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キハダ・修験者の眠気覚まし?!

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特徴

 「だら助は腹よりはまず顔に効き」と詠まれたように、だら助(陀羅尼助)は僧侶が陀羅尼経を誦ずる時眠気覚ましに口に含んだとされる極めて苦味の強い健胃整腸薬(和方製剤)です。厚いコルク層を除いたキハダ(Phellodendron amurense)の内部樹皮(黄柏(オウバク)という)を煎じて煮詰めた黒い丸薬で、奈良県大峰山や和歌山県高野山で真言密教系の山伏の常備薬として知られています。ほぼ同じ製法のものが、鳥取県大山では「練熊(ネリグマ)」、木曽の御岳産では「お百草」と称して売られています。

 黄柏は、苦味質のオオバクノン、黄色アルカロイドのベルベリンなどを含み、抗菌・殺菌、抗炎症、解熱、胆汁分泌促進、血圧降下作用など多くの薬理活性が報告されています。漢方では下半身の炎症・充血、黄疸、下痢などの症状を改善する目的で処方されます。また黄色染料としても重宝され、特に防虫性に富んでいて、長く保存する必要のある経典や戸籍用の紙や布などの染色に繁用されました。中でも『薬師寺大般若経』は黄蘗(オウバク)経の遺品として有名です。

 日本全土に広く分布し、高さ15mに達する落葉高木です。5~6月頃、枝先に黄緑色の小花をつけます。雌雄異株で、果実は秋に黒く熟して内部に5個の種子を含んでいます。葉を揉むとミカン特有の鼻にツンとくる香りがします。サンショウなどとともにアゲハ幼虫の食害に注意が必要です。