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お知らせ(毎月、更新中です)

トピックス2022年5月(卯月)の情報

    目には青葉 山ほととぎす 初鰹
                      山口素堂
爽やかな薫風が頬に心地よい季節となりました。
初夏の陽光が燦々と降り注ぎ、新緑まばゆい薬草園はいま最も美しい時期を迎えています。青空のもと、生命力溢れる薬草たちの息遣いを感じ取って下さい。心躍る新しい魅力に気づけるかも知れません。

平成25年(2013)5月に開園した薬草園は、今年9周年を迎えました。シンボルツリーであるヒポクラテスの木(スズカケの木)の、見事な枝振りをはじめ、110種類におよぶ薬草・ハーブが四季折々に華やかに彩り、多くの患者さんと市民の皆さんの憩いの場となっています。

来年の10周年には、コロナ禍を心配せずに「薬草に親しむ会」などの記念イベントが出来ることを願っています。

新緑まばゆい薬草園
アマの開花
シャクヤクの開花

トピックス5月の開花情報

5月の開花情報  (東玄関の奥から)

① 山陰カンアオイ(株元に暗茶褐色の花を開く、新葉はギフチョウの餌料)
② アマドコロ(葉に白斑入り、葉裏に鐘形の白花をつける)
③ カミツレ(白花、花後に盛り上がる黄色の花托を摘まむとリンゴの香り)
④ アマ(薄青色の花は日の出とともに開き、午後には萎れる一日花、種子から亜麻仁油を搾る
⑤ 西洋ワサビ(白色小花、根茎の薄切りがローストビーフの必需品)
⑥ カラスビシャク(緑色の仏炎苞という特異な形の花、庭や畑の雑草、地下に小球根あり)
⑦ 八重咲きドクダミ(大鉢植え、八重白色の小花、茎葉は乾燥して茶材)
⑧ シャクヤク(奈良に伝わる薬用種の「梵天」、淡桃を帯びる白色花、根も白色)
⑨ ルリヂシャ(青色(マドンナブルー)または白色の星状花、キュウリのような風味で生食できる)
⑩ 実成りのマグワ(中国から渡来した種で、特に実成りが良い選抜個体、暗紫色に熟する) など

トピックスショウブは“尚武”に通じる厄除け

何事もタイミングが大切で一日遅れても意味がないという例に「六日の菖蒲、十日の菊」という諺があります。菖蒲は端午の節句(旧暦の5月5日)のもの、菊は重陽の節句(同9月9日)のものということの強調ですが、とりわけ前者は”薬”と縁が深いものです。すなわち、古い時代の宮中行事で、薬用とするために鹿の袋角を採る狩猟を二隊で競いました。この行事は後に流鏑馬(ヤブサメ)につながり、今もって古い神社などの儀式として残されていますが、そのことに端を発して5月5日を薬草採集の日としたことから、その行事を「薬猟(狩) (クスリガリ)」と呼ぶようになりました。一方、船の進水式などで用いられる「くす玉」は、元来「薬玉」が語源で、これは宮中で邪気を祓う香薬を入れた玉に、ショウブやヨモギをあしらい、東西の柱に架けたことに由来するものです。そもそも、端午の節句にヨモギとショウブを軒下にぶら下げる風習は、古く中国から伝わったもので、それぞれ特異の芳香があって「神を招き、悪霊を祓う力がある」と考えられてきました。またショウブの葉は長剣に似ており“尚武・勝負”に通じるからともされています。元来は『女の家』といって、5月田植えの前に邪気を払う『忌みこもり』の行事として、田植え女がショウブとヨモギで屋根葺きした小屋にこもる習慣があり、それが変化した形と考えられます。

ショウブ(Acorus calamus)は暖温帯の湿地に広く野生する多年草で、全草に芳香があり、根茎は太く、葉は長剣状で、長さ50~90cm、中央にははっきりとした中肋があります。5~6月、葉の中ほどに円柱状の肉穂花序を出して多数の淡黄緑色の花を密生します(写真参照)。これまではサトイモ科に分類されていましたが、最近の遺伝子解析によってショウブ科(新設)に属しています。

その根茎を乾燥したものが「菖蒲根」で、鎮痛、鎮静作用などがあり、芳香性健胃薬として内服されています。また神経の緊張をほぐし、血行を良くして身体を温める効果があるので、「浴湯料」としても多用されています。欧米でも”Rizoma Calami”の名で広く薬用にされているようです。なお、ショウブと云えば水辺に咲くハナショウブ(Iris ensata var. ensata)を思い浮かべる方も多いと思いますが、これはアヤメ科の植物でまったくの別物ですね。

