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トピックス5月の開花情報
5月の開花情報 (東玄関の奥から)
① 行者ニンニク(亜高山の水湿地に群生、白色小花で株全体にニンニク臭、修験者の強壮食材)
② キンセンカ(金色の盃状の花形、花期が長いので、学名は1ヵ月を指す言葉)
③ コエンドロ(淡桃白色の小花、花と果実には芳香、葉はカメムシ臭い)
④ 葡萄サンショウ(トゲナシの選抜品種で、果実がブドウ様の房成り、果皮が薬用)
⑤ カミツレ(白花、花後に盛り上がるドーム状の花托を摘まむとリンゴの香り)
⑥ 西洋ワサビ(白色小花、根茎の薄切りをローストビーフに添える)
⑦ カラタネオガタマ(開園10周年の記念樹、春と秋の二季咲き性、花にはバナナの強い香り)
⑧ カラスビシャク(緑色の仏炎苞という特異な形の花、庭や畑の雑草)
⑨ アマの果実(薄青色の花は日の出とともに開き、午後には萎れる一日花、種子から亜麻仁油を搾る)
⑩ 朝鮮アザミ(ハーブ名:アーティチョーク、青紫色の花、花托が食用)
⑪ 薬用サルビア(薄青色の花、葉をソーセージに利用、ハーブ名:セージ)
⑫ シャクヤク(奈良に伝わる薬用種の「梵天」、淡桃を帯びる白色花、根も白色)
⑬ ルリヂシャ(青色(マドンナブルー)の星状花、キュウリのような風味で生食できる)
⑭ 温州ミカン(ミカン科の常緑低木で、日本の風土に適して最も多く栽培される柑橘)
⑮ ウスベニアオイ(暗紫紅色の花が初夏~晩秋まで咲き続ける、乾燥花が茶材)
⑯ イヌバラ(桃色花は夜間に匂う、橙赤色の果実が“ローズヒップ”、ジャムや茶材に利用)
など
トピックス野鳥からプレゼントされたアケビの花
薬草園の開設から数年が経った頃、サンシュユの近くでアケビが生えているのに気付きました。野鳥が落とした糞から芽生えたに違いありません。以来、大きく育つのを見守ってきましたが、10周年を迎えるのに合わせたように花を咲かせるような株に育ちました。
アケビ(Akebia quinata)は、本州・四国・九州などに広く分布し、山野に普通に見られる落葉性のつる植物です。葉は5枚の小葉からなる掌状複葉で互生します。4~5月頃、葉腋から総状花序が伸びて垂れ下がり、無花弁の単性花を開きます(写真①)。もとの方に1~3個の細長い柄を持つ雌花を、先の方には短い柄を持つ雄花を多数つけます。雌花は紅紫色で径約3cm、雄花は淡紫色で径約1.5cm。果実は長楕円形で(写真②)、熟すると紫色を帯びて縦に裂開するのが特徴です(写真③)。和名は”開け実”に由来します。中には多くの黒色種子があり、それを包む白い半透明の果肉には甘味と苦味があり、よく熟して裂開したら食べられます。子どもの頃、口に含んだタネを吹き飛ばしてよく遊んだものです。食糧難の時代、団塊世代の子供たちにとっては貴重な“甘いおやつ”的な存在だったのです。一方、大人にとっては厚い果皮の苦味が好まれます。中に挽肉、茸、味噌などを詰めて“揚げ物”にする(写真④)と山形県の郷土料理で、ほろ苦い野趣豊かな”酒の肴”となります。「大人の味」というやつですね。若い蔓先も茹でると奇麗な薄緑色となり、鰹節をのせて醤油で食べると美味しい。また果実に同量の砂糖を入れて1週間置くと、粘稠で甘い酵母が採れます。布でろ過してパンやケーキを作るのに利用できます。
アケビのつるを乾燥したものが生薬の「木通(モクツウ)」で、漢方では水の巡りをよくして体内に滞っている余分な水分や熱感を排尿することによって外に出す働きがあります。また乳の出が良くなる効果もあり、尿量減少、関節リウマチ、神経痛、膀胱炎や浮腫などの症状に用いられています。一方、野外において木の枝などで“突き目”をした時、アケビの蔓を10cmほど切り、一方の端から息を吹き込んで出てきた汁をつけると痛みが和らぎます。
つるは灰褐色で長く伸びて他の植物などに“左巻き”で絡みつきます。つるは強靱で、籠細工などに利用されています。
オランダのライデン大学にはシーボルトが日本から持ち帰ったアケビが今でも大切に保存栽培されていて、その花の模式図が大学の紋章に採用されています。私が現役の頃、その挿し木苗を譲り受けて栽培したところ、それはアケビそのものではなくてミツバアケビ(A. trifoliata)(写真⑤)との雑種(=ゴヨウアケビ)であることが判明しました。長崎近辺ではなく、江戸までの道中で採集したことによる同定ミスが発生したようです。数百年も経って間違いを指摘されたシーボルトさんもあの世で眼を白黒させているかもしれませんね !!

