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トピックス2023年9月(長月)の情報
藤袴 はや綻びて にほはなむ
あきのはつ風 ふきたゝずとも
皇后院宮美濃(こうごういんぐうみの)
9月も半ばを過ぎると夏の暑さがやわらぎ、どこか秋らしい雰囲気が漂ってきます。
秋といえば、若狭地方最大の祭り、江戸時代から三百年続く小浜市男山の八幡神社の例大祭が、16日・17日と二日間にわたって行われます。放生祭(ほうぜまつり・県指定無形民俗文化財)の名で親しまれています。
殺生を戒め家で飼っている生き物を、山野に放つ神仏習合時代の神事を起源としていますが、いつしか「放生」は行われなくなり、名称として定着し今日に至っています。豪華絢爛な山車、大太鼓、獅子舞など勇壮な演し物の勢揃いが見処で、近郷近在からの多くの見物客で賑わいます。
薬草園では、橙赤色のホンカンゾウが夏の猛暑を耐え抜き、エビスグサの黄色い小さな蝶の形をした花もけなげに咲いています。秋の七草の一つフジバカマが、ほころび始めました。キク科の多年草で、奈良時代に中国から渡来し、名前の由来は花が藤色でその姿が一見袴をはいた形に似ているために付けられました。花言葉は「ためらい」。少しずつ花を咲かせることにちなんでいます。
春に美しい花を咲かせたボタンの子房が割れ、中から黒光りした種子が顔を覗かせています。
今年は薬草園開園10周年です。これを記念して、5月には「薬草に親しむ会」を開催し、大変好評をいただきました。10月には次のとおり、記念式典と講演会を開催いたします。皆様、お誘い合わせのうえぜひお越し下さい。
・とき 10月28日(土)14時
・ところ まちの駅 旭座
・式次第 1)開会
2)公立小浜病院組合 組合長挨拶
3)感謝状贈呈
・記念講演
① 現代医療における漢方薬の役割 講師 武長 秀樹氏
② 上田三平著「日本薬園史」を巡って 講師 大橋 正博氏



エビスグサの花


トピックス9月の開花情報
9月の開花情報 (東玄関の奥から)
① ミシマイコ(日本特産の薬用種、黄色小花を次々に咲かせる、絶滅危惧種)
② ムクゲ(白花と紫桃色花の2種類、一日花、樹皮を薬用とする)
③ カワラナデシコ(秋の七草の一つ、野生種はピンクの花)
④ ノゲイトウ(葉が紫紅色でよく目立つ、紅白2段の穂状花を次々に出す)
⑤ ケイトウ(鶏冠のような花形で花壇の花、中川淳庵が薬品会に出品した)
⑥ エビスグサ(黄色の蝶形花、果実は弓上に曲がる、種子を“ハブ茶”に利用)
⑦ ホンカンゾウ(朱紅色の美花 若い蕾が中華食材の“金針菜”)
⑧ キキョウ(秋の七草で「朝顔の花」として多くの歌に詠まれているが、絶滅危惧種)
⑨ オミナエシ(秋の七草の一つで黄色の花、根に特有の臭い 多数の黄色い小花)
⑩ フジバカマ(万葉期からの芳香材、匂い袋に入れて光源氏も愛用か? 秋の七草の一つで、絶滅危惧種) など
トピックス2023年8月(葉月)の情報
緑蔭に 染まるばかりに 歩くなり
星野 立子
熱風が身体にまつわりつくような日が続いています。薬草園では、暑い夏にふさわしく大きく枝を張るシンボルツリー・ヒポクラテスの緑陰と、黄色の小花を茎頂につけたオミナエシ(女郎花)が、見事なコントラストを演出しています。ハトムギの実が大きく育ち、ケィトウも赤い炎を彷彿とさせるように、炎天下で咲き始めています。
葉月の風物詩といえば、京都では「五山の送り火」。小浜の海辺の集落では、伝統行事「精霊流し」が行われます。お盆で迎えたご先祖の霊を船に乗せ、それぞれに思いを馳せながら、再び西方浄土へ送り出す大切な行事です。
地域の人々の熱い信仰心と強い絆を感じます。精霊船を見届けると、厳しく暑い夏の終わりもすぐそこ。
薬草園も移りゆく季節に合わせて表情を変えていきます。連日の猛暑でつかれた身体や、気持ちをリセットしたいと感じた時にはぜひ訪れてみて下さい。緑陰に染まる気分で、不思議と心が和みます。