一方、ヨモギ(Artemisia iprinceps)は各地の山野で普通に見られるキク科の多年草です。地下に根茎が横走し、さらに匍匐茎を出して伸び、各所から芽を出して拡がることから「佳萌草(ヨモギ)=佳く萌える草」と呼ばれ、また一説では良く燃えることから「良燃草(ヨモギ)」ともされています。
 葉の乾燥したものを「艾葉(ガイヨウ)」と称し、主に月経過多・不正出血、妊娠中の腹痛、膀胱炎、痔の出血、血尿などに利用されています。また浴用剤として風呂に入れ、腰痛や冷え症、痔の治療に用いられています。さらに、野外でのちょっとした外傷には生の葉を揉んだ汁が有効です。傷口が少しだけ「ピリッ」としますが !! (なお、ヨモギについては別の機会に詳しく解説する予定です)

ショウブ・ヨモギの軒飾り(ネット画像)
ショウブの花序(黄色の粒々が花)(ネット画像)

ニュースヒポクラテスの木 福井大学医学部へ

中川淳庵顕彰薬草園のヒポクラテスの木(コス島由来の「1995年株」)が、4月28日に福井大学医学部構内に植樹されました。渡辺アドバイザーにより‘“取り木”の手法(2021年4月のお知らせ欄トピックス 「取り木」でクローン苗づくり 参照)で増殖された個体です。
写真左端の添え木の下部、60センチほどの苗木です。右の2本(大阪公立大学植物園より)とともに、3本同時に植樹されました。「医聖を慕う者の志の成就を願う」旨の碑文が添えられています。(写真:左から2人目、内木宏延副学長、3人目、藤枝重治医学部長)

トピックス4月(卯月)の情報

     窓あけて窓いっぱいの春
                    山頭火

待ち焦がれた春。山頭火も感嘆したように、窓の外いっぱいに春本番の到来です。ぽかぽか陽気に誘われ草花たちがいっせいに芽吹き、春が彩る薬草園は装いを新たにしています。

コロナ禍で家に閉じこもりがちな中、麗らかな陽差しのもと華やぐ春の風情に触れてみてはいかがですか。

身も心も解き放たれ、夢見心地の境地へあなたを誘うことでしょう

青空に映える病院の桜
鮮やかなレンギョウと親子
黄色い花が鮮やかなキバナイカリソウ
清楚なアミガサユリ
開花が待ち遠しいシャクヤク

トピックス4月の開花情報

4月の開花情報  (東玄関の奥から)
① シマテンナンショウ(サトイモ科特有の仏炎苞、緑白色の素心花)
② フタバアオイ(葉陰にひっそりと咲く、暗茶褐色、葵祭の頭挿し花に利用)
③ 黄花イカリソウ(山草として人気、船の錨に似た花形で淡黄色、唯一の薬用種)
④ アミガサユリ(茶花向き、虚無僧の編み笠に似た花形で、内側が淡紅色の網目模様)
⑤ キンセンカ(金色の盃状の花形、花期が長いので、学名は1ヵ月を指す言葉)
⑥ サンシュユ(早春の花材、淡黄色、秋に赤熟する果肉に強壮効果あり)
⑦ レンギョウ(詩人・高村光太郎が愛した、早春の花、黄色花)
⑧ クサボケ(日本特産種、朱赤色の花、秋に黄熟する果実酒が美味しい)
⑨ 天台ウヤク(秦時代の徐福伝説で有名、黄褐色、雌雄異株)  など

トピックスオウレン種子の催芽処理に成功

オウレン類は雪を割るような形で早春に開花して、種子は5月の連休前後に黄熟しますが、その時点では胚が未熟ですから、そのまま播いてもまったく発芽しません。また種子を内包する袋の端が綻びた状態となっており、これは原始的な形質とされるためオウレン属植物は植物系統樹の土台部分に位置付けされています。

オウレンの種子を追熟させるには恒温・恒湿の特殊な条件下で半年間ほど貯蔵する必要があり、その条件をクリアーするのはなかなかで、きわめて至難の技法となっています。

そこで、昨年5月15日に採取したタネを、市販の育苗箱に赤玉土の小粒を入れ、その上を腐葉土で薄く被ってタネを中央部分に置き、その上に厚さ5㎝の腐葉土と3㎝の培養土を上乗せして、サンシュユの葉陰に設置しました。3月11日に上乗せした培養土と腐葉土を除去しておいたところ、4月5日に無事に発芽しているのが確認され。さらに今後とも追々発芽してくると思われますので、今回の催芽処理は大成功です。これで、薬草園におけるオウレンの継代栽培が可能になりました。

