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お知らせ(毎月、更新中です)

トピックス2024年6月(水無月)の情報

   樹も草もしづかにて梅雨はじまりぬ
                        日野 草城

6月。雨のベールが薬草園を覆い、しっとりと濡れた薬草たちが色合い豊かに、いつもと違った表情へと移り変わります。
雨は天からの贈り物、恵みの雨です。
シンボルツリー(ヒポクラテスの木)が、植樹から10年が経ち幹径40㌢、樹高10㍍を超えるまでに成長しました。風通しや採光、樹形を整えるため、このほど剪定を行い、すっきりとした姿となりました。
その根元では、花弁が印象的で小ぶりな淡青色~淡紅色の花アマチャ(ユキノシタ科の低木アジサイの変種)が、彩りを添えています。
この葉を乾燥して作られるお茶は、4月のお釈迦様の誕生を祝う「花祭り(灌仏会(かんぶつえ))」に欠かせません。
初夏の訪れを感じさせる薬草園で、今この時季にしか見られない光景をぜひお楽しみ下さい。

スッキリとした姿のシンボルツリー
くちなしの花(アカネ科)
セリバオウレン(キンポウゲ科)
アマチャ(ユキノシタ科)
ウスベニアオイ(アオイ科)
ノウゼンハレン(ノウゼンハレン科)

トピックス6月の開花情報

6月の開花情報  (東玄関の奥から)
① ドクダミ(十字形の白花、茶材としての収穫期、地上部が傷付くと地下茎が芽が分岐する)
② 紫バレンギク(紫紅色の大輪、火消しの“まとい”に似た花形、開花直後からカサカサの質感)
③ キンセンカ(金色の盃状の花形、花期が長い、乾燥花を肝機能の改善薬に利用)
④ ノウゼンハレン(花がノウゼン(樺)色で、葉はハスに似る、葉と花が食用で、少し辛味あり)
⑤ トウキ(レース様の白花、葉には特有の香り、根を婦人薬に活用)
⑥ コエンドロ(淡桃白色の小花、花と果実には芳香、葉はカメムシ臭い“パクチー”)
⑦ カワラナデシコ(秋の七草の一つ、野生種はピンクの花)
⑧ カミツレ(黄色のドーム部にリンゴの香り、白色は萼片、茶材で“癒し”効果あり)
⑨ 西洋ワサビ(白色小花、根茎の薄切り“ホースラディッシュ”がローストビーフの必需品)
⑩ ベニバナ(咲き始めは黄色で、後に紅色に変化する、女性の冷え性や血色不良を改善、染料)
⑪ カレープラント(全草にカレー臭、花は黄褐色、乾燥してポプリに利用)
⑫ アマチャ(アジサイの仲間で、滋賀県朽木辺りのスギ林下に散見、葉を発酵させる甘い茶材)
⑬ 薬用サルビア(青紫色の花、葉がソーセージの具材、ハーブ名:セージ)
⑭ ジャコウソウ(ハーブ名:タイム、茎葉に触れると特有の芳香、茎葉をオイル浸けで利用)
⑮ ルリヂシャ(青色(マドンナブルー)の星状花、キュウリのような風味で生食できる)
⑯ ウスベニアオイ(ビロード色の花、夏を代表する庭の花、花の乾燥品を茶材とする)
⑰ 西洋ノコギリソウ(赤花と白花があり、葉がノコギリ状、根から出る分泌液は害虫の忌避剤)
⑱ イヌバラ(ピンク色の花は夜間に匂う、橙赤色の果実が“ローズヒップ”、ジャムや茶材に利用)
⑲ ヘンルーダ(4~5弁の黄色花、サンショウを少し甘くした特有の強い香り、枝葉を“栞”に使う) など

トピックス品種改良が盛んな日本原産のアジサイ

オランダ東インド会社の医師で、長崎出島にあったオランダ商館に滞在していたシーボルト(Philipp F. Siebold)は、丸山の遊女・其扇(ソノギ)の本名「楠本滝(通称“お滝さん”)」をアジサイの学名に付し、彼の著書『日本植物誌』で紹介しています。残念ながらすでに別の名前で発表されていたので、オタクサの学名は認められませんでしたが、彼が持ち帰った株はライデン大学のシーボルト記念植物園で今でも大事に育てられています(渡辺が現役の頃、同園の園長と数回懇談する機会があって確認しました)。恐らく当時広く愛培されていた極めて平凡的な系統で(写真①)、オランダではその土性によって青色がうまく発色しなかったためほとんど注目を集めなかったようです(同じように持ち帰られたアケビの花の構造図が、後日ライデン大学の校章となっているのに比べると格段の扱いですが、――)。

