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ミシマサイコ・気の病に効く日本原産の薬草

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特徴

 半世紀も前、薬草の自生地探索行でミシマサイコ(var. stenophyllum)を見たのはたった3ヵ所(伊豆石廊崎、小豆島寒霞渓、高知南国市の採石場)で、いずれも地形や地質の厳しい崖地でした。今や日当たりのよい緩傾斜の草地や三角点などどこにも残されていないので、必然的に絶滅危惧種に指定されています。なお、和名は最初の標本が静岡県三島で見出されたことに由来しています。

 本植物の根部が漢薬の「柴胡(サイコ)」で、古くから静岡県三島に集荷されたものが品質的に中国産より優れているとされて、日本での臨床経験が積み重ねられてきました。しかし、現在では中国からの輸入品が市場を占めていて、その基原植物は細葉サイコ(Bupleurum scorzoneraefolium)です。

 柴胡には解熱、鎮痛、鎮静、解毒、消炎などの作用があり、漢方では“気の病”を治療する薬材として、胸脇苦満(気鬱で胸苦しい)および往来寒熱(気滞で冷える)の症状を目安に用いられています。

 本種の発芽および初期生育はいずれも極めてゆっくりで、その間に大きくなった雑草に負けてしまうのが栽培の難点です。また冬場の排水不良は根腐れ病を誘発して壊滅的な打撃を与えます。しかし、幸いにも薬草園で栽培中の株は、播種後8年経過したにもかかわらず極めて元気に生育していますので、近い将来、乾燥・調製して10年生株の“生薬見本”を保存できればと願っています