発芽したオウレン種子
開花後に伸長した果柄と種子を内包する袋

トピックス3月(弥生)の情報

  万物は日に新た

若狭路に春を呼ぶ千二百年余の歴史を誇る伝統行事、奈良東大寺二月堂(若狭井)へのお水送りが、3月2日小浜市において厳かに執り行われました。

暦のうえでは、冬籠もりをしていた虫や草花が、やわらかな陽光に誘われ顔を出す「啓蟄」です。

薬草園では、厳しい冬を乗り越えたセリバオウレンが、他の薬草よりひと足早く可憐な白い花を咲かせています。

万物は日に新た。冬から春へ季節の移ろいを教えてくれています。

(小浜市お水送りパンフレットから)
春の訪れを告げるセリバオウレンの可憐な花

トピックス桃の節句にまつわる植物

 3月3日は桃の節句。まだ野外の開花には早く、枝を加温開花させて出荷されます。旧暦なら他の花も咲くのに、モモを特別扱いするのは中国の陰陽思想が影響したものと見られます。モモの花は陽で、陰を祓う力があり、中国では鬼がモモを嫌うとされていました。古代中国において辰3月上巳(3月の第1巳の日)に水辺でお祓いをして、酒を飲み詩を歌う習俗があり、それが伝わって日本でも女の子を悪鬼や邪悪から守る願いで桃を飾ったものかもしれません。平安時代には日本独自の民俗が付け加えられ、人形(ヒトガタ)を川に流して厄払いすることが行われるようになりました。この人形が工芸品として発達し、雛人形となったのですが、雛祭りが正式に3月3日の行事とされたのは江戸時代からです。

 『古事記』の話。国造りを終えたイザナギは、亡くなった奥さんのイザナミに会うため黄泉(ヨミ)の国へ行きますが、8種の雷を体にまとった奥さんの姿を見て逃げ出しました。その後を死者の国の忌まわしい女達が追いかけてきたので、イザナギは髪飾りを投げたところ、これがノブドウになって女達が食べ出した。しかし、さらに追いかけてくるので、今度は櫛を投げるとタケノコになり、それを女達が食べている間にようやくあの世とこの世の境・比良坂にたどり着いた。そこの登り口に実っていたモモの実を3個投げると、女達は皆逃げていきました。そこで、イザナギはモモの実に「私を助けてくれたように、今後人々が苦しんでいる時は助けなさい」といって、“オホカムヅミノミコト”という神様の名前を与えたという。モモの実に入って流れてきたモモ太郎は、案外このモモの神様の子孫なのかもしれませんね。この古い民族信仰は今でも雛祭りの桃酒や桃花湯などとして残っています。

薬草園には植栽されていませんが、モモ(Amygdalus persica)はバラ科の落葉小高木で、中国・黄河上流域の甘粛、陜西(センセイ)地方の高原地帯が原産地です。日本には縄文以前に渡来して古くから栽培されていましたが、それは頭の尖った天津桃と呼ばれる北支系のもので、果実が小さく果肉の堅いものでした。近代のモモは明治初期に導入された中支系の品種「上海水蜜桃」や天津種などに改良を加え、また欧州種を交配して育成された品種で、頭は平らです。

 硬化した核の中にある種子が「桃仁(トウニン)」で、消炎、鎮痛、緩下を目的に桂枝伏苓(ケイシブクリョウ)丸などの婦人薬に配合されています。また抗炎症、抗凝血、血小板凝集抑制、駆瘀血作用などがあり、下腹部の痛み、腹部の血液停滞、月経不順など主に下半身の病を治すお薬です。さらに、シロバナモモの開花直前の蕾を採取して乾燥したものが「白桃花」で、利尿、緩下薬として利用されます。民間では葉を「桃葉」と称して、腹痛や下痢に服用したり、土用の一日を桃葉湯にする習慣があってアセモ取りの妙薬でもありました。

ノブドウの果実(食べられない)
モモの開花
桃仁
伝統的な折り雛(作:渡辺)

トピックス2月(如月)の情報

     木の根あく

立春を迎え、暦の上では春ですが、底冷えするほどまだまだ寒い2月。
この寒さがあるからこそ、春を待ちわびる気持が一層高まります。

薬草園では、雪が溶け木の根があきボタンが芽吹き、春はもうすぐそこまで来ています。

薬草園を訪ね小さな春を見つけて下さい。日々の慌ただしさの中に、ほっと息つくひとときがきっとそこにあります。

春を待つ薬草園
ボタンの芽吹き

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