アジサイ(Hydrangea macrophylla)は、鎌倉時代に伊豆七島野生のガクアジサイから園芸化され、江戸時代にはごく一般的な庭園樹となっていました。古く中国に渡り、そこから1789年にバンクス卿(J. Banks)によってイギリス・キュー植物園に導入されましたが、その品種は現在でも導入者を記念して「サー・ジョセフ・バンクス」と呼ばれています。また品種・マリエシィは、日本の桃色アジサイがフランス人によって導入されたものですが、これにベニガクなどが交雑親となって現在のように多色の品種群がヨーロッパで育成され、「西洋アジサイ(garden hydrangea)」と呼ばれて世界中で広く愛培されるようになりました(写真②)。日本でも初夏だけでなく、クリスマスの頃にも色とりどりの鉢物が販売されていますね。最近、オランダから導入された品種・アナベル(写真③)は、北アメリカ原産で大きな純白球状の花を咲かせます。基本的なガクアジサイの花形を額縁型(写真④)、アジサイ形を手毬型(写真⑤)として区分します。

本種の花の青色は、アントシアニンと有機酸の一種およびアルミニウムの複合体によって発現しています。そこで、酸性の土壌ではアルミ成分や鉄分が根から吸収されやすいので花の色が青くなりますが、逆の場合は桃色が強く発色します。また土壌中の硝酸態窒素とアンモニア態窒素の割合なども花色を変える原因となっています。したがって、人為的に青の発色を促すためには肥料として過リン酸石灰や硫酸アンモニウムなどを、また反対に赤の発色には苦土石灰などを施用することとし、それぞれ専用の配合肥料が市販されています(写真⑥)。ただし、アルミや有機酸の量が少ない、あるいはそれらの働きを阻害する成分を持っている品種では青色にならないものもあります。ちなみに、日本の美術の中にアジサイが出てくるのは桃山時代以後のことで、江戸末期まではいずれも青色の花であって、西洋アジサイで見られるような紅色や桃色は全くないので、それらの普及は20世紀以降のことと考えられます。特に最近になって急速に改良が進展して次々と新品種の鉢植えが店頭に並べられています。

ところで、日本原産のアジサイが地球の反対側ではどう生育すると思われますか??
ブラジル南部のポルトアレグレという街の郊外にあるグラマド公園に行った時のこと、その入り口に高さ4mほどの“壁となった樹木”が何と“アジサイ”でした(写真⑦)。日本では冬に落葉しますが、ここでは薄雪が降る気候ではあるものの一年中青々と生育するらしく、おまけに花がらを摘み取るような習慣がないですから、数多くの蕾や真っ盛りの花、褐色や黒色に枯れた花がらなどがホント多彩に混在していて、しばし言葉を失いました。「所変われば、品変わる」の典型例でしたね。

アジサイの一般普及品種
(大原野・善峰寺2021.6.09.撮影)
赤花の西洋アジサイ
(宇治・三室戸寺2021.6.14.撮影)
白色超巨大花のアナベル
(2021.6.14.撮影)
額縁型の品種
(2021.6.14.撮影)
赤発色用の配合肥料
(2008.7.03.撮影)
アジサイの壁の前で
(ブラジル・グラマド公園2002.1.26.撮影)

トピックス2024年5月(皐月)の情報

大空の波にのりけり鯉幟 
                         樋口明子

目にも鮮やかな新緑の季節がやってきました。

5月と言えば端午の節句。男の子の誕生と健やかな成長を願って、柏餅や粽
を供え、澄み切った青空に鯉幟を揚げる、江戸時代から続く伝統行事です。
昭和23年(1948)国民の祝日(こどもの日)として制定されました。
近頃は文部省唱歌に歌われ、甍の波の中空を泳ぐ鯉幟を目にすることが少なくなりました。
小浜病院内に、大空を勢いよく泳ぐ鯉幟を連想させる絵画が飾られており、なぜかほっとした気分にさせてくれます。

