
② 15~20分間、弱火で加温しながら鍋中でゆっくりと染色物を動かして染めますが、この時染色物の内部に気泡が入らないように注意すること。
③ 染色物を引き上げて軽く絞った後、水に浸けて余分な染料を洗い流します。
④ よく絞って発色液に浸けますが、この時も気泡が入らないよう染色物を完全に浸けることが肝心です(写真⑤)。
⑤ 発色は基本的に常温で行いますが、気温の低い場合は20℃くらいに加熱して用います。20分ほど発色させて、様子を見ます。
⑥ 再度よく絞った後、水に浸けて余分な発色剤を洗い流します。
⑦ よく絞った後、再び染液に入れ、10~30分で希望の色になれば引き上げて水洗後、水気を切って陰干ししたら出来上がりです(写真⑥)。
ただし、希望の色に至っていない場合は、④~⑥の工程を繰り返して色の濃度を上げますが、限界は4回位です。
生薬「櫻皮(オウヒ)」は、ヤマザクラ(Cerasus jamasakura)やオオヤマザクラ(C. sargentii)の樹皮を5~8月に剥いでその内皮のみを乾燥したものです。殺菌、消炎作用などを有し、急性胃カタルや食中毒などにも効果があります。江戸時代には魚の食中毒や皮膚病の治療、解熱や咳止めとしても広く使われていたようです。華岡青洲は、中国の医書『万病回春』に記された「荊防(ケイボウ)敗毒散」に櫻皮などを加えて「十味敗毒散」を創りました。急性の湿疹、化膿性の皮膚疾患、乳腺炎、中・外耳炎など熱を持って腫れ痛む時に用いられていました。現在、櫻皮エキスは鎮咳・去痰薬として多くの咳止めや痰切りのシロップ剤に配合されています。この生薬は日本の民間薬として見出されたもので、基原植物もすべて日本産という数少ない日本育ちの薬材ですが。古来、常に身につける衣服の染色にサクラの材・樹皮の煎出液を用いた先人の創意は、単にその色合いのみならず、この生薬が持つ皮膚炎予防の効果と無縁ではないように思われて興味深いですね。


(2010. 4.24.撮影)




(2010. 4.25.撮影)
左は鉄分の発色、右は木綿布
トピックス2023年2月(如月)の情報
節分の何気なき雪ふりにけり
久保田万太郎(傘雨)
暦の上では立春。春の始まりとはいえ、2月は一年のうちで一番寒さが厳しい時季です。1月26日には、小浜でマイナス8.9℃を記録しました。
1984年(昭和59年)には、これを上回るマイナス10.1℃を経験しています。地球温暖化を忘れさせるような冷え込みです。
薬草園も思わぬ寒波に見舞われ、おしろいをまとったように白く染め上げられています。
この寒さがあるからこそ、春の訪れが待ち遠しいのです。
雪をかぶりひっそりと佇む小枝の先に、小さな春が息づいています。自然が織りなす神秘的な営みです。もう春はすぐそこ。季節の分かれ目の一コマをのぞいて見て下さい。あなただけの新鮮な出会いがあるかもしれません。
春を待ちわびる薬草園