アケビの花(2010.4.28.撮影)

アケビの果実(2010.10.05.撮影)

裂開した果実(2010.10.20.撮影)

山形の郷土料理“肉詰め”

ミツバアケビの開花(2005.4.17.撮影)
トピックス2025年4月(卯月)の情報
初桜折しもけふは能(よき)日(ひ)なり
松尾芭蕉
やわらかな陽差しのもと薄紅色の花びらが風に揺れ、待ちに待った桜の季節の到来です。
薬草園では、長く厳しい冬に耐えた草木が競い合うように、個性豊かに芽吹き始めています。一足早く小ぶりで黄金色の可憐な花を付けたサンシュユやレンギョウのまばゆいばかりの色彩、蕾みを開いたクサボケが四季の移ろいを教えてくれています。
春の息吹に包まれた薬草園を訪ねて、心ときめくひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。




トピックス4月の開花情報
4月の開花情報 (東玄関の奥から)
① キンセンカの種子形成(タネを内包する袋が穴空きとなっている、5月初旬に成熟)
② エンゴサク(塊茎を有する“春植物”、5年ぶりの開花、塊茎が胃粘膜の修復に有効)
③ サンシュユ(早春の花材で淡黄色花、秋に赤熟する果肉には強壮効果あり)
④ コエンドロ(淡桃白色の小花、花と果実には芳香、葉(パクチー)はカメムシ臭、タネがカレー粉の原料)
⑤ ボタン(生粋の薬草園育ちで、発芽後10年目の初花、芯を除いた根皮が婦人薬)
⑥ アマ(清楚な青花で一日花、茎の皮が繊維素材、タネから搾る油が“亜麻仁油”)
⑦ カラタネオガタマ(開園10周年の記念樹、春と秋の二季咲き性、花にはバナナの強い香り)
⑧ 薬用サルビア(青紫色の花、葉がソーセージの具材、ハーブ名“セージ”)
⑨ レンギョウ(詩人・高村光太郎が愛した早春の花、黄色花、果実「連翹」が薬用)
⑩ クサボケ(日本の特産種、朱赤色の花、秋に黄熟する果実酒が美味しい)
⑪ 天台ウヤク(秦時代の徐福伝説で有名、雌雄異株、塊根に健胃、鎮痛・鎮痙作用)
⑫ ルリヂシャ(青色(マドンナブルー)の星状花、キュウリのような風味で生食できる)
など
トピックスタンポポ・コーヒーはいかがですか?
春の温かい陽気に誘われたように草むらではタンポポの鮮やかな黄色の花が目立ちます。日本各地には多くの品種が分布していますが、若狭地方を含む近畿以西から北九州で目にするのは主に関西タンポポ(Taraxacum japonicum)です(写真①)。3~5月頃に開く黄色の頭花は直径3cmほどで、普通、朝6~7時に開花し、夕方閉じます。またこの花は天候にも極めて敏感で、雨が近づいたり空が曇ったりしただけでも閉じる性質があります。葉や花茎を切ると、白色の乳液が出ます。果実は紡錘形で白色の長い冠毛があり、パラシュート形の瘦果(ソウカ)が風によって運ばれます。
日本列島は、アラスカ、スカンディナビア、アイスランド、ヒマラヤとともに多種のタンポポを産する5大地域の一つとなっています。花の外側にある総苞片の形で在来種と帰化種を判別します。すなわち、白花、黄花合わせて20種ほどの在来種は、いずれの総苞も反り返らないのが特徴です(写真②)。在来種の大半は別の株の花粉を虫に運んでもらわないと結実しない“有性生殖をする二倍体種”で、種子は夏の高温によって発芽が抑制され、一定期間休眠した後、自然条件下では9月下旬~10月上旬に発芽する性質を有しています。