初夏の眩しい陽射しを受けて薬草園では、初々しい新葉や花たちが生命力に満ちた輝きを見せています。薫風が心地よいベンチに腰掛け、薬草たちを愛でるのも風情があります。

躍動する鯉
柏餅
新緑眩しい園
咲き誇るコエンドロ
鮮やかなルリヂシャ
開花を待つシャクヤク

トピックス5月の開花情報

5月の開花情報  (東玄関の奥から)
① キンセンカ(金色の盃状の花形、花期が長い、乾燥花を肝機能の改善薬に利用)
② ノウゼンハレン(花がノウゼン(樺)色で、葉はハスに似る、葉と花が食用で、少し辛味あり)
③ コエンドロ(淡桃白色の小花、花と果実には芳香、葉はカメムシ臭い“パクチー”)
④ ハマボウフウ(海辺の砂地に咲く白花、新芽が汁の具材、若狭地区では絶滅か?)
⑤ カミツレ(白花、花後に盛り上がる花托を摘まむとリンゴの香り、花を茶材)
⑥ カラスビシャク(緑色の仏炎苞という特異な形の花、庭や畑の雑草、つわり止めの妙薬)
⑦ 西洋ワサビ(白色小花、根茎の薄切りをローストビーフに添える“ホースラディッシュ”)
⑧ アマ(薄青色の花は日の出とともに開き、午後には萎れる一日花、種子から亜麻仁油を搾る)
⑨ シャクヤク(奈良に伝わる薬用種の「梵天」、淡桃を帯びる白色花、根が婦人薬)
⑩ ボタン(豪華な花容を誇る巨大花、自根の芯を除いたものが“牡丹皮”で、婦人薬)
⑪ 温州ミカン(ミカン科の常緑低木で、日本の風土に適して最も多く栽培される柑橘)
⑫ ルリヂシャ(青色(マドンナブルー)の星状花、キュウリのような風味で生食できる)
⑬ マグワ(養蚕のため中国中・東部から伝来、暗赤色の果実が「マルベリー」、葉が茶材)
など

トピックス300以上の呼び名があるカラスビシャク

小さなヘビが釜首を上げた様な奇妙な形の花(サトイモ科特有の仏炎苞(ブツエンホウ)という)を咲かせるカラスビシャク(Pinellia ternata)は、庭や畑の極めて厄介な雑草です(写真①)。何しろ繁殖力がすさまじいのです。地下深くにある球茎から数本の葉を伸ばすのですが、その途中に木子(むかご)を着け(写真②)、また3つの小葉の基部にもごく小さな珠芽(シュガ)ができます。それだけでも10数個になりますよね。大きな球茎には数本の花を咲かせ、それぞれにおよそ10~20個ほどのタネを稔らせて(写真③)、土壌条件が良ければその半数が秋までに発芽します。つまり、1個の球茎からほぼ1年後には大小50~80個に殖えるのです。加えて、耕うん機などで細断された球茎は腐ることなく、小さな破片でも不定芽を形成して蘇ってしまいます。雑草を退治したい人間あるいは農器具の特性を逆手に取った巧みなやり方で、着々と分布域を広げることに成功し、今では北海道から沖縄まで日本全国どこでも見つけることができます。本種の繁殖は、種子によるよりむしろ球茎、木子および珠芽による栄養繁殖が主体のようで、このように増殖手段を多く持つ植物は他に余り例がありません。

本種は人の目に触れることが多いので、当然のことながら、地方名も数多く、宇都宮貞子女史はその著書『夏の草木』(新潮文庫)の中で本種の地域語を取り上げています。新潟県上越市から西頚城郡にかけての「ヘービッチョ」には「ヘビが舌を出したような花だけぇねぇ」という言葉が添えられています。「カラスノテッポウ」について、長野県上水内(カミミノチ)郡牟礼村では「コンニャクの仲間。この玉(球茎)は毒だこて、食べれば舌が縮むせう」、また飛騨高山では「春草だで夏は枯れるに。畑仕事をしててやだくなると、この茎についている玉を爪で抜いて飛ばしたもんだに。そうやって飛ばすで、烏鉄砲せうだらずか」という解釈もあるようです。新潟県東頚城郡の松之山町では「カナキチョノダイハチ」と呼ぶとか。カナキチョとは雄トカゲのことで、マムシグサ類を「ヘビノダイハチ」と呼ぶのに対比しています。ダイハチは、葬儀に赴くオッサマ(和尚)に後ろから小僧がさしかける赤い傘のことで、仏炎苞の先が折れて傘のようにさしかけた形を指すのだろうと注釈をつけています。さらに、宝光社という部落では「ヘボッツオ」とか「ハンゲグサ」などと呼ばれ、「ハンゲン(半夏)になりゃ枯れるせうが、枯れるのもあり枯れねえのもある。枯れんね方がたんとだ。年寄りが『玉で殖えるんで鍬でおっつぶせ』せうで、潰してもみたが、潰せばそれだけのう(猶)殖える」という話を聞き及んでいます。このように語尾や中身のはっきりしないところもあるのですが、本種の特徴が何となく浮かんでくるでしょう。ちなみに、若狭地方では「半夏生(ハゲッショ)」と呼ぶそうですが、「半夏(ハンゲ)=旧暦の7月初旬に繁る草」というより医療事情に精通していた小浜藩ではその頃に「半夏という大事な薬品になる(を生む)草」と認識していたのではないでしょうか ??