トピックスカギカズラの鈎刺(コウキョク)が徘徊の衝動を抑えます
最近の介護現場で最も深刻な症状は“徘徊”や介護人に対する“暴言・暴力”で、それらを抑制するために「抑肝散(No.54)」という漢方薬が処方されています。ツムラの22年度第2四半期売上高を見ると、37.7億円で、大手術後の食欲改善などに効果的な「大建中湯(No.100)」の49.3億円、身体全体を活性化する「補中益気湯(No.41)」の40.6億円に次いで三番目の売上げを占めています。
「抑肝散」は、もともと子どもの夜泣き、疳(カン)の虫に使われた処方で、「肝」の高ぶりを抑える働きがあるとされています。漢方では『肝』が昂ると、怒りやイライラが現れると考えるからです。体力が中程度の大人で、怒りっぽく興奮しやすい、イライラする、眠れないなどの精神神経症状を訴える場合、あるいは記憶障害や認知症、妄想や幻覚、特に徘徊・暴力行動の抑制などに極めて効果的です。
「抑肝散」には薬草園に植栽されていないカギカズラの鈎状の刺(=釣藤鈎(チョウトウコウ) 写真①)が主材として配合されています。他は、植栽されている当帰(トウキの根)、柴胡(ミシマサイコの根)、川芎(センキュウの根茎)、白朮(オオバナオケラの根茎)、甘草(ウラルカンゾウの根・根茎)および茯苓(マツホド菌の菌核)などです。
カギカズラ(Uncaria rhynchophylla)は、房総半島から九州南部の山中に分布するアカネ科の常緑つる性の木です。私(渡辺)は京都の松尾神社(京都市指定天然記念物)、伏見・醍醐寺の裏山、種子島などでそれぞれ自生株を観察した経験があります。卵状楕円形の葉が対生し、その基部に茎の変形した鈎刺があり、他物に絡ませて高さ30mまで達するほど枝を張るので遠目にもそれとすぐ判ります。花は小さい黄色花が密集して球状となり、6~7月に咲きます(写真②、③)。種子は小さくて両端に翼があります。
鈎は「釣藤鈎(チョウトウコウ)」と呼ばれ、成分としては多種のインドールアルカロイドを含み、鎮痛、鎮痙、血圧降下および収斂作用などが知られています。
30m高さまで生育し、黄色を帯びた白色花と緩やかに曲がったトゲを有するのが特徴です。花も葉も目立つ植物ではありませんが、和名の由来となった「鈎」の着き方に特徴があります。すなわち、小枝の変化した鈎状の刺は対生した葉のつけねにありますが、左右に出るものと1個のみ出るものが交互に着いています(写真④)。この鈎は何かに引っかかると異常に発達し、植物体を固定して上へ上へと導く役目を果たします。引っかけた植物の樹冠の上に伸び上がり、少しでも日光を浴びて効率よく光合成を営むための仕組みになっているわけです。
昔の人はカギカズラの鈎刺部に精神的な作用のあることをどうやって知ったのでしょうか、不思議ですね。今、大勢の人がその恩恵に浴していることは紛れもない事実ですから、先人の知恵に大感謝です。


(2005. 6.14.撮影)


トピックス2023年1月(睦月)の情報
去 年 今 年 貫 く 棒 の 如 き も の
高浜虚子
明けましておめでとうございます。
穏やかな元日、小浜では神々しい初日の出を拝むことが出来ました。
年あらたまる朝の昨日とは違う淑気が漂う薬草園に、陽光が差し込んでいます。
今年の干支は癸卯(みずのとう)。明るい未来の扉を開く縁起のよい年といわれ、新型コロナウイルス禍の一日も早い終息が待たれます。こうした中、薬草園は開園10周年の記念の年を迎えました。ここまで続けてこられたのも、多くの方々のご理解と支えがあったからです。
積み重ねた歴史の上にこれからも変わることなく、より親しみやすく患者さんや市民の皆さんの心豊かな生活に、少しでも役立つ薬草園をめざして一層努力して参ります。



トピックス2022年12月(師走)の情報
この冬をここに越すべき冬支度
富安 風生
大雪、猛暑、大雨と例年になく地球温暖化現象による異常気象を肌で感じた今年も、もうすぐ終わりです。
この季節こそ、薬草たちにとって冬を越し、春の躍動に備える大切な冬支度の期間です。そんな年の暮れの哀愁が漂う薬草園に、色づいた葉ボタンが優しい雰囲気を醸し出しています。
来年は、薬草園開園10周年を迎えます。
患者さんや市民の皆さんに寄り添い、心癒やされるひと時を過ごしていただける楽園でありたいと願っています。