一方、花を裏返して基部の総苞がくるりと反り返っていれば西洋タンポポ(T. officinale)か、小型で実が赤いアカミタンポポ(T. laevigatum)などの帰化種です(写真②)。これらの帰化種では親植物の細胞が減数分裂も受精も経ずにそのまま遺伝的に同一な「クローン」種子になります。つまり、『無融合生殖』によって無性的に種子をつくる特殊な増殖能力を持っているのです。単為生殖は植物界としては珍しい現象で、タンポポの他にドクダミ、ヒメジョオン、ニガナなどが知られる程度です。また帰化種の花期は早春から初冬の頃までと極めて長く、さらにタネも軽くて良く飛び、季節を問わず発芽して成長が速いなど裸地での生育に適した性質を多く供えているため、今では全国的に在来種を駆逐しつつあります。近年は西洋種と在来種の雑種が次々と見出されていて、全国的に在来種そのものを見出すのが極めて難しい状況となっています。
そこで、ずっと以前に食文化館の斎藤学芸員とともに提案したのが「殖え過ぎた西洋タンポポの根を食べよう」という企画でした(2015年12月01日に実施)。キリスト受難の象徴とされるほどタンポポの全草には苦味があって、健胃、利尿、解熱、消炎、催乳薬としても利用されます。細切りした根を炒めた「キンピラ」は“酒の肴”にぴったりです(写真③)。ちなみに、金平牛蒡の「きんぴら」が坂田金平の名前に由来することはほとんど知られていませんね。彼は、平安後期の武将である源頼光の四天王の一人、坂田公時(俗に金時)の子供という設定で、江戸時代に流行した『操り浄瑠璃』に出てくる、剛勇無双のスーパーヒーローです。笹がきされたゴボウの形が、彼の髪型に似ていたことから、そのように呼ばれるようになった由。なお、金平の父親・公時は実在の武士で、童謡「まさかり担いで・・・」で有名な金太郎はこの公時の幼名です。
さらに、細かく刻んだ根を焦がした「タンポポ・コーヒー」はカフェインを含まないので胃にやさしい飲み物となってお勧めですよ(写真④、⑤)。自分でも作れます。
タンポポ・コーヒーの作り方;(カフェインを含まず、鎮静・催眠作用のあるコーヒー)
① ゴボウのような根を、途中で切らないように注意して掘り起こします。
② たわしなどで泥をよく取り除き、2~3ミリに細かく刻んでよく乾燥させます。
③ 乾燥したらやや焦げ目がつく程度に炒ります。
④ 急須に一摘み入れ、熱湯を注いで2~3分置いてから飲みましょう。
⑤ ポットに入れて煮出してもいいし、少量の蜂蜜を加えても美味しくなります。
⑥ 残りは、湿気ないように容器に入れて密閉・保存します。

(2012. 4.19.比叡山坂本で撮影)




タンポポ・コーヒー
トピックス2025年3月(弥生)の情報
毎年よ 彼岸の入りに 寒いのは 正岡 子規
暑さ寒さも彼岸まで。春はSpring(伸びたり縮んだり)。暖かくなったり寒くなったりの三寒四温を繰り返しながら、心ときめく春はもうすぐそこです。
この時季、一つまた一つと枝に愛らしい黄色い彩りを添えていくサンシュユ。葉が出る前に花を咲かせます。
薬草園でも例年このような佇まいが見られますが、今年は2月下旬に寒波が襲来し、かなりの積雪があって蕾の状態です。それでも冬の間ひっそりと息をひそめていた草木が、芽吹き始めると思わず顔がほころびます。

