ボタン・市販苗はシャクヤクの根
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特徴
ボタン(Paeonia suffreticasa)は、中国西部の四川、陜西(センセイ)、甘粛(カンシュク)付近を原産地とする落葉低木で、通常1m内外。日本へは奈良朝時代に薬用として渡来し、施療目的で多くの寺院で栽培されていました。今でも長谷寺や当麻寺などがボタンの名所となっており、毎年5月初旬の開花期には豪華な花を楽しむ人達で賑わっています。貝原益軒は自著『花譜』(1709)で午前中の観賞を薦めています。
根の木芯を抜き取った根皮が「牡丹皮」で、漢方的には血が滞って巡らない状態の「瘀血(オケツ)」症状を治療するのに欠かせない薬材です。すなわち、冷え・のぼせ、下腹部の脹れや痛み・炎症、月経不順などのいろいろな婦人科疾患に優れた効果を発揮します。ニキビや痔疾にも用いられます。
繁殖は、シャクヤクの根にボタンを接木する方法が実用化され、園芸店などで販売されているボタンの苗は専らこの方法で増殖されたものです。そのような接木苗を植えた場合、3~4年後に地際部からわずかながら自根が伸びてくるので、9月末~10月初旬の休眠期にシャクヤク台の根を切断して植え替えればボタンの根となります。タネを播いて実生苗から育てれば、生育はやや緩慢ながら、最初からボタンの根が伸びます。ただ、タネは乾燥に弱いため秋に“採り播き”しますが、発芽は一年半後の翌々春になりますので、実に気長な取り組みが必要です(播かないタネは生えませんからね ?!)。