オミナエシ



トピックス8月の開花情報
8月の開花情報 (東玄関の奥から)
① 紫バレンギク(キクに似た紫紅色の大輪、乾燥花向き、火消しの“まとい”に似た花形)
② トウキの結実(レース様の白花が次々に咲く、葉には特有の香り、根を婦人薬に利用)
③ ムクゲ(白花と紫桃色花の2種類、一日花、樹皮を薬用とする、韓国の国花)
④ サボンソウ(白花と紅桃色の2種類、根に泡立つ成分がある、シャボンの語源)
⑤ カワラナデシコ(秋の七草の一つ、野生種はピンクの花)
⑥ ウイキョウの果実(黄色小花、ハーブ名:フェンネル、未熟果を噛むと爽やかな甘みがある)
⑦ ケイトウ(鶏冠のような花形で花壇の花、黄色または赤色、中川淳庵が薬品会に出展した)
⑧ セリ(春の七草の一つ、白の小花を頂生する水生植物、)
⑨ ツリガネニンジン(薄青色の鐘状花を数段に咲かせる、新芽は山菜として美味)
⑩ エビスグサ(黄色の蝶形花、果実は弓上に曲がる、種子を“ハブ茶”に利用)
⑪ 西洋ヤマハッカ(蜜源植物として有名、白みの小花で、ハーブ名:レモンバーム)
⑫ ハナハッカ(ハーブ名:オレガノは元気を取り戻す香り、淡紅色の穂状花)
⑬ ハトムギ(果実が茶材となる、目立たない黄緑色の花、肌荒れ・イボ取りの妙薬)
⑭ オミナエシが満開(秋の七草の一つで黄色の花、根に醤油が腐ったような特有の臭い) など
トピックス2023年7月(文月)の情報
一点の偽りもなく青田あり
山口誓子
輝きを増す夏の太陽に映えて青田が一面に広がるように、青々とした薬草たち
の力強い生命力が溢れ出しています。
今年も早いもので半年が過ぎました。陰暦の6月末(新暦では6月から8月初
旬)にかけて、全国各地の神社で「夏(な)越(ご)しの祓い」という伝統神事が行われます。
茅で作られた大きな輪(茅(ち)の輪)をくぐって、半年間の罪や穢れを祓い残り半年
の無病息災を祈願し、邪心を和ませます。茅の輪の起源は、奈良時代の『備後国
風土記』にある蘇民将来(そみんしょうらい)の逸話にあります。
小浜でも南川の河口近くの六月祓(みなつきはらい)神社(じんじゃ)(氏子津島・多賀区)で、慶長年間から
始まりました。神社が鎮座するこの地は、古来から、川で身をそそぐ禊ぎ祓い
が行われていたことから、「かわそさん」として多くの人に親しまれています。
新型コロナウイルスの感染拡大もようやく落ち着きをみせていますが、今年も7
月22日(土)・23日(日)に茅の輪が設置されます。
いよいよ梅雨が明け湧き上がる入道雲、引き込まれるような青い空が広がりま
す。
7月2日は、中川淳庵先生が天明6年(1786)に亡くなられて、237年目の祥
月命日に当たります。230年余の時空を超えて淳庵先生顕彰薬草園へ、皆様を誘
います。