トピックス3月の開花情報
3月の開花情報 (東玄関の奥から)
① 黄花イカリソウ(山草として人気、船の錨に似た花形で淡黄色、唯一の薬用種)
② セリバオウレン(雪を割って咲き出す白花は雄花と両性花 成長の遅い根茎が薬用)
③ キンセンカ(黄橙色で盃状の花形、花期が長い、乾燥花を肝機能の改善薬に利用)
④ アミガサユリ(茶花向き、虚無僧の編み笠に似た花形で、内側が淡紅色の網目模様)
⑤ サンシュユ(早春の花材、淡黄色、秋に赤熟する果肉に強壮効果あり)
⑥ クサボケ(日本特産種、朱赤色の花、秋に黄熟する果実の酒が美味しい)
⑦ 天台ウヤク(中国・秦時代の徐福伝説で有名、黄褐色の花、雌雄異株、肥大根を利用)
など
トピックス2025年2月(如月)の情報
梅一輪 一輪ほどの 暖かさ
服部 嵐雪
2月3日は、暦の上では「立春」。春の始まりとはいえ、まだまだ底冷えがする寒さです。
それでも、寒空からときおり降り注ぐやわらかい陽差しに誘われて、「如月の兆し春隣」の言葉が思い浮かびます。2月は別名「梅見月」とも言われ、一輪の梅のほのかに甘く淡い香りがあたりに漂います。
薬草園では、シンボルツリー・ヒポクラテスの木(プラタナス、鈴懸とも)が、すっかり葉を落として、静かに春の到来を待っています。

トピックス雪の中から顔を出し、今が見頃のザゼンソウ
極寒の中、いち早く周りの雪を溶かしてポッコリ顔を出すのがザゼンソウ(Symplocarpus foetidus)の花です(写真①)。葉を展開する前に、長さ8~20cm、幅5~15cmで紫褐色の仏炎苞(ブツエンホウ)という特殊な形状の器官に包まれた、長さ約2cmの肉穂花序をつけます。和名は、仏炎苞と中の花序を“座禅する僧の姿”に見立ててつけられたものです。その苞葉は、稀に淡紫色、緑色または白色、時には濃褐色の斑点を有する個体も存在しています。雌花の成熟期になると、雌しべは23℃ほどに発熱することが知られています(写真②)。北海道から本州の日本海側に分布し、谷間の陰湿地に生育する多年草です。滋賀県高島市今津町弘川地区にある湧水湿地の群生地は緑地環境保全地域に指定され、周辺住民によって手厚く保護・保全されています(写真③)。例年であれば2月下旬~3月中旬がちょうど見頃ですが、今年は雪が少ないので2月上旬から見ることができそうです。
周囲にはモウソウチクのほかタブやハンノキなどが混在して生えています。花は独特の形状を呈しています(写真④)が、ハエの仲間に受粉を手伝ってもらうために何とも形容しがたい腐臭を放っています。決して鼻を近づけないでください。なお、北米東岸にもアメリカ種が分布していますが、こちらは英名で“スカンク・キャベツ”と称されますから、その臭いの酷さが想像できるでしょう。各地で問題となっているシカもこの植物だけは食害しないほどですよ。一方、同じサトイモ科の植物にミズバショウ(Lysichiton camtschatcense)があります(写真⑤)が、こちらはシカによく食べられるようです。
大きな葉2~7枚を根出し、葉身は円心形で先端が尖り、基部は心臓形で長さ・幅ともに30~50cm。葉身とほぼ同じ長さの太い葉柄があります。また地下には意外に大きな根茎があって、乾燥した根茎を「日本臭菘(シュウスウ)」と称し、去痰、利尿、鎮痛、催吐薬として喘息や気管支炎などに用いられます。

(2012. 2.28.撮影)



(2012. 2.28.撮影)

(2003. 5.31.撮影)
トピックス2025年1月(睦月)の情報
寒椿小さく赤き一重なる 原 石鼎(セキテイ)
新年明けまして おめでとうございます。
昨日までの喧噪が嘘のように、凜とした空気が漂う薬草園に、新しい年の幕開けを告げる希望の光が差し込んでいます。
今年の干支は、乙巳(きのとみ)。乙は、しなやかに伸びる草木を表しており、困難があっても努力を重ねることにより物事が安定し、巳は脱皮を重ねて成長する縁起の良い年と言われています。
平成25年(2013)5月に開園して、今年13年目を迎える薬草園。先人の遺徳を顕彰し、四季折々の薬草が彩りを添え、人々が癒やされる薬草園を目指して来ました。冬景色の中に佇み、ひときわ美しい寒椿の様に、積み重ねた歴史の上に、今年も訪れる人々を魅了する憩いの空間でありたいと願っています。



