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テンナンショウ・性転換する球茎

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特徴

 テンナンショウ属植物は、日本に30数種が分布します。いずれも扁平な球形の塊茎を持ち、サトイモ科の特徴として総苞の形が棍棒状構造の肉穂花序(仏像)となり、大型の苞(火焔光背)が包んでいるところから「仏炎苞(ブツエンホウ)」と呼ばれる花をつけ、薄暗くて陰湿な樹下に生えています。中央に真っ白なお餅を飾ったユキモチソウは何処の山草展でも中央の棚に飾られ、他方、新芽の葉鞘がマムシの紋様に酷似することから誰からも“蛇蝎(ダカツ)”のように嫌われるマムシグサ、さらには雄ツルが求愛ダンスで広げた羽の様相に似た小葉を持つマイヅルテンナンショウなどなど、実に多彩な顔触れです。

 球(塊)茎を輪切りにし、石灰をまぶして乾燥したものが「天南星(テンナンショウ)」で、漢方では去痰、鎮痙、除湿薬として利用されています。全草、特に球茎と液果の細胞中に針状結晶を有する“接触毒”の植物ですから、汁液が肌につくと炎症やかぶれを生じますので、素手で触らないよう注意が必要です。

 この仲間は地下にある球茎の大きさ(=貯蔵養分の多少)によって性転換することで有名です。すなわち、4g以下の若い球茎は花をつけない無性株、5~20gの小型は雄花のみを形成する雄株、25g以上の大型球茎は雌花をつける両性株となります。また球茎を切断して小さくすると、その大きさに応じて無性あるいは雄株となったりするので、最新の植物図鑑には『雌雄偽異株』と表記されています。