トピックス7月の開花情報
7月の開花情報 (東玄関の奥から)
① 紫バレンギク(紫紅色の大輪、火消しの“まとい”に似た花形、乾燥花向き、免疫活性サプリの原料)
② トウキ(レース様の白花が次々と咲く、葉には特有の香り、根が婦人薬)
③ ムクゲ(白花と紫桃色花の2品種、一日花だが開花期間が長い、樹皮が水虫薬)
④ ローマカミツレ(可愛い白花が次々に咲く、黄色のドーム部にリンゴの香り、茶材)
⑤ サボンソウ(白花と紅桃色の2種類、根に泡立つ成分があり、洗剤としてシャボンの語源)
⑥ ハマボウフウ(砂浜に咲く白花、褐色の種子をつける、新芽が汁の具材、絶滅危惧種)
⑦ ウイキョウ(黄色の小花、種子はハーブ名:フェンネル、香辛料・風邪薬、未熟果実はやや甘みあり)
⑧ ウツボグサ(青紫の穂花で、直ぐに茶褐色となる⇒夏枯草(カゴソウ) 、利尿効果大で痩身ハーブとして有名)
⑨ サジオモダカ(水生植物、白色の小花が次々に毎日咲く、一日花、根茎に強い利尿作用あり)
⑩ オニユリ(橙黄色の花、秋に肥厚する鱗茎が茶碗蒸しの具材)
⑪ ハナハッカ(ハーブ名:オレガノは貴方の元気を取り戻すための香り、淡紅色の穂状花)
⑫ ハトムギ(果実が茶材となる、目立たない黄緑色の花、肌荒れに美肌効果あり)
⑬ 西洋ノコギリソウ(赤花と白花があり、葉がノコギリ状)
⑭ オミナエシ(黄色の花、秋の七草の一つ、根に特有の臭い)
⑮ ラベンダー(薄青色の穂状花、花と茎葉に特有の精油を含む、手指の消毒用アルコールに投入) など
トピックス田んぼの雑草に強い利尿作用;サジオモダカの根茎
日本人の苗字(姓)には植物名から引用されているものが多く、例えば「沢瀉」と書いて「オモダカさん」と呼ばれています。その家紋(図①、②)として有名なところでは、5月18日(木)に一家心中(?)が報じられた歌舞伎の四代目市川猿之助さんの屋号が「沢瀉(オモダカ)屋」ですね。一方、同じ字を書く生薬の「沢瀉(タクシャ)」(写真①)はサジオモダカ(Alisma plantago-aquatica)の根茎部を調製・乾燥したもので、中国の古書『神農本草経』の上品(ポン)に収載されています。”沢水の傾瀉”すなわち水を注ぎ出す効果のあることから名付けられたもので、体内に停滞する不良の水分を排出・調整することによって、水に起因するいろいろの障害を改善する効果を持っています。漢方では口渇を止め、尿の出を良くし、目眩を治す効果があるとされて、「当帰芍薬散」、「八味丸」など重要な処方に配合され、水腫、腎炎、下痢、胃アトニーなどに幅広く用いられています。
ちなみに、マウスに低蛋白質・高脂肪の食餌を与え続けると、外観が変化する前に肝臓に異常が現れます。すなわち、正常な肝臓はピンク色ですが、栄養不良の場合は鮮明度が失われ黄味がかった乳白色になります。これは過剰の脂肪が蓄積したためで、このような病態動物を人工的に作って薬物の予防あるいは治療効果を調査します。その結果、漢方薬を与えると脂肪肝が予防され、特に沢瀉が強い作用を示すことが判明しました。成分として脂肪肝予防活性物質としてアリソールが見出され、血中コレステロールの低下、利尿作用なども認められています。
サジオモダカは日本各地の湿地に生えるオモダカ科の多年草で、夏になると長い花茎を出して小枝の先に小さな白花を開きます。花は初秋まで次々に咲き続けます(写真②)が、いずれも“一日花”です。和名は、顔面に似た形の葉が匙状になっており(写真③)、かつ長い柄の上に着いていることから ”匙面高”の意です。
沢瀉の国内生産が衰退した原因は単に価格の問題だけでなく、製品の形状にも問題がありました。すなわち、日本で普通に栽培すると花茎の基部が残って根茎が不定形となり、生薬としては不適合品となります。本種の花芽は短日・低温条件で誘起されることから、それらを回避する何らかの方策によって輸入品のようなほぼ球形の根茎を生産することは可能と思われますが、残念ながら未だ的確な栽培法が確立されていません。

沢瀉模様の家紋一覧(ネット画像)

歌舞伎役者・市川家の家紋(ネット画像)



トピックス2023年6月(水無月)の情報
水無月や草植ゑふやす庭造り
長谷川かな女
しとしとと、雨の降り続く季節がやって来ました。
雨降りて麗し薬草園。雨の恵みに優しく潤い、新緑から深緑へ色合い豊かな薬草
たちが、いつもと違った表情を見せています。
何となく憂鬱な気分で家に籠もりがちな日には、ぜひ薬草園へ足を運んでみて
下さい。この時季だけの景色に出会え、梅雨の蒸し暑さも吹き飛び、気持ちも晴
れることでしょう。
去る5月27日には、薬草園開園10周年を記念して現地見学会を開催しまし
た。お陰様で天候にも恵まれ、多くの方の参加を頂き盛況のうちに終えることが
出来ました。10月には、第二段として講演会などを予定しています。
これからも、薬草園が患者さんや市民の皆様の心の癒しとなるよう、さらなる精
進を重ねて参ります。ご理解ご協力をよろしくお願い致します。





