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ウスバサイシン・ヒメギフチョウの食草

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特徴

 サクラが咲き始める頃、新聞の地方版には決まって「春の女神ギフチョウが羽化」と報じられます。その食草は南方から分布を広げた常緑のカンアオイ類ですが、やや小形のヒメギフチョウ幼虫は北の樺太経由で日本列島へ侵出した落葉性のウスバサイシン(Asarum sieboldii)だけを食べて育ちます。ウマノスズクサ科の多年草で、山地のやや湿った林下に生え、根には特有の臭気と辛味があります。茎の先端に長い柄を持った2枚の葉を対生状につけ、3~4月頃、淡暗紫色の花を新葉とともに開きますが、ほぼ落葉の陰に隠れた感じですから、人間の目線では花の存在にも気付きません。ところが、ギフチョウは前脚の先に臭気センサーを具えていて、産卵に好適な本種の新葉を巧みに見分けているのですよ。

 その根および根茎を乾燥したものが「細辛(サイシン)」で、市場では辛味が強く、根が細いものを良品とします。有害なアリストロキア酸を含まないものと規定されているため、通常生薬には良品判別のため1枚の葉が付けられています。当然、使う前に必ず葉を取り除きますが、漢方では解熱、鎮痛、鎮咳などを目的に、喘息の症状緩和に有効な「小青竜湯」などに配合されています。中国の古書によると、口内炎には細辛の粉を酢で練ってお臍に詰めると治る、と書いてあります。ただ、口内炎が治ってもお臍がかぶれるかもしれないので、細辛を使うときは細心の注意が必要ですね(東京薬大・指田先生の弁)。