漢方では本種の球茎を夏に掘り取り、その外皮を除いて乾燥したものを「半夏(ハンゲ)」と称します(写真④)。その主な薬効は去痰、鎮吐作用で、「生姜」とともに用いられる場合が多く、昔から妊婦のツワリ止めなどに利用・重宝されてきました。

標準和名は、仏炎苞の形を柄杓に見立て、その色が暗紫色を呈することで“烏の色”となったようです。しかし、本種の球茎はカラスの大好物であるらしく、地上部のない時期でも漁りにくるので、案外昔の人はそのような光景をよく観察して名付けたのかもしれませんよ。それとも “つわり”の酷いカラスだけが漁るのかなぁーー?? 薬草園に植えられたものは花縁だけがやや紫黒色を帯びる個体群ですが、花全体が黒いものや緑一色のものなどさまざまな変異が確認されています。

花の色だけでなく、全国各地から収集した個体には特に球茎の休眠に関して興味深い知見が得られています。すなわち、地上部が開花・結実する頃、地下では新しい球茎が形成され、それが充実すると休眠します。したがって、8月以降に展葉しているものはすべて珠芽から萌芽したものですが、それらも10月頃には地上部が枯死して球茎はすべて休眠します。球茎の休眠は10℃以下の低温に一定期間遭遇することによって覚醒しますが、その現象や程度は北方産ほど顕著です。例えば、北海道産の個体(写真⑤)は休眠・覚醒のパターンが極めて明確であるのに対して、沖縄産のそれはパターンがやや曖昧で真夏にも地上部の枯死しないものが見られ、京都産の個体はそれら両者のちょうど中間的な性質を示します。昨今の地球温暖化に対して、本種はどのような変化・対応を見せるのでしょうかね ??

写真① 薬草園で育つカラスビシャク(2016.7.14.撮影)

写真② 葉柄に着いた木子(中央にある3枚の葉の中心に緑色の”イボ”みたいに見え
るのが「木子」で、もう1個はその下に白い葉柄の中ほど、丸いダイズ粒のようなものが「むか
ご」です。「木子」や「むかご」と言ってもその差は曖昧で、いずれも”子いも”です。)
写真③ 花の構造
写真④ 時に“へそくり”と称される生薬の半夏
写真⑤ 北海道薬科大学薬草園の個体群(2011.6.12.撮影)

トピックス2024年4月(卯月)の情報

    咲き満ちてこぼるゝ花もなかれけり
                        高浜虚子

爽やかな青空のもと、小浜病院の周囲を華やかに彩る満開の桜。

いよいよ待ちわびた季節の到来に、心も浮き立ち思わず笑みがこぼれます。

気象情報では、2月1日から毎日の最高気温を足して合計が600℃に達すると、桜が開花すると言われています。今年の冬は降雪が少なく比較的暖冬でしたが、3月後半は厳しい冷え込みにより気温が上がらず、桜前線の北上は昨年より少し遅くなりました。

薬草園では競い合うように薬草たちが芽吹き始め、その健気な姿に春の息吹を感じます。

青空に映える桜
牡丹の芽吹き
赤い花を付けたボケ
小さな黄色の花サンシュユ

トピックス里山に春の訪れを告げるカタクリの花

春の日射しがポカポカし始めると、里山の草地ではタンポポ、ホトケノザ、オオイヌノフグリなどの花々が咲き出します。その中でもひときわ人目を集めるのがカタクリ(Erythronium japonicum)の花です(写真①)。本州中北部から北海道の山地で日当たりのよい落葉樹の下を好み、3~4月頃に茎を1本出して数枚の葉を広げ、淡紫色の愛らしい花をつけます。ふつう葉や花には紫紅色の斑紋があって(写真②)、花粉を運んでくれる昆虫類を呼び寄せる道しるべとなっているのですが、何故か越前地方にはその斑紋の全くない個体があちこちに自生しています(写真③、④)。越前の昆虫たちはどうやってカタクリに辿り着くのでしょうかね。