トピックス6月の開花情報
6月の開花情報 (東玄関の奥から)
① ドクダミ(全草に特有の香り、十字形の白花、茶材としての収穫期)
② キンセンカ(盃状の黄金色、開花期が長いのが特徴)
③ ノウゼンハレン(黄色・樺色の花と葉が食べられる、貝割れダイコンのような辛味)
④ トウキ(レース様の白花、葉には特有の香り、根が薬用)
⑤ カミツレ(白花の二年草、中央の黄色ドームに精油を溜める、花を茶材とする)
⑥ ローマカミツレ(宿根草、黄色のドーム部にリンゴの香り、白色は萼片)
⑦ カワラナデシコ(秋の七草の一つ、野生種はピンクの花)
⑧ カラスビシャク(畑の雑草で、仏炎苞という特異な形状の花、多くの地方名を持つ、嘔吐止め)
⑨ カレープランツ(全草にカレー臭、花は黄褐色、乾燥してポプリに利用)
⑩ ウツボグサ(青紫色の穂状花、開花後にすぐ褐変、花穂が茶材)
⑪ クチナシ(白花で、甘い芳香を放つ)
⑫ コエンドロ(レース状の淡桃白色小花、花と果実には芳香あり、葉はカメムシ臭い)
⑬ アマチャ(アジサイの仲間で、滋賀県朽木辺りのスギ林下に散見)
⑭ スズカケノキ(枝先に修験者の鈴懸の衣に似た花房を着ける=雌花)
⑮ クララ(草原に自生、黄白色花、枝葉はかつて蛆虫殺しで便所に投入)
⑯ ジャコウソウ(ハーブ名:タイム、茎葉に触れると特有の芳香)
⑰ ベニバナ(咲き始めは黄色で、後に紅色に変化する、婦人用の漢方薬)
⑱ ウスベニアオイ(ビロード色の花、夏を代表する庭の花、茶材)
⑲ ルリジシャ(瑠璃色の小花、花はお皿の飾りで、食べられる、キュウリのような味がする)
⑳ ラベンダー(薄青色の穂状花、花と茎葉に特有の精油を含む) など
トピックス薬草園の開園10周年記念樹は“バナナの木”
薬草園はこの5月で開園10周年を迎えましたが、その記念樹としてモクレン科のカラタネオガタマノキ(Magnolia figo 英名:banana tree 別名:トウオガタマ)を植栽しました(写真①)。50年生の原木(写真②)から“取り木”(写真③)という手法で苗を育成しました。本種は高さ3mほどに成長する中国東南部原産の常緑小高木で、鑑賞樹として庭木用に導入されました。花に強いバナナの香りがあります。朝陽が上って気温が20℃以上になるとよく匂います。外側の茶褐色の萼片が落ちた蕾(写真④)をシャツの胸ポケットに入れておくと、体温で温められてバナナの甘い香りでむせ返るほどになります。主に5月連休明けから6月に咲きますが、8月中旬に強剪定するとその後に伸びた枝の葉腋に花芽を着けて、10月頃にも咲く“二季咲き性”という特性を有しています。花は写真⑤のように平開しない“含み咲き”という控えめで清楚な印象を受けるので、中国では「含笑花」と呼んで頭髪を飾る風習があるそうです。また「カラタネ」とは中国から渡来した意の“唐種”、あるいは稀にしか結実しないことに由来する“空種”という二つの説があります。ただ、実生苗を育ててみると、結実する割合が格段に増大し、同時に葉が薄くなってやや波打つようになり、さらには春先だけの一季咲きとなってしまいます。
基本種のオガタマノキ(招霊木 M. compressa)は、房総半島以南の温暖な地方の山野に自生する常緑高木で、古くは神社の境内に植えられていました。花は白色で弁縁が紫色を帯び、匂いは弱いです(写真⑥)。和名は招霊(おきたま)の転化したもので、その枝を神前に供えて「神霊を招祈奉るから」とされています。神代の昔、天宇受売命(アメノウズメノミコト)が天岩戸の前で「神楽」を舞った時にこの枝を持っていたとされ、また鈴のような果実(毬果(キュウカ))が「神楽鈴」の起源とされています。すなわち、元来神前に奉納する”玉串”に用いられたのは本種の枝であったものが、南方からその風習が伝来した際、それに似て全国に存在するサカキが代用されるようになってしまいました。したがって、今では神社の古さを現すシンボル・ツリーとして、江戸期以前に設置された各地の格式高い神社にだけ銘木が残されているわけです。小浜では神宮寺の本殿裏側(写真⑦)や近江八幡市・日牟禮八幡宮の本殿右側などにあります。