さらに、種子にはアリが好む脂肪酸を含んだ「エライオゾーム」という白い粒(付属体)があり、幼虫の餌として利用されています(写真⑤)。不要になった種子は巣の外へ捨てられ、次の年の春にはその場所で発芽します。分布拡大のスピードは年間5m程度と考えられています。ただし、本種の種子は熟して莢が乾くとかなりの距離(障害物が無ければ数メートル)を飛び散りますので、アリによる分散は本種の生育に適した明るい環境に種子が置かれることに意義があるように思います。

翌春に芽生えた種子からは径5ミリほどの小さな葉が出て、上を覆った落葉樹が展葉する頃までには地下深くにゴマ粒ほどの小球茎を形成し、夏を待たずに休眠してしまいます。このように球茎を更新してさっさと休眠に入る典型的な『春植物(ephemeral plant)』です。好適な環境下で順調に生育しても花芽を持つまでには10数年の歳月を要するようです。その間、球茎は次第に地中深くもぐり込む形で形成されます。球茎は毎年必ず更新されますので、葉が損傷したり環境条件が整わないと忽ちその肥大は“ジリ貧”となって、数年後には消滅してしまうことにも繋がります。庭や鉢植えなどで上手く育てられないのは本種がこのような習性を持つためです。

地下30㎝ほどの深さに円柱状の白い球茎があって(写真⑥)、「片栗澱粉」(写真⑦)はその地上部が枯死する前の5~6月頃、地下茎を掘りとって皮を除き、石臼などですりつぶして水を加え、木綿袋に入れて濾し、沈殿した澱粉を数回水洗した後乾燥して作ります。非常に良質の澱粉で、乾燥した地下茎の中に40~50%含まれています。非常に高価なため市場性はほとんどなくて、最高級な和菓子などで稀に用いられ、また丸薬や錠剤の賦形剤に利用されてきました。現在、一般に片栗粉として市販されているものはジャガイモまたはサツマイモから作られた澱粉です。なお、地下茎はそのまま煮て食べても美味しく、若葉も茹でて食べられます。

カタクリの全景
(2005.3.25.撮影)
葉に斑紋のある普通の個体
(丹波市春日町1994.3.20.撮影)
大野市矢地区のカタクリ園
(2023.3.27.撮影)
花や葉に斑紋のない越前のカタクリ
(2023.3.27.撮影)
こぼれた種子をアリが運ぶ
地下深くにある鱗茎
きめ細かい片栗澱粉

トピックス4月の開花情報

4月の開花情報  (東玄関の奥から)
① フタバアオイ(葉陰に咲く暗茶褐色の花、徳川幕府の家紋、葵祭の頭挿し花に利用)
② アミガサユリ(茶花向きの花で、内側が淡紅色の網目模様、解熱、鎮咳・去痰作用)
③ サンシュユ(淡黄色で早春の花材、秋に赤熟する果肉に強壮効果あり)
④ アマ(清楚な青花で一日花、茎の皮が繊維素材、タネから搾る油が“亜麻仁油”)
⑤ レンギョウ(黄色花、果実が薬用、消炎、利尿、排膿、解毒作用)
⑥ クサボケ(日本特産種、朱赤色の花で、秋に黄熟する果実酒が美味しい)
⑦ 天台ウヤク(徐福伝説で有名、黄褐色花、肥大塊根に芳香性健胃、鎮痛・鎮痙作用)
⑧ ルリヂシャ(可愛い青色(マドンナブルー)の星状花、キュウリのような風味で生食できる)

トピックス2024年3月(弥生)の情報

よき日なり 啓蟄の日は 輝かし
                      高木晴子

3月はライオンの如く来たりて、子羊のごとく去る。これはイギリスの諺です。初めは荒れ狂うことが多いが、終わりには穏やかな天候になるという意味です。 
桃の節句、啓蟄、お彼岸と冬から春へと季節の移ろいに触れる機会が多い3月。
5日は蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく)。

冬籠もりの虫たちが土の中から顔を覗かせ、降り注ぐやわらかな陽射しや頬を撫でる優しい風に、待ちわびた春の到来を感じます。冬の間ひっそりと息をひそめていた薬草園でも、チューリップが芽生えています。園芸ボランティア・すみれの会による雪囲いの取り外しや枯れ枝の剪定など、本格的な春を迎える準備作業が始まります。

何か幸せを感じる小さな春の訪れに、思わず顔がほころびます。

チューリップの芽
牡丹の芽